「サンヨウシティ付近に生息するポケモンだとヨーテリーは知能が高くトレーナーの指示にも素直に従うので初心者でも育てやすいと言われていますね」
「へー」
「逆にチョロネコは人のものを盗んだり困らせたりするのでポケモンに慣れていないうちは苦労するかもしれません。マメパトは人懐っこいので扱いやすいとは思いますがトレーナーの指示をすぐに忘れてしまうくらい忘れっぽいのが玉に瑕ですね」
生きていて一度も相棒ポケモンを持ったことのない私は恐らくかなりポケモンに疎いほうだろう。家には父の相棒でもあるシママがいたけれど父以外にはあまり懐かない子だったから私がシママと仲良くなることもなかった。
——ポケモントレーナーとして旅に出る。それ自体への憧れはあった。ただ、何もかもが初めてでどんなポケモンが初心者向けなのか、そもそもサンヨウシティ付近にどのようなポケモンが生息しているのかもよく分からない私には旅に出ること自体ハードルが高い。
そんな私にポケモンについて教えてくれたのがコーンくんだった。一年前、ポケモンも持たずに草むらに近付いて案の定野生のチョロネコに襲われたのを助けてくれて以来、ポケモンのことを教えてくれている。
サンヨウシティの元ジムリーダー。訳ありでジムを畳んでしまった今はレストランのウェイターをしながらポケモンを鍛えている。私よりも遥かにポケモンに詳しくて強い人がどうして私に色々と世話を焼いてくれるのかは分からないけれど。
「ちなみにコーンくんのおすすめは?」
「やっぱりヨーテリーでしょうか。ジムリーダーをしていた頃、新人トレーナーが連れているのをよく見ましたから。受けた愛情は決して忘れないポケモンなのでナマエとの相性も悪くはないと思いますよ」
「コーンくん、ヨーテリーのことよく知ってるんだね」
「知っている、というかジムリーダーだった頃に育てていましたからね。今はみずタイプを極めようと思っているのでヨーテリーをポケモン勝負で使うことは減ってしまいましたけど……」
知らなかった。コーンくんが戦っているのを見ることはあるけれど普段使っているのは相棒のヒヤッキーやバスラオ、ヤドキングのようなみずタイプのポケモンたちばかりだったから。
「もしヨーテリーを捕まえるならボクのヨーテリーを貸しましょう。弱らせないと捕まえにくいですし」
「いいの?」
「ポケモンを持っていないナマエではヒヤッキーたちは扱いきれないでしょうから。ポケモン初心者を一人で行かせる気もありません」
「ありがとうコーンくん。でも何から何までお世話になりっぱなしで……私のほうは何も返せていないのが申し訳ないんだけど」
せめてトレーナーになったあと、コーンくんのトレーニング相手を務められるくらいに強くなれたらいいのだけれど何年かかるか分からない。
仮にイッシュ地方で全てのジムバッジを集められるほど強くなれたとしても、その時にはコーンくんももっと強くなっている筈だ。元々、ジムリーダーを任されるほど実力のある人なのだから。
「いいえ、既に色々と返してもらっています」
「どういうこと?」
「秘密です」
そう言って楽しげに笑うコーンくんのことを、私はまだ殆ど理解できていない。