それを人は恋と呼ぶ

*白蘭side*

マシマロをふにふにと触り、口に放り込んだ。甘くて柔らかくて美味しい。まるで花莉ちゃんみたいだ。きっとあの子はマシマロより柔らかくて甘いのだろう。あの星空の瞳が揺らぐのがたまらなく愛おしくて、いじめたくなる。この時代の彼女はやけに落ち着いていた。いや、僕に感情を見せるのが嫌だったのだろう。そんないじらしい彼女も好きだけど、僕に翻弄されて表情を変える過去の花莉ちゃんはもっと魅力的だ。怯えて、涙を流して、可愛い目で僕を睨む彼女は見ていて面白い。もっともっと歪ませたい。

過去の沢田綱吉クン達はボンゴレリングを持ってやってきた。これで73は揃うだろう。やっと最後の世界なんだ。この世界で73と花莉ちゃんはコンプリートだ。

初めて手に入れた世界では花莉ちゃんは単なるアイテムでしかなかった。何の感情も湧かないし、アイテムとしての興味しかなかった。だけど、ある世界の花莉ちゃんを興味本位で無理矢理抱いたことがあった。その時の泣き顔が可愛くて驚いた。それから花莉ちゃんとはコミュニケーションをとるようになった。どの世界の彼女も、面倒な事は嫌い、厄介ごとに巻き込まれるのを嫌っていた。そのくせ、誰かが傷つくのは人一倍嫌っていて、自分を犠牲にして他者を守る、そんな子だった。そしてどの世界の彼女も僕に絆されることはなかった。それがなんだか癪で、無理矢理抱いて、泣かせては悦に入る。その繰り返しだ。壊して自分のものにするのが一番楽だしね。

今いる花莉ちゃんもそろそろ壊してしまおうか悩んでいた。だがこの世界の花莉ちゃんは他の世界の花莉ちゃんとは少し違う。この世界の彼女はすでに誰かのものになっていたのだから驚きだ。この時代の花莉ちゃん自身も言っていた、自分は委員長のものだと。確か彼女の言う委員長とは雲雀恭弥クンのこと。取るに足らない存在だ。この時代の彼女は彼のものだが、過去の彼女は誰のものでもないはずだ。奪われる前に奪ってしまえばいい。誰も邪魔するものはいないのだから。

あの幼い彼女を突然組み敷いたらどんな顔をするのだろうか。あの瞳をまん丸にして、震えるのだろうか。考えただけで、笑いが止まらない。早く自分のものにしてしまいたいな。

「白蘭様。」

「お、正チャンからの連絡だったりする?」

「いえ…、違います。」

「あ、そう。となるとタイクツだよねーレオ君。メシでも食い行く?」

「え"、そんな恐れ多い!、」

「うーん、じらすよなー。早く会いたいのに。並盛中学2年A組、沢田綱吉クン。」

早く君を殺して、コンプリートしたいんだ。そして僕はやっと完全体な神となる。そしたら、神の使者と謳われる彼女の隣に立てるでしょ?

「早く君の心ごと、手に入れたいな。」

人はこの欲をなんと呼ぶのだろう。