29

「ただいま…」


あれから結局、部長は飲みたい気分だったのかどんどんお酒を頼み、私はつきあわないわけにもいかず一緒に飲んでると時間はもう深夜。終電も無くなってタクシーで帰宅してきた。


「我愛羅く、ん?」

「…なんだ」


部屋に入ると我愛羅君はまだ起きてる。あ、寝ないんだっけ。電気も点けずにいるその人物に遅くなってごめんねと一言謝っても返事はない。

多少酔っ払っている私はよろよろとベッドへと行き、ベッドにもたれかかって座っている我愛羅君に後ろから抱きついてみる。


「…我愛羅君、私がいなくなるって言ったら、どうする?」


柔らかくて私と同じシャンプーの匂いがする赤い髪に鼻を押し付け匂いを確かめながら聞いてみるけど、嫌がりもしないが返事もくれない。

部長はいい人だ。私はまだ21で若造以外の何者でもないが、将来有望であんないい人にプロポーズまがいな事されるといい気分というか気持ちが揺らぐなんて勿論で、ついていってもいいかな?なんて思ってしまう。無論、我愛羅君がいなかったら受けていたかもしれない。
受けて、もしダメでも私はまだやり直しがきく。なぜなら若いからだ。
女としての幸せはもちろん掴みたいと思っているからこそ、そういうチャンスは当たって砕けろの精神で向かっていってもいいんじゃないかなって。そう思う。
私はこんなに肉食系女子だったかな。


「…いなくなるのか」

「あ、いや、えっと…」


私はどうすればいい?部長についていってみるか、我愛羅君とこのままでいるか。
我愛羅君にそれを聞いて、私は我愛羅君になんて言ってほしいのか分からないけど、お酒の力を借りて聞いてみるのもありかもと、我愛羅君の様子を伺いながら口を開こうと思ったが、先に口を開いたのは我愛羅君。


「…やっぱり、お前も」

「え?」

「…」


小さく呟かれた言葉は殆ど私には届かなくて、我愛羅君がなんて言ったのか、聞き返してみるも返事が無いので急に襲ってきた眠気に抵抗もせず我愛羅君に抱きついていた体を離しベッドへと潜った。

薄れていく意識の中、何か聞こえた気がするけど最早現実なのか夢なのか分からないし、誰が何を言ったのかも分からなかった私はほろ酔い気分に任せてそのまま意識を飛ばした。