ただいま、大切な世界
「花莉さーん!!」
「花莉先輩!」
『ハルちゃん、京子ちゃん!』
可愛らしく手を振る2人を目指して、少し小走りをする。2人はもう身支度を終えているみたいだ。
「そろそろ時間みたいですよ!」
『うん、一緒に行こ。』
「ふふ、花莉先輩がいるとやっぱり安心しますね。」
『そう?』
「京子ちゃん羨ましいです!ハルも並盛中に転校したいです〜!」
『ハルちゃんが転校してきたら学校生活がもっと楽しくなりそう。』
「花莉さぁん!!」
ぎゅむっと抱き着いてくるハルちゃんを支え、私もぎゅっと抱き返した。すると京子ちゃんも、私も、と言ってた抱き着いてきたので2人ともぎゅっとした。ああ落ち着く。可愛い後輩に囲まれて私は幸せ者だ。
「あっ、クロームちゃん!」
「はひっ!ほんとです!クロームちゃん!こっちです〜!」
「あ…、」
荷物を持ったクロームちゃんがこちらに気づき、少し頬を赤らめながら近づいてくる。
『もうお別れはしてきたの?』
「はい。あ………あの、」
『ん?』
「わ、私も………その………、」
『?』
「「あっ!」」
京子ちゃんとハルちゃんは私から離れるとクロームちゃんの背中に回り込み、彼女の背中を優しく押した。クロームちゃんはぽふんと私に体を預ける形になる。
「クロームちゃん、大丈夫ですよ!」
「うん、花莉先輩はちゃんと聞いてくれるよ。」
「!…花莉様、私も…ぎゅって…してほしいです……。」
『!!よ、喜んで…!』
クロームちゃんのあまりの可愛さにうまく言葉が出てこなかった。可愛らしい彼女にぎゅっとハグをすると、彼女の体の力が抜けたような気がした。
「皆で行きましょう!」
「そうだね、クロームちゃんも一緒に行こう?」
「うん…!」
可愛らしい3人と一緒に、私達は過去へ返してくれる丸い装置のある場所へと向かった。
***
「よーし、皆揃ったね!そろそろ出発だがボンゴレ匣は未来に置いていってもらう。取りはずしてくれ!」
皆と戦いを共にしてきたボンゴレ匣達は、寂しそうに別れを惜しんでいた。
「花莉姉。」
『フゥ太君…、』
「過去に戻っても、子どもの僕と仲良くしてくれる?」
『!…もちろんだよ。だって、どんなフゥ太君もずっと私の大切な人だから。』
「ありがとう、花莉姉。」
彼は私の頬にそっと触れて優しく微笑んだ。今もこれからもフゥ太君が大切なのは変わらない。私の弟のような存在だ。
「いつまで群れてるの。」
『ひっ、委員長いつのまに!!ロールちゃんと別れを惜しんでいたのでは!?』
「ふふ、雲雀さん。花莉姉をよろしくお願いします。」
「君にお願いされる筋合いはない。」
『委員長!!』
ぷい、と顔を背ける彼に苦笑いするフゥ太君。大人げない委員長に思わず怒った。
「じゃあタイムワープを始めるよ!別れを惜しんでたらキリが無いからね!アルコバレーノは過去のマーレリングを封印してすぐにここへ戻ってくる予定だ!では…本当に…ありがとう!」
「…さよなら。」
私達は一箇所に集まり、ついにその瞬間が訪れた。ずっとずっと待ち望んでいた瞬間だ。悲しいことが沢山あった。それでもたくさんの仲間に支えられて乗り越えてこれた。
眩い光に包まれ、私達の未来の旅はようやく幕を閉じた。
『わっ!!』
どすんと思い切りお尻を打って落ちた。隣で綺麗に着地する委員長は私を可哀想な目で見てくる。酷すぎる。タイムワープした先に降り立ったのは、見覚えのある部屋だった。夕日が窓から差し込みオレンジの光が机を照らしている。
『…………。』
「なに黄昏てるの。」
『いえ…帰ってきたんだなあって。』
じわじわと涙がこみ上げてきて、頬を伝う。ここにいることがこんなに嬉しいと思ったことはない。
「今度は僕が言う番なんだろうね。」
『何をですか…?』
「おかえり、花莉。」
『!!…っ、』
あまりにも唐突なその言葉に、嬉しさがこみ上げた。ずっと帰りたかった。この場所に、この時間に。
『っ、ただいま戻りました…っ!』
未来の私は、結局誰の傍にいたのだろうか。分からずじまいだったけれど、願わくば、この人の傍にいてほしいな。この先のことなんてわからない。未来は何度だって変わっていく。それでも、この人の傍にいたいと願うんだ。
その日はさすがに仕事をせずに帰宅をした。帰ってきた日は私が未来に行った日の数日後だったようで、家に帰ったらおじさんとおばさんにそりゃあもうこっぴどく怒られた。誤魔化すのが大変だったが、なんとか誤魔化せた。2人に抱き締められた私はまた泣いてしまったんだ。
その日の夜は死んだように眠りについた。安心感に包まれて、ずっとずっと遠くに意識が飛んでいくようなそんな感覚だった。夢で降り立った場所は、何もない真っ白な場所。そこには1人の少年が膝を抱えてぽつんと座っていた。
ああ、そうか。この子は−−−、
『こんにちは。』
「!!」
『はじめまして、貴方の名前…良かったら教えてくれませんか…?』
「!!…………名前………、びゃく、らん…。僕の……名前は………白蘭。」
名前をぽつりと呟いたその瞬間、ダムが決壊するように、彼の瞳からは涙が溢れた。彼は何故涙が溢れるのかわかっていないようだった。そんな彼をそっと抱き締めて、頭を撫でる。
『白蘭さん、私の名前は花莉って言います。よろしくお願いします。』
「ふ、うぅ…っ、うう…、」
その少年の気が済むまで、私は小さな体を抱き締め続けた。もうきっと彼なら大丈夫だと、そんな気がしたんだ。それからは長い長い時を彼と共に過ごした。もちろん1人ではない。もう1人の幼い少女と共に。
そんな長い長い、夢だった。