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山田家まで1人で辿り着けるか心配してたけど案外覚えているものだな。
最後にお邪魔したのは高1の冬だったと思う。確かあの時風邪を引いた二郎にプリントを届けに行ったんだっけ。
チャイムを鳴らすと5秒も経たない内にドアが開かれ、出迎えてくれたのは三郎君だった。
「こんにちは、三郎君。少し久しぶりだね」
「こっこんにちは!お久しぶりです、棗さん」
走ってきてくれたからか控えめに笑みを浮かべるその頬は少し赤らんでいて、可愛いなぁと思ったのは私だけの秘密だ。
その後三郎君からリビングに案内されると、ソファーやテーブルの上は片付けられていたけれど部屋の隅にはラノベやボードゲームなど私物が散乱していて、思わず微笑んでしまう。
「適当にかけてください。飲み物お持ちしますね」
「ありがとう。あっこれ、つまらないものだけど良かったら皆で食べて」
「全然つまらなくなんかないです、お気遣いありがとうございます…!」
そう言い受けとってくれた三郎君の頬は出迎えてくれた時からずっと赤いままだ。もしかして、風邪を引いているとか…。
「三郎君、顔赤いけど大丈夫?」
「えっ?! だっ大丈夫です!何の問題もありません!」
「そう?それなら良いんだけど…」
本人が心配いらないと言うのなら、あまり深く突っ込むのも良くないか。
それから三郎君が出してくれたお茶を頂きながらも向かいの方を盗み見てみると、何やらソワソワとしていて落ち着かない様子だった。
「そういえば三郎君、中学3年生になったんだっけ?」
「はっはい!」
「身長も伸びたよね。今何センチ?」
「えっと…173だったと思います」
「えっ! 170超えてるの?!」
二郎といい、山田家の成長期すごいなぁ。
「学校でもモテモテじゃない?かっこよくて身長も高いし」
「…僕、かっこいいですか?」
「うん、すごくかっこいいよ」
本当の事だったので頷くと、三郎君は顔を俯かせ何やら呟いているみたいなのだが声が小さい為上手く聞き取れない。聞き返そうとすると三郎君は顔を上げた。その頬は先程より赤みが増していた。
「で、でも僕毛ほどもモテないです」
「えっそうなの?!」
三郎君、こんなに良い子なのに何でだろう。
「それじゃあ好きな子とか、気になってる子とかいたりする?」
「え…」
私の質問で固まった三郎君に内心しまったと後悔した。思春期の男の子に対し、異性から質問されるのは気分がよろしくないだろう。しかも少しとはいえ久しぶりに会うというのに、ズカズカと深く踏み入りすぎてしまった。ついさっきやめた方がいいか、と思ったばかりだというのに相手の事を考えなさ過ぎた。これじゃ三郎君が引いてしまうのも当然だ。
「ごめんね三郎君、こんな事聞かれて嫌だったよね、本当にごめん」
「そっそんな事ないです!顔上げてください!」
頭を下げていた私の隣に来てまで声を掛けてくれた三郎君に感謝せざるをえなかった。本当に優しい子だ…。
「……、その…好きな人ならいます…」
「そうなの?!」
いけないいけない、三郎君が許してくれたとは言えがっついてはならない。ひと呼吸置こう。しかし好きな子がいるなんて青春だね三郎君…! 女という生き物は他の人の恋愛話が大好物なので今凄く楽しいぞ…!
「その人って同じ学年の子?」
「歳上の人、です」
「歳上かぁ。その人っていくつ?」
「じ、17、です」
「えっ!私と同い年だ!」
何てこった!私も三郎君と同じ中学だったから、もしかして私の同級生の子とか?!いやでもそうとは限らないか、登校中見かけて一目惚れという少女漫画的展開もあるかも。
「その人って同じ学校の先輩だったとか?」
「そ、そうです…」
誰か接点あった子とかいたかなと中学時代の事を思い出してみる。うーんと1人唸っていると自分の手が暖かい何かに包まれた。それは三郎君の手で、びっくりしたので彼の方に顔を向けると、緑色と紺色の瞳がジッと私を見つめていた。山田家3兄弟はそれぞれ左右で瞳の色が違っていて、内心宝石みたいでとても綺麗だと思っている。
「…棗さん」
三郎君に呼ばれ、意識をこちら側へと戻した。いつになく真剣な表情をしている三郎君に対して、心臓の鼓動が早まっていってるのを感じた。
「ずっと貴女に言いたい事があったんです。僕、初めて会った時から、棗さんの事が「ただいまーっ!」あぁー…っ!」
玄関の方から一郎さんの元気な声が聞こえてきて、それを聞いた三郎君は一気に表情を崩し、重ねていた手を離した。そしてそのまま蹲った。
「三郎君?! どうしたの、具合悪くなったの?」
すると背後の方で勢いよくドアが開く音がして思わず振り返ると二郎が何故か息を切らして立っていた。
「…棗、三郎からなんか言われたか」
「え? なんかって言われても…」
「…いや、心当たりねーならいいわ…」
そして大きく息をついてそのまま座り込んだ。え、何これ。どういう状況なの?
蹲る三郎君に座り込む二郎というカオスな空間の中一郎さんは「棗、遅くなっちまって悪ぃな!」といつもと変わらない調子で話しかけてきたので、これを異常だと感じる私がおかしいのかと思わざるを得なかった。
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