いつか灰色に別れを告げて

*グリ、グリーズの過去に関する捏造を含んでいます


 フレア団が何をして世間からどのように見られていたのか理解できないほど子供ではなく。けれどもフレア団の大人たちの罪を全て背負い、償いながら生きてゆけるほど大人でもなかった。

 私たちは次代のフレア団を背負う為に教育を受けてきた子供だった。フラダリさまが創る美しい世界で人々を導くのよ、と言ったのは母と呼べる人だった。
 血の繋がりこそあるけれど私がその人のことを母と思えたことは一度たりともない。彼女にとって私はフラダリさまの理想を叶える為に必要な駒で、私にとって彼女はフラダリさまを盲信する数多の団員の一人でしかなかった。
 私と同じように身内がフレア団の団員だったとか、或いは身寄りがなかったのをフラダリさまに引き取られたとか、そんな理由でフレア団に身を置いていた子供たちは何人かいた。
 グリもその一人で、グリーズも含めて私たちは三人でよく話していたことを今でも覚えている。年齢が近い人間が身近にあまりいなかった、というのもある。
 フラダリさまが最終兵器を起動して、私たちが世間から白い目で見られる日が来るなんてまだ想像もしていなかった頃。思い返せば決して楽しくはなかった。それでもなかったことにはしたくない、大切な青春の一部。



「考え事ですか?」
「昔のことを思い出してた」

 グリは誰よりも強くて、フレア団の大人たちからも期待されていた。グリーズもそんなグリに追いつこうと必死にもがいていて。私は二人の背中に手を伸ばしても届かなかった。
 メガシンカを使いこなせるように、と言われてグリはすぐにリザードンをメガシンカさせてみせた。やがてグリーズも同じようにポケモンをメガシンカさせることに成功した。
 では私はどうだったのか。相棒をメガシンカさせることが出来たのはフレア団がなくなってからだった。ポケモン勝負の才能には恵まれずいつも落ちこぼれ扱いだった。私の母だという人はいつしか私を見限って姿を見せることもなくなった。
 そんな私に失望することなく付き合ってくれたのがグリやグリーズで、彼らのお陰でメガシンカを習得出来たと言っていい。我々の名誉を回復させる為に戦うと言ったグリに付き従うことを決めたのもその頃だ。
 ……普段はヌーヴォカフェの従業員として忙しく動き回る日々だけれど、グリたちの助けになれるのならば苦ではない。

「グリはどうして私を見限ったりしなかったの? グリーズもだけど、落ちこぼれだった私と一緒にいたって優秀なあなたたちには何のメリットもない」
「見限ってほしかったのですか?」
「そんなことは……。ただあなたたちは私と一緒でなければもっと自由でいられたかもしれないとは思う」
「おれもグリーズも、同じ境遇の同志を見捨てる気が最初からなかったからですよ。ナマエ一人増えたところでおれたちがより不自由になることはありません」

 ミアレシティを離れ、カロス地方を離れて、フレア団なんて知られていないようなもっと遠い地方へ旅立てば。私たちはきっと過去に縛られることもなかったし呼吸もしやすかったのだろう。
 そうしなかったのはミアレシティという街が大好きで守りたい大切な場所だったからだ。
 グリもグリーズもミアレシティから離れて今よりも自由に生きるつもりはないらしい。その選択が良いものなのかどうかは誰も知らない。

「お人好し」
「それはお互い様でしょう。おれたちと一緒にいないほうがナマエの素性もバレにくい筈ですから」

 それはそうかもしれない。
 私はグリほど名の知れた存在ではなかった。当時のフレア団幹部たちの中には私の顔も名前も覚えていないなんて人もいたくらい。次代を担う存在として頼りないトレーナーを記憶しておく者など少数派だ。

「……私はグリたちと一緒に生きたかったのかもね。自由を得る代わりに広い世界で孤独に生きるよりも、不自由でも過去に囚われたままでもひとりぼっちじゃないなら辛くない」
「おれも似たようなものですよ」

 フレア団ヌーヴォとして私たちは迫害を受け続けることになる。五年前にフレア団が起こしたのはそれほどの事件で、私たちはその事実を背負って生きてゆかねばならないのだと思う。
 一人で抱えて生きていくのは耐えられないし、その荷物を捨てて全て忘れて生きていくことも出来ないなら。せめて寄り添えば心だけは軽くなるのかもしれない。