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それから家の近くのスーパーに立ち寄り食材を買ってから帰宅。どっさりと購入した品々を部屋に置いて、ご飯作るからと、食材の入った袋を台所まで持って行けば付いてくる少年。

「なに?手伝ってくれる?」

そう声を掛けても無言のまま私の後ろに立っているので、ああ監視の意味かなと勝手に解釈をし料理の作業に取り掛かる。

ずっと立ちっぱなしでこっち見てるけど、疲れないのかな彼は。
そういえば昨日の夜もこうやってカップラーメン作ってる最中も私の事見てたっけ。

食事ってのは無防備になりやすいのだろう、毒を入れられて里の脅威を排除しようなんて事が日常茶飯事だったのか、作り手を監視して下手な行動に出ないようにと、それが癖になってしまっているんだろう。

こちらとしては料理している姿を見つめられている事になんて慣れていないから恥ずかしいんだけど。


結局、料理が出来上がるまで私の後ろにいた我愛羅君に、運ぶのを手伝ってくれと申し出るとサラサラと部屋にある瓢箪から出てきたであろう砂が近づいて来たのでやっぱりいいですと断った。





「今日は疲れたでしょ」

「…」

テーブルに並べられた料理をジトリと見つめながら私の問いかけには相変わらず返事はしない。
今日はシチューだよ、季節外れだけどね。と続けた私と、私側にあるシチューを交互に見てから少しの間を置いて、お前が先に食べろと言う。

「?、言われなくても食べるけど」

突然何かな?と思いながら自分のシチューを一口食べると、まろやかさが口いっぱいに広がった。
上出来上出来、いつも適当に作るけどやっぱり料理はフィーリングだよね。今日のシチューは今まで以上に美味しくできたと自分の功績を噛みしめた。



「……交換だ」

「……は?」


もう一口、とスプーンをシチューに挿し入れようとしたら突然の謎発言。
そのまま我愛羅君の前にあるシチューと私のシチューが入れ替えられ呆気に取られる。


「…どうした、食べないのか」

「いやいや、交換する意味が分からないんですけども」


それ私が一口食べたんだよ、その分我愛羅君の分が減ってるんだよ、残念じゃないの?
なに、そういう趣味なの?私ならいっぱい食べたいからそんな事しないんだけど、なんなの?砂の里で流行ってるの?

意味が分からないと交換したシチューにさえ手を付けようとしない我愛羅君からまたもや謎に満ちたとんでも発言が飛び出す。


「やはりな、交換すると食べられないんだろう。俺の隙をついて毒でも混ぜたか」



……。



いやいやいやいや!何言ってんのこの子ォオオ?!
毒ってなに?!青酸カリ?青酸カリとかの事?!
そんなもの手に入れられるはずないでしょ?!一般ピープルだよ?私!

さっきショッピングモールで見せたデレ状態はどこへやら。目の前にいるのは卑屈な笑みを浮かべたツンモードの我愛羅君。
定食屋の親子丼は普通に食べたくせに!

あのねえ、と言葉を発しようとした私に向かって、やはり信用できるのは自分だけだなと言い立ち上がろうとする。


「っだー!もう!分かった分かった!食べるよ!食べりゃいいんでしょ!じゃあスプーンも何もかも交換ね!私が使ったスプーン使えば!」

間接キスだけどね!それでいいんだよね?!
分かったから大人しく座って食べなさい!
と大きく叫び出した私に驚き、立ち上がるのをやめ我愛羅君の前に置かれたスプーンを奪い取りシチューを食べ始めた私を見た。


「ツンデレ少年!早く食べないとそれも私が食べるよ!この世界はね、毒を盛ろうなんて考えるヤツは殆どいないんだよ!平和なの!君のいた世界がどんなところか知らないけど、今は私の世界にいるんだから、ちょっとは信用、てか、甘えればいいんだよ!」


大人しく甘えとけ!そして食え!と言う私に呆気に取られた様子の我愛羅君は無言のまま私が使ったスプーンを取り食事を始めた。


……ほんとに使った。死にそう。我愛羅君と間接キスなんて、死にそう。
できればその使ったスプーンをもう一度私に回してくれと思ったのは内緒だ。


なにはともあれこれで私が何もしない、何もできない非力な、ただただ世話をしてくれる人間だと思ってくれたらいいのに。
それが叶うのはいつになるやら…。