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暫く各々の時間を過ごし、て言っても私はテレビを観て我愛羅君はずっと壁にひっついて座ったままだったけど、そろそろお風呂かな〜なんて思いながら部屋の電話を手に取りお酒を持ってきて貰うように頼む。
時間にすれば5分も経たない内に徳利とお猪口が乗った丸くて小さめのお盆を持って女将さんがやってきて、
ニコニコとしながら序でに着替えの浴衣がある場所も伝えてきて、ごゆっくりと言い残し戸を閉めていった。
「さ!我愛羅君!お風呂だよ!一緒に入ろう!」
「…お前だけ入ってくればいいだろう」
「やーだー!一緒がいーいー!おねがーい!お酒付きあうのは二十歳になってからでいいからお風呂くらい付きあってよ〜!今日だけ〜!」
いーじゃん!減るもんじゃなし!と年甲斐も無くジタバタと暴れてみる。
自宅の狭い風呂で二人同時に入るのはこっぱずかしい気もするが、なんたって今日は露天風呂。何回も言うが露天風呂。
異世界の少年と露天に浸かって月を眺めながら晩酌なんて最高に粋だ。絶対にしときたい。
「…」
「そういえば今日お土産見てる時にね、美味しそうな砂肝売ってたよ、それ買ってあげるから入ろうよ」
ジタバタ作戦にあまり効果が見られなかったので物で釣る作戦に移行してみる。なんて卑劣な大人だとか言われようが知るか。
「…何を企んでいる」
「……あー、それ言っちゃダメでしょ、何も企んでなんか無いって。すぐそう言うんだから。私達家族みたいなもんじゃん一緒に住んでるんだし。家族でお風呂入ろうよって言ってるだけだよ」
「俺はそんな風に思ってなどいない。勝手に入れ」
…うーわ。傷ついた。なんだよ、なんなんだよ。もういいもんね、一人で入るからいいもんね!
我愛羅君なんて知ーらない!とプンプン怒りながらお酒と着替えを持って一人お風呂場へ向かう。
全くもう、本当に可愛い振りして捻くれてるんだから!
めちゃめちゃ長湯してやる!我愛羅君なんて一人で寂しく寝とけばいいんだ!まったく!
「ん〜!女将さんの言ってた通り!ちょっと寒い!」
流石、山が連なる場所だけあって吹き抜ける風が冷たい。
先に身体を洗っちゃおうかな、と持ってきた熱燗と小さいタオルを濡れない場所に置いてからシャワーを使い身体を綺麗にしていく。
あっという間に全て洗い終わり、濡れた髪もそのままにしてチャポンと湯気が漂う温泉に身体を沈めてみると少し熱いくらいのお湯加減で肌がほんのり紅く染まった。
「うい〜〜い。きんもち〜い」
湯船に浸かったまま手だけを伸ばし今日のメインである熱燗をたぐり寄せ、ぬるくなってないかな、とお猪口に少し注ぎ飲んでみる。
「あっ、つ………熱々じゃん最高かよ」
このまま時間が止まってくれたらいいのに、ていうか今死んだら私まじで最高の死に方じゃね?うん良い、良いね。
あ、でも休み明けに仕事溜まってるんだった…。
って、こんな時まで仕事の事考えちゃうって現代人というか社畜というか。
「それにしても我愛羅君、ちょっとは心開いてくれてたと思ってたんだけどなあ、つらっっ」
いや、いいんだ!いいんだ!あんなクソガキ!恩を売ったとは思ってなかったけど優しさを踏みにじる様な事言われたら大人気ないけど怒っちゃもんね!ヤケ酒だよまったく!!
子ダヌキが!と悪態を口にしつつ、もう一杯とお猪口にお酒を注いで飲もうとした時。
微かに呻き声が聞こえ私の晩酌を邪魔した。