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それから、友達らしい事をすると言ったボルト君にひたすらついて行って、ゲームセンターやショッピングモール、木の葉の観光地にも足を運んだ。
途中、お腹が空いたと連れて行ってもらった、ラーメン一楽には感動してうおおおおおお!と店の前で声を張り上げた。
ナルトの世界にトリップしたら必ず誰しもが行ってみたいと思うあのラーメン一楽に、私は今日行ったのだ。
狂喜乱舞するしかないでしょうが。
そしてボルト君が今ハマっている、というか周りのみんなも結構やっている「忍バウト」というカードゲームを教えてもらって公園でやったり、
カードと言えば集めてる物があると言われて駄菓子屋さんへ連れてこられ「激・忍絵巻」というカードゲームを教えてくれた。
確かこの通称「ゲマキ」というカードゲーム、ボルト原作で見た記憶がある。
私も買ってみようかなと、どれにしようか唸るボルト君の横から一袋選び買った。
「名前!せーので開けようぜ!」
「いいね!あ、これって木の葉の忍だけなの?」
私の後を追って一袋選んだボルト君が駆け寄って来て、同じタイミングで袋に手をかける。
その時フと気になって事を聞いてみると、興味無さそうなシカダイ君が横から覗いて来て返事をしてくれる。
「有名な忍がモチーフだからな、木の葉だけじゃねえぜ。我愛羅おじちゃんもいるんじゃねえの?」
「うっそ!それがいい!我愛羅君がいい!」
「我愛羅のおっちゃんは激レアだってばさ。そんな簡単に出ねーよ」
「ぬううううう…!」
こういったモチーフがあるカードゲームは、ルールが難しかったりするし、私にはきっと出来ないだろう。
女の私からするとただのブロマイドと化すこの手のカードゲームは好きなキャラクターを集めるという所に意味がある。
それなら我愛羅君が出て欲しいよねと思いまだ封を切っていない袋を両手で包み、出ろ〜出ろ〜と念を込めた所で、ボルト君の一声により再度袋に手をかける。
「せーの!」
「えい!」
ビッ!と勢い良く封を切り、中のカード十枚をソロリと取り出す。
「きいやあああああああ!!」
「え?!まさか我愛羅のおっちゃんが?!」
「嘘だろ?!本当に出たのかよ?!」
取り出した中身の一枚目を、手のひらで隠しつつ、片目を閉じながら薄めで見やった私は奇声を上げた。
二人ともその声を皮切りに、私の手の内にあるカードに目を向けて来ると、シカダイ君は小さく、何だよと呟き、対してボルト君はスッゲエエエエエ!と声をあげた。
「うちはイタチ!凄えレアじゃん!」
「こんなのまであるの?!美し過ぎるんだけど!」
「なんなんだよお前ら…、それよりボルトはどうなんだよ?」
ふおおおお!と激レアらしいイタチさんをキラキラとした眼差しで見ていると、シカダイ君がボルト君の手元にあるカードを覗き見た。
「!…お、おいボルト、これ」
「ん?…………!!」
二人がボルト君が引いた一枚目のカードに驚いているのに目もくれず、若かりし頃のイタチさんを神々しいものを見るように眺めていると、ボルト君に肩を叩かれた。
「くっくっく、名前、交渉だってばさ」
「え?……は!それは!」
含む様な笑いを零しながら一枚のカードを差し出してくるボルト君。
その手には私が懇願した、
「が、我愛羅君!!」
「へへ、俺凄くねえ?…それで名前、そのうちはイタチをくれるなら、我愛羅のおっちゃんのカード、あげてもいいぜ?」
「な、なんと!イタチさんと我愛羅君をトレード?!」
「悪くねえだろ?」
ぐう…、我愛羅君欲しい、が、このイタチさんも相当な、私からするともう出会う事のできないレアな人という事で、我愛羅君には悪いがトレードに少し迷ってしまった。
シカダイ君は飽きたのか、近くのベンチに寝転んでいる。
イタチさん、好きだったしなあ…。
どうしようかと迷っていると、不意にボルト君の言った言葉に反応した。
「それにしても俺の狙ってるうちはサスケのカード、ほんと出ねえんだよなあ」
「ん、何?ボルト君、サスケ君が欲しいの?」
「ああ、でもぜんっぜん出ねえんだってばさ」
七代目火影のカードは出るのによ、と口を尖らせながら他のカードも順番に見ていっている。
そうか、サスケ君はボルト君の師匠だったっけ。
師匠みたいになるって、大筒木の一件の後言ってた気がする。
それなら師匠であるサスケ君が目指していた兄、イタチさんのこのカード、なんとなくボルト君に持っておいてほしいという気持ちが出てきた。
私の勝手な想いだけど。
「ボルト君、このイタチさんのカード、あげるよ」
「お!マジ?!やった!俺まだ持ってなかったんだってばさ!」
「うん。ボルト君はさ、イタチさんの事、知ってるの?」
なんとなくだけど、ボルト君はイタチさんの事を詳しくは知らないだろうと思った。元々は里を抜けた抜け忍であり、犯罪者なんだから。サスケ君がイタチさんの事をナルト君や里に言ったのかは知らないが、多分、こういう忍者が居たっていうくらいしか知らないんじゃないか。
「うーん、サスケさんの兄ちゃんで里を抜けたってくらいしさ知らねえってばさ。それがどうしたんだよ」
「そっか。…いや、なんでもないけど、イタチさんってね、とっても素敵な人だったんだよ」
イタチさんのカードを見ながら、自分の世界で見たイタチさんの最後を思い出した。
穢土転生で蘇って、その聡明さでカブトを打ち破ったあの場面。サスケ君にずっと愛していると言っていたあの場面。
何回も見て泣いちゃったなあ。
一族を殲滅して里を抜けたのは悪い事だし、何より暁は我愛羅君を狙ったという事実があるから許せない。だけど、それもこれも弟のサスケ君を想っての事だったんだと、思い出しただけでも込み上げてくるものがある。
ああやばい、読み返したくなったし、泣きそう。
「……?名前は知ってんのか?うちはイタチの事」
「え?、あ、ああ…んー、ちょっとだけね。はいコレ。大切にするよーに!」
イタチさんを思い返して感傷に浸ってしまってハッとした。
あんまり喋り過ぎると良くない。ボルト君は私の事知らないんだから。だけど知らないと言えば嘘になる。それに少し罪悪感を感じて少しだけと曖昧に返事をしつつカードを渡し、話を終わらせたつもりだった。
「ああ、分かったってばさ。じゃあコレ、我愛羅のおっちゃんのヤツな!…それより、サスケさんの兄ちゃんの事教えてくれよ」
「え、…あー、いや、それは」
そういえばボルト君は結構、探究心が旺盛な子だったな、と少しだけでも知っていると言った数秒前の自分を恨んだ。
我愛羅君のカードを受け取りながら、なんて返せばいいのか分からず曖昧に濁す。
ボルト君も馬鹿じゃない。さっきの友達の件といい、何かあるんじゃないか?という目を向けてくるのに耐えられなくて、此処は含みのある感じで返しておこうと決めた。
「知ってるけど、今は教えられないんだよ。また、機会があったらね。…それとお願いなんだけど、私がイタチさんの事を知ってるって事、誰にも言わないで」
「あー?なんだよそれ。…まあいいけど。黙っといてやるからさ、今度またなんか奢ってくれってばさ!」
「お…、おお。いいよ。ありがとサンキューっ」
意外にもアッサリ了承を得れた事に少し驚きつつも、とりわけ明るく礼を述べる。
奢れというのがちょっと怖いけど。物分かりが良いというか察しが良いというか、そんなボルト君に感謝だぜと思いながら言ったありがとサンキューという礼の仕方に、それ流行らねえぞと呆れられた。
「なんだよ、カッコいいでしょーが」
「ダセエよ。雲隠れのチャライ、だっけ?そいつみてーでよ」
「いやユルイ君でしょ。怒られるよ」
「…おーい、カード交換の交渉は成立したのかよ。そろそろ帰ろうぜ」
名前間違えるなんて失礼だよボルト君、などと小競り合いをしていると、いつのまにかベンチで寝転がっていた筈のシカダイ君が痺れを切らしてやってきた。
帰ろうぜという言葉に少し寂しさを覚えながら見上げた空は少しオレンジがかっていて。
随分長い時間遊んでたんだなあと、目を閉じながら腕をグッと伸ばし、身体が解れているのを感じた。