入間銃兎と記憶喪失女
言葉通り、署の方で名前さんの事を捜している者がいないか調べたが該当するものは1つもなく、他の署も調べたが結果は同じだった。
「んーそうですか」
「すみません、全力は尽くしたのですが…」
「謝らないで下さいよ、寧ろそのおかげで気兼ねなくサバイバル生活を送れるので万々歳です!」
名前さんが笑ってくれたのでホッとしたがそんなにサバイバル生活が好きなのか、と少し引いてしまった。いや別に侮辱する訳ではないのだが。
「そう言って頂けて幸いです。…ところで名前さん、さっきから何を作ってるんですか?」
「捕獲用の網を作ってるんです!前に私がダメにしてしまったので」
ハキハキと答える名前さんに「あ、あぁ、そうですか」引き気味で返事をしてしまった。しかし記憶の無い中よくこの環境に馴染めるな。
「理鶯さんは本当良い人ですね。見ず知らずの私にご飯をくれたり、生き抜く術を教えてくれたり…やっぱりそんな良い人だから、周りにいる人達も皆良い人なんですよね!」
その笑顔は無垢な子供のようで、数々の弱みを握りゆすりを行う自分には眩しく見えた。というかそんな恥ずかしいセリフよく真っ直ぐ目見て言えるなと思う。
「…貴女、きっと人に騙されやすいタイプですね」
「そうなんですか? じゃあ気をつけます!」
この女、本当に分かっているのか。
ふんふんと鼻歌を歌いながら作業を進める名前さんを眺め、まだ理鶯のところにいさせた方が安心だな思った。
「2人とも、今日はカラスを3羽も捕獲できたぞ」
「わーっ大漁ですね!」
さてと、どうやって理鶯の料理を回避するかを考えなければ。
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