ミアレシティで毎夜行われるZAロワイヤル。
強敵を薙ぎ倒し漸くKランクに昇格したナマエの次のランクアップ戦の相手はグリという名のトレーナーだった。上位ランカーや新進気鋭のトレーナーは大抵噂になっているし名前や相棒ポケモンの話題くらいは聞こえてくるものだが、ナマエがその人の名前を知ったのはこの日がはじめてだった。
顔も不明。居場所も不明。名前が本名であるのかさえ定かではない。そんな相手にどうやってランクアップ戦を申し込めば、と思っていたが当然ながらAランクはグリも目指すところであったらしい。ある日向こうから戦いを挑んできた。
——それはまるで炎のようだった。
全てを焼き尽くす、火。叶えたい願いを薪に焚べて燃え広がる炎。
的確な指示を出すグリにナマエはなす術なく敗北した。彼の切り札であろうポケモンの姿を拝むことさえ出来なかった。
◇
例えば故郷が何者かによって滅ぼされたとして。怒り、悲しみ、絶望などの感情が心の内に渦巻いていても故郷を焼く炎に目を奪われてしまうことはあるだろう。
故郷を滅ぼした仇に向けるような憎悪を向けているわけではないが、ナマエにとってのグリはそういう存在だった。自分を負かして先に願いへと近付いた人。歯が立たないうちに負けた悔しさはあるしいつかリベンジしたいとも思う。けれども自分のポケモンたちを相手に一切怯むことなく勝利を掴み取ったその姿は目に焼きついて離れない。
グリはナマエを打ち負かして、更に強いトレーナーたちも倒して、ついにはBランクに昇格したという。そこまで辿り着けるトレーナーはほんの一握りだ。
ミアレシティでグリより強いトレーナーは殆どいないと言ってもいい。それなのに相変わらずグリや彼の相棒の話題は全然聞かない。
——あの日見た炎に、自分でも気付かないうちに骨まで焼かれてしまっていた私と同じように。グリという炎に焼かれ、囚われてしまった人が多いのか。それとも別の理由があるのかは知る由もないけれど。
ちらり、と時計を確認する。そろそろZAロワイヤルが始まる時間だ。また街のどこかで不意打ち上等の試合が行われる。
格上のトレーナーと遭遇してしまうこともあるだろう。あの炎と、グリと、相見えることはあるだろうか。今の実力では勝てないと理解しているけれど、もう一度戦いたい。せめてその戦いを近くで見たい。
自分はグリにとって印象にも残らないような一般トレーナーでしかなかったかもしれないけれど、それでも。
「さあ、行こうか、相棒。あの日見た炎を探しに」
ボールから出した相棒が小さく頷く。相棒もまた、グリのポケモンたちと戦うことを望んでいる。