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「まさかあそこで死んだと思ってた主人公が助けに来るなんて思いもしませんでした…!」
「わかるぜ…! あの展開すっげー熱かったよな! 特にその後のヒロインとの再会は泣いた…」
「あそこ本当にいいシーンでしたよね。私もエンディング流れてる時もずっと泣いてました」
いけない、思い出したらまた涙が出そうだ。堪えていると一郎さんもあのシーンを思い出したのか鼻をすすっていた。
こうして一郎さんから漫画を借りるようになったのは寂雷さんから紹介されて数日経った後だったと思う。イケブクロ方面に用があり行った際、そこで偶然一郎さんと会い、詳しい内容は割愛するが色々と話をして仲良くなった。そこで寂雷さんの職業柄夜いない時があり暇な時間があると話したところ、自分の気に入ってるラノベや漫画を貸してくれる様になったのだ。
「棗も気に入ってくれて良かったぜ! あ、良かったらアニメの方も見てみるか?」
「是非観たいです!」
素直に答えると一郎さんは「ちょっと待っててな」と嬉しそうに笑い、近くの棚からDVDを取り出した。ざっと見て10枚以上はある。…これは見終わるまで結構かかるかもしれない。
「これ最終回くる前にアニメ化したやつだから原作と違う展開になってるんだが前言った通りアニメ版も最高の最終回だったからそこは安心していいからな。返すのはいつでも大丈夫だからゆっくり観てくれ」
そう言ってDVDの入った袋を渡してくれた一郎さんにお礼を言うとまた嬉しそうに笑ってくれた。
一郎さんは弟2人を1人で世話してきたからか周りの同年代の人達より大人っぽい。だが好きな事に対しては年相応な表情を見せてくれるのでその様子を見てると何だか私も嬉しい気持ちになる。
「…っと、もう12時か…、そろそろ昼飯にするか。棗も食っていけよ、この後も時間があればだけど」
「えっ良いんですか…? それじゃあお言葉に甘えて頂きます!」
私の返事に一郎さんは嬉しそうにしてくれていた。
遠慮しなきゃいけない場面だけど、正直な話とてもお腹が空いていたので素直に甘える事にした。バイトも夕方からで時間にも余裕があるし。
「よし、メニューはどうするかな…そういえば昨日常連から卵沢山貰ったから、オムライスにするか。棗もオムライスでいいか?」
「オムライス大好きなので全然オッケーです!私も作るの手伝いますね」
「お、それは助かるぜ!ありがとな。…でもお前、オムライス作るの下手だったよなー」
「あっあの時は初めてだったから…!今は大得意ですから大丈夫です!」
そうだ、あの時失敗してからずっと練習したんだもの。そのおかげで焦がすことも無くなったし、卵も破れず作れるようになった。…今に見てて下さい一郎さん、そのニヤケ顔をぎゃふんと言わせてやりますからね…!
△▼△
「どうでしょう!」
「すげーじゃねぇか棗! 」
私の作ったオムライスに、一郎さんはお星様みたいにキラキラと目を輝かせていた。
一郎さんに材料を切って貰い、私がそれを炒めて卵を包むところまでしたのだが前回とは一変。4個とも焦げてないし、破れもない。予想以上に美味しそうに出来上がった為、我ながらよくやったと思う。
「お店に出しても全然大丈夫だろこれ…練習したんだなぁ」
「そりゃあ悔しかったですからね…!」
特に左馬刻さんには散々笑われたからね。…このオムライス撮って送りつけようかな。
「お前頑張り屋だもんな。偉い偉い」
「…へへ、ありがとうございます」
頭を撫でられて恥ずかしい気持ちもあったが、それよりも嬉しい気持ちの方が大きかった。もし一郎さんがお兄ちゃんだったらこれ以上に沢山甘えてたかもしれない。
「二郎ー三郎ーっ!メシが出来たぞー!」
一郎さんの声を合図に2人の足音が聞こえて来た。それから間もなく2人一緒にリビングに入ってきたけど、何故か少しボロボロになっている。気になって聞いてみたけど2人共答えてくれなかったので少し寂しい気持ちを抱きながらも4人で食卓を囲んだ。
いつもと違う騒がしい時間に気がつけば頬が緩んでいたのは私だけの秘密だ。
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