02
結局、カンクロウに今日言われて居た仕事は全て片付ける程までに集中して、気づけば外は暗くなってしまっていた。
今日はもう任務の報告をしにくる奴も居ないだろうし、軽く食事を済まして早々に休もうと執務室を出ていく。
「…そういえば」
食事をしに外へ出て来たところでフと名前の事を思い出し、まだ他の忍たちと飲んでいるんだろうかと、前にみんなでよく行くお店というのを教えてもらった事を頼りにそちらへ出向いてみようと歩みを進めた。
夜といってもまだ早い時間なので食事処はまだどこも営業している。
夜の空に沢山の明かりが街には溢れていて、歩いていると昔よりは大分賑やかになったもんだとしみじみ思った。
確かこの辺だったような、
教えてもらったといっても、名前と二人で街を歩いている時にたまたまその店の前を通り、此処のお店はよくみんなで行くという事を聞いただけだった為、記憶を辿りながらその店を探していると、何やら一際賑やかな声が響いているところがあり近づいてみるとそこは名前が教えてくれた店で。
「……ここだな、」
店の扉は閉まっているのに、話し声や笑い声が外まで聞こえており、その声の中に一瞬名前の声を見つけた気がして、気づけばその店の扉を開けていた。
「いらっしゃ…!、て、風影様じゃないですか!いらっしゃいませ!」
「…ああ、少し聞くが、ここに忍が何人かで来ていると思うんだが」
「あ〜!いらっしゃますよ!いつも来てくれてね、奥の個室にいますから、案内しましょうか?」
「頼む、すまないな」
出迎えてくれた気っ風の良い笑顔の女性店員に案内され店の奥へと進むと、一つの部屋の前で店員が立ち止まり襖の脇から声をかけた。
「お客様、お連れ様がお見えになりましたよ、」
声をかけてからすぐ、中からは誰だ?誰か呼んだっけ?など疑問の声が飛び交っているのが聞こえて、今更ながら俺はなぜ此処まで来たんだと少しの後悔が出てきてしまった。
せっかく仲間たちと楽しんでいるのに、俺が来ては迷惑だろうか、いや、少し様子を見に来ただけだ。少し顔を見たらすぐ帰ろう。
正直なところ連れて帰りたい気持ちもあるが、そんな事をしては名前に愛想をつかれてしまうだろうと我慢する。
そんな事を考えていると、襖が少し開き、中からは忍の一人が顔を出した。
「他に誰か来るって聞いてないんだけど、誰で、……!か、風影様!お疲れ様です!」
「…ああ、食事中のところすまない。名前はいるか?」
「あ、あ〜そういう事ですか!おい名前!迎えが来たぜ!」
「いや、少し様子を見に来ただけなんだ、」
名前は居るかと聞いた瞬間、忍の表情に笑みが加わり、俺のいう事などまるで耳に入れず襖の向こうに居るであろう名前を呼んでいる。
だが名前は途中で帰りたくはないだろうと、出て来た忍にやっぱり呼ばなくて良いと、もう一度声を掛けようとした。
「たまたま近くを通っただけなんだ。楽しんでいるなら呼ばなくていい」
「いやいや!もう連れて帰ってくださいよ、あいつ今日なんか機嫌良くてすげえ飲んじゃって!ほら名前!お前もう風影様と帰れよ〜!」
結構酔っ払ってるんですよあいつ、と言いながら再度名前を呼ぶと、中からやっと、酒の所為で顔を赤らめた名前が出て来た。
「お〜!がーらだ〜!あ、いけない、かぜかげさまっ!だったね〜」
…かなり飲んだようだな、機嫌が良いと言っていたが、一体何があったのか。
よほどこの会が楽しかったのか。
我愛羅、と呼ぶ事を頑なに拒否し続け、俺と二人きりだろうがそうじゃなかろうが必ず風影様と呼ぶようにしている彼女は今、へべれけになりながら大きな声で、さらに手を振りながら我愛羅と呼ぶ。
酒とは恐ろしいものだ。が、俺としては初めて呼ばれた自分の名前に心臓が小さく跳ね、内心ひっそりと酒に感謝した。
「風影様、この通りこいつすげえ酔っ払ってるんで、後お願いします!」
「…ああ、迷惑を掛けたな。名前、家まで送る」
ここま呑んだくれになったのは初めての様で、厄介者とまではいかないが扱いに困っていたらしく、迎えに来てくれて助かりましたと半ば強制的に名前を押し付けられた。
俺の方まで来た名前は俺の後ろに周り、おんぶしてと両肩に手を置くので、周りの目が多少気になるがこの酔っ払いをスムーズに連れて帰るには最善の案だと思い少し屈んで背中に乗せた。
「んふふふふ、迎えに来てくれてありがと〜、ふふふふ」
「随分とご機嫌だな」
俺の後ろ頭に自分の顔をすり寄せて来る名前を背中に背負ったまま、名前と共に食事をしていた忍たちがいる部屋の会計を済ませてから、ニコニコと屈託のない笑顔の店員に見送られ店を後にした。