3


※この話では夢主は23時過ぎまで働いていますが、日本の労働基準法では高校生は22時までと決まっております。




「ありがとうございました〜」

お客さんが店を出たのを見送り、小さく息を吐く。私が働くこの駅前のコンビニは他のところよりお客さんの数が多く、今日は特に出入りが凄かった気がする。

「九条さん、もう上がっていいよ」

「あっ、もうそんな時間ですか」

店長から声をかけられ、時計を見てみればもう23時を過ぎていた。本当なら22時上がりなのだけど深夜帯の人が事情があって遅れるとの事だったので残っていたのだ。

「今日は本当ありがとうね、これ持ってって」

そう言われ渡されたレジ袋の中にはパンやジュースが何本か入っていた。

「こんなに良いんですか?」

「九条さんにはこうやって何度もお願い聞いてもらってるからね、助かるよ」

「いえいえそんな!困った時はお互い様ですから。パンとジュースありがとうございます!」

「お疲れ様でした」と他の店員さんにも声を掛けて、ウキウキ気分でロッカーを開けた。

(明日も寂雷さん仕事だから日持ちするものはお昼ご飯にしよう、と…連絡連絡)

今朝寂雷さんから言われた事を思い出し、スマホをリュックから取り出して“今終わったよ”とお気に入りの小熊のキャラのスタンプも添えてラインを送る。するとすぐに既読がつき“すぐ向かうよ”と返信がきた後、私が数日前プレゼントした子熊が了解ポーズしているスタンプも送られてきた。

(わああ使ってくれてる〜!)

嬉しくてニヤついていた私に、休憩にきた先輩から「あ、お疲れって気持ち悪」と言われてしまい、だいぶ心にダメージを負ってしまった。


△▼△


(裏口で待ってます、と)

着替え終わり、ラインを送った後裏口のドアを開けて壁に寄りかかってようとするとそこには既に先客がいらしゃっていた。
誰かいるなんて思いもしなかったから「ぅわっ」と声を上げてしまったけれど、蹲っている先客さんからは何も反応がない。

「あの、大丈夫ですか?」

心配になり軽く体を叩くと、「うぅ…」と小さく呻き声が聞こえる。お酒の匂いがする…酔い潰れちゃったのかな。
少しくたびれたワイシャツに緩み切ったネクタイという格好からして会社の飲み会かなと考えるが、推測していても事態が良くなる訳ではないのでとりあえず起こそうと声を掛けることにした。

「ここで寝てると危ないですよ」

すると先客さんは組んだ腕に乗せていた頭
をゆっくりと上げる。良かった、起きてくれたとその人の顔を見てみれば、よく夜に栄養ドリンクを数本買っていく常連のお兄さんだった。見た目が中々インパクトが強い(主に目の下のクマ)ので記憶に残っていたのだ。


「あの、大丈夫ですか?」

「………あれ…てんしがいる…何れ…?」

「て…?」

とろんとした目で私を見つめてきたと思ったら不思議な単語を呟くお兄さんに目を点にせざるを得なかった。
てんし?誰かの名前かな…その人と勘違いされてるっぽいな。
するとお兄さんはハッとした表情になり、焦ったように口をパクパクさせ始めた。

「…あっ…い、いえっ今のはっ、うっぷ…」

「大丈夫ですか?!」

口を押さえるお兄さんに、先程店長から貰ったパンやらジュースをすぐに足元に並べてレジ袋を空っぽにし「袋ありますから出していいですよ」と促すが、「だ、大丈夫、です」と押さえていた手を離した。

「す、すみません…迷惑を、かけてしまって…」

「私は構わないですよ。これ良かったら飲んで下さい」

「酔ってる時飲むといいらしいです」といつか何処かで聞いた知識と共に足元に置いたオレンジジュースをお兄さんへと差し出した。
「すみません…」と言いながら申し訳なさそうにしながらも受け取ってくれたお兄さんに「いえいえ」と笑顔で返す。

「タクシー呼びましょうか?…あ、それか今から迎えが来るんですけど送りましょうか」

「え"っいや、大丈夫です、そこまで迷惑かけるわけには…」

「多分そろそろくる頃だと思うんですけど…」

言いかけたところで車が近づいてくる音が聞こえ、もしかしてと思い振り返ると予想通りだ。寂雷さんの車が私達の前で止まった。

「良かった寂雷さん、ナイスタイミング!」

「棗、何かあったのかい?…あれ、そこにいるのは独歩君…?」

「せっ…先生?!」

「へ?」

思わぬ展開に間抜けな声を上げてしまった。どうやら寂雷さんと常連のお兄さんは知り合いらしい。



- 4 -

*前次#


ページ:




戻る