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「そうだ棗、これあげるね!」

帰り際に乱数君に差し出されたのは3本のカラフルな棒付きキャンディだった。

「いいの? でもケーキ代も払ってもらったのに、貰ってばかりで悪いなぁ…」

先程堪能していたいちごのショートケーキも自分で払うと言ったのだが、それを断固として許さず結局奢ってもらう事になったのだ。

「いいのいいの!さっき棗に頭撫でて貰ったから、そのお礼だよっ」

「私の手ってそんな価値があったんだ…」

うーん、ただ自分の欲のままに撫でただけなんだけどな。

「も〜、本当に気にしないで?僕棗の事が大大大好きだから、何でもしてあげたくなっちゃうの」

「でも、迷惑だったかな?」と涙目で問いかける乱数君の行動は明らかに自分の可愛さを分かっているものだ。でもそんなのは気にしない。可愛ものは可愛い!

「迷惑じゃないよ、私も乱数君大好きだよ」

こんなにも自分の事を好きだと率直に言ってくれる友人は乱数君だけだ。その気持ちは本当に嬉しい。

「わぁ〜っ僕たち両思いだ〜!嬉しい〜!」

そう言って乱数君は笑顔で私の腕に自分の腕を絡ませた。洋服越しに腕の細さが伝わってきて、もしかして自分の方が太い…?と焦っていたのは私だけの秘密だ。

「ふふっ!ねぇねぇ棗、僕のところに来ない?」

「えっ、乱数君のところ…?」

突然の提案に理解が追いつかず、彼の言葉を復唱してしまう。

「うんっ! 棗はシブヤ好きでしょ? 甘いものや可愛い洋服も沢山あって、何より僕たち両思いだから!僕の家、あと1人いても余裕あるし!ね?いいと思わない?」

「え、えっと、」

マシンガントークが始まるのはいつもの事だけど、その内容に戸惑ってしまう。つまり寂雷さんの所を離れて、乱数君と一緒に住むという事だと頭の悪い私でもすぐにわかった。
今までも彼と沢山お話ししてきたけど、この様な誘いをしてきたのは初めてだ。

「ごめんね乱数君、誘ってくれるのは嬉しいんだけど、私一緒には住めないよ」

「え〜何で何で?僕の事本当は好きじゃないの?」

「そんな事ないよ! 乱数君の事は本当に大好きだよ。…だけど、寂雷さんと過ごす時間も同じくらいに大好きだから」

寂雷さんは独りぼっちになった私を救ってくれたのだ。そんな人と共に過ごしていたいというのは私の我儘かもしれない。だけど、それでも時間の許す限りは一緒にいたいと思うのだ。

「…ふーん、そっか。棗がそう言うなら、今回は諦めるよ」

私の返答がよろしくなかったからか、乱数君はつまらなそうな表情絡めていた腕を解いた。今回はという言葉が少し引っかかったが、とりあえずは諦めてくれるらしいのでこれ以上は何も言わないようにしよう。

「ごめんね。でも乱数君とお話しするの楽しいからまた遊べたら遊びたい、な」

乱数君と一緒に住むのは難しいけど、彼との友人関係も崩したくない。都合のいい話かな、と不安になりながらも彼の表情を伺う。

「…いいよっ僕も棗とお話しするの楽しいから! だから、そんなに泣きそうな顔しないで?」

「突然で困ったよね、本当にごめんね?」と謝る乱数君に私は「ううん、大丈夫」と首を横にゆっくり振り、不安にさせない様に笑顔で答えた。

「…、やっぱり、棗には泣き顔より笑顔が似合うよ。泣かせちゃった僕が言うのもなんだけど」

「乱数君も、落ち込んでる顔より笑顔の方が似合うよ」

お互いに言い合ったところで思わず吹き出してしまい、それを見た乱数君も笑ってくれた。先ほどの乱数君は何だかいつもと違う雰囲気がして少し怖かったから、今こうして笑顔を見せてくれた事に密かに安堵した。



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