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運転をし始めて数時間。
途中休憩という名の寄り道をしたりで思ったより時間がかかってしまったが、ようやく目的地へ到着。

晴天で青々していた空は少しオレンジがかっている。


「ん〜疲れた!あ、今日と明日はここの旅館に泊まるから。」


ド田舎、とまでは言わないが、自分が住んでいる場所よりも緑溢れるこの場所は温泉街。
その中にある、私たちが泊まる古風な旅館はご飯が美味しいというネットの評判だけで決めた。
山に囲まれた街が誇る川魚や山菜などの料理に釣られ、即座に予約ボタンを押した事を思い出し、ああ早くご飯食べたいと唸る。

とは言っても晩御飯の時間までまだ少しあるので、荷物を置きに私だけ旅館に入りチェックインを済ませ、車を駐車場に置いたまま温泉街であるこの街を練り歩く事に決めた。


「いいねえ、この穏やかな雰囲気!あ!鮎の塩焼き売ってる!」

「あら、観光かい、お嬢さん」


きゃ〜うまそう〜!
美味しそうな匂いを漂わせながら売られている鮎の塩焼きを見つけフラフラと店に寄って行くと気っ風の良さそうなおばちゃんが声をかけてきた。

観光です、と返すと、そうかいそうかいとこれまたいい笑顔を向けてくれた。


「うちの鮎は美味しいよ、でももっと早い時間に来た方がいいよ」

「ん?なんでですか?」


青い空の下、河川敷で座って食べる鮎が最高だからさ!都会じゃ味わえないそういう雰囲気を感じて欲しいねえ。と言うおばちゃんに、なるほど!と思い切り頷く。

じゃあ明日、朝起きたらもう一度来ます!と空が晴れる事を願いながら約束をし、離れた場所に立っていた我愛羅君の元に駆け寄った。


「ねえねえ楽しいんだけど私」

「…だったらなんだ」

「我愛羅君は楽しくない?」

「……知らん」


腕組みをし、テンションが上がりつつある私を一瞬見た後スタスタと歩いて行ってしまう。

もう、可愛いなあ、そんな無愛想なところもス・キ!なーんて!

久しぶりに人と旅行して、楽しくなってきている私は気分上々である。
可愛い!ス・キ!なんて我愛羅君に向かって言ったらどんな顔をするんだろうか。
…黙れとか言われそうだから言わないけど。


「待ってよ我愛羅くーん」

「…」


どうでもいい事を考えている間に離れてしまった距離を縮めようと小走りをし、我愛羅君の隣をゲットしたところでお土産を先にチェックしときたいから付き合ってと頼み、返事のない我愛羅君を半ば無理矢理連れ歩く。


「さっきのは同僚、これは部長に、あっ、このお菓子美味しそう〜!これはウチ用に買って帰るかな、よしよし」

「…」


帰り際に買って帰るお土産を事前にチェックするという、なんとも要領が良いのか、暇なのか分からない行為を私はいつも旅行に行く時している。これはこれで帰り際慌てなくていいのだ。時間潰しにもなるし。

ほぼ一人で店内を見ては、さっきから感じる視線をようやく無視できなくなり、その主に声をかける。


「我愛羅君、もしかして暇?」

「…」


なんだよ明らかに暇なんですけどみたいな視線向けてくれちゃって、話かけても無視するんだもんなあ。許すけど。可愛いから。

ごめんごめん、と謝る気は特に無い上部だけの言葉を我愛羅君に向け、そろそろ晩御飯食べに帰ろっか!と我愛羅君の手を引き旅館を目指して来た道を帰る。