真綿に包んで捨ててしまえ

*愛がない


 無謀にもロケット団に刃向かうトレーナーというものはいつの時代にも存在する。
 そんなトレーナーたちの末路は決まって悲惨なものだ。ポケモンを奪い、二度と刃向かおうなどと考えられぬよう完膚なきまでに叩きのめす。それでも立ち上がろうとする者は家族や友人に手を出してやればいい。たったそれだけで簡単に心はへし折られ、泣いて懇願するのだ。自分はどうなってもいいから家族や友人だけは助けてくれ、と。
 目の前の女——ナマエもロケット団に刃向かったトレーナーの一人だった。
 かつてロケット団に相棒ポケモンを奪われ、復讐に燃えていたこの女はアジトまで乗り込み、あっさりと敗北した。……否、あっさりというと語弊がある。見張りをしていた下っ端たちを倒し、アジトの最奥部まで辿り着いてみせたことは賞賛に値する。だが、それだけだ。

「助けてほしいですか?」
「……っ、誰がロケット団の幹部に……!」
「我々は敵対者がどうなろうと構いませんが」

 ナマエには既に戦えるポケモンはおらず、ポケモンを回復できる道具も残っていない。万が一にでも逃げ出せないよう鞄とモンスターボールは全て奪っておいた。ある程度育て上げられたポケモンならばサカキ様もお喜びになるだろう。
 残された無力なトレーナーなど、何の価値もない。
 たった一言、助けてほしいと乞えば考えなくもなかったがどうやら彼女はそれを望まないらしい。

「そこのおまえ、この女を牢に放り込んでおきなさい。決して逃がさないように。抵抗するようであれば多少痛めつけることは許しましょう」

 近くにいた下っ端にそう命じて女を拘束する。
 ——彼女の心が折れるまで、自由は与えてやらない。仲間になるというのならば考えなくもないけれど、その場合も恐怖を与えて絶対に逆らえないよう洗脳してからだ。
 ギリ、とこちらを睨みつける女と目が合う。まだ諦めていないその顔。彼女がロケット団であれば幹部も夢ではなかったろうに。尤も性格はロケット団に向いていないのだが。
 諦めの悪い女だが、そんな女の威勢がどこまで続くのか、楽しみでもある。