*テルが主人公という想定で書かれています、また性格や口調、相棒ポケモンのベースはpkmsです
ある日コトブキムラにやってきたその人はギンガ団の調査隊に入団して瞬く間にヒスイ地方を救いポケモン図鑑さえ完成させてしまった。
テル、と名乗った彼はずっと遠い未来からアルセウスなる神に導かれてヒスイへやってきたという。未来から来たという話は半信半疑だったけれど私と同じくらいの年齢で後世に名を残してもおかしくないような偉業を成し遂げたところを見てしまっては信用する他ない。
「おれがいた時代だとヒスイよりも人とポケモンの距離が近いんだ」
そう言って相棒のジュナイパーを撫でるテルの瞳は穏やかだ。
コトブキムラでは——否、ヒスイ地方ではポケモンは恐ろしい存在とされている。村を出れば野生のポケモンに襲われるなんて日常茶飯事だ。ポケモンの調査に出かけたギンガ団の人が大怪我をして運び込まれるところを見かけたのも一度や二度ではない。
テルも最初の頃はモクローと上手く連携が取れなかったり退く頃合いを見誤って気絶してしまったところを助けてもらっていた、と話していた。
ヒスイ地方でポケモンを育てている人はほんの一握りだ。複数のポケモンを平等に鍛え上げている、となると更に珍しい。ギンガ団団長のデンボクさんやシンジュ団のキャプテンであるノボリさんはポケモンがとても強いと聞いたことがあるけれど大抵は一匹のポケモンを程々に育てるので精一杯だろう。
私自身、ポケモンを育てたことはない。ヒスイ地方で生まれ育った私は親からポケモンには近付くなと何度も言われてきた。
好奇心から村の近くにいた野生のビッパに触れようとした日には酷く叱られたことを覚えている。……ビッパは比較的大人しいポケモンとはいえ、今となってはあの時の自分がどれほど軽率で危険なものだったのか理解しているし大人たちの怒りや心配もよく理解できる。
「確かテルの時代だとポケモンを持ってない人は珍しいんだっけ」
「おれの時代にもポケモンが苦手な人はいたけどな。旅に出るには早い年齢の子供だとまだポケモンを持たせてもらえないことも珍しくなかったし……」
「私からすれば旅に出るのが当たり前な時代って想像もつかないな。ヒスイで旅をするにはポケモンへの理解も知識も何もかも足りないから」
ギンガ団の助けを借りてポケモンを捕まえてみようとしたことはあるけれど比較的温厚なムックルやビッパ相手でも結局一度もボールを当てることさえ出来なかった。
どのような動きをするのか、どんな攻撃を仕掛けてくるのか、何一つ知らないのだから当然と言えば当然だ。
「……テルは元の世界に帰りたいと思ったことある?」
「…………どうかな。確かに未来はヒスイよりも危険が少ないし故郷が恋しくなることもあるけど、ヒスイも好きだから。ジュナイパーや他の仲間たちと出会えたこの場所を離れがたいと思うのも本心だし。ナマエとこうして仲良くなれたのもおれがヒスイに来たからだろ?」
「そう、かも? 未来からやってきた人と仲良くなるなんて生きているうちに二度となさそう」
個人的にはテルにずっとヒスイにいてほしいと思うけれど、彼にもいつか帰る場所があって待っている人もいるかもしれない。だから帰らないで、なんて口が裂けても言えないけれど。
「でも今はまだ帰るときじゃないんだと思う。ヒスイでやりたいことも、やらないといけないこともあるからな」
「テルはすごいね」
私が同じ立場だったらどうすればいいのか分からなくて困ってしまうような気がする。この状況で前向きに頑張れる人だからこそ、創造神に導かれたのかもしれない。