01
我愛羅君が現れるという現実みたいな夢を見てから約一年ほど経って私も22歳になり、夢を見る前の忙しい毎日に追われている。
結局、あの時部長にプロポーズ紛いな事を言われたのは現実で、それを私は断った。
部長は新しいプロジェクトの為異動して行って、新任したニュー部長の元でこちらも新しい仕事でてんやわんや。寝る間も惜しんで仕事に取り掛かり、前の忙しくも緩くやってこれた職場ではなくピリピリとした空気に変わってしまった。
「あーもう、前の部長って結構一人で仕事背負い込んでたんだな、」
「今の新しい部長って指示だけして何にもしてないよね?前部長はイケメンで仕事もできるし見てるだけで癒しだったのにな〜」
「だよね〜、」
お昼休みには同僚達と今までだと言うことなんてなかった愚痴を呟くようになり、今まで本当に恵まれた環境にいたんだなあと最近は凄く実感している。
今も恵まれてない訳じゃないけどね、ニュー部長がムカつくだけで。
朝出社して残業続きだし帰ってもすぐ寝るか持ち帰った仕事をこなすだけの毎日。
今日だって、仕事に追われすぎてあれ、もう今日終わり?みたいな状況でひとつも仕事が終わってない。
また持ち帰らなきゃ。
あ、こういうのが嫌でみんな転職だの退社だのしていくのか。
休日も何故か家で仕事しなきゃいけないし、ゆっくり漫画も読めやしない。気づけば完結していたナルトの次にボルトという息子達のお話が始まっていて。我愛羅君にも息子がいる。養子みたいだけど。
あんなに幼かったみんなが私より遥かに大人になっている。
「もう一回、我愛羅君に会える夢が見れたら、謝りたいなあ」
あの時私が居なくなったら、なんて聞いた事を一年経った今でもちょっとだけ後悔していて、夢だから関係ないと思いつつ、もし本当に我愛羅君が居たんだとしたら、と思うと申し訳ない感情でいっぱいだ。
「ま、悲観してても仕方ない、仕事しなきゃ」
ナルトの子供達の今後が楽しみだと内心ワクワクしつつ、漫画が入っている棚を開けボルト最新巻を仕舞おうとすると、コロンと何かが落ちて来た。
「なんだこれ…?コルク?」
誰だこんなとこにワインのコルクを置いたのは。ていうかワインなんて誰が飲むんだ。私はれっきとしたビール派、あんなお洒落な飲み物飲んだ覚えなんて無いのに。
でもワインのコルクにしては大きいような、大瓶?そんなのあるっけ?
「…ていうか、コレって」
まさかそんな、ないないない。と思いながらコルクが落ちてきた場所にあるナルトを一冊取り出して乱雑にページをめくり、赤い髪の少年を探す。
「やっぱり、………似てる。これ我愛羅君の」
瓢箪のコルクだ。
じゃあやっぱり夢じゃなかったって事、?そんな事ってあるの?
え、じゃあ我愛羅君は帰ったって事?それとも、私があんな事言ったから怒って出ていった?
でももう一年くらい経ってるし、元の世界に帰ったって事、かな。
「待てよ、ていうかなんでナルトが入ってる棚からコレが……あ、」
"お前は最初から嘘を"
「嘘って、もしかしてコレの事…?」
一年前に見た夢を微かに辿る。
我愛羅君はこの棚をなんらかの理由で開けて、ナルトの漫画を見つけちゃったって、そういう事?
私が我愛羅君の事は知らないって言ったのに、こんなもの見つけたら私が嘘をついてたってことは明らか。
私、その日に限って私が居なくなったらなんて、そんな事…
「最低じゃん、私…」
最低だし、全部夢じゃなかった。私が裏切った所為で怒って帰っちゃったんだ。
どうしようどうしようどうしよう
私、我愛羅君を守れたらなんて言ってた癖に、我愛羅君の事好きなんて言ってた癖に、最後の最後で不本意ながらも裏切っちゃうなんて。
「ごめん、ごめん…我愛羅君」
ダメだ涙出てくる。我愛羅君が心を入れ変えて風影になるのは分かってるけど、その助けになれたらなんて思ってたのになんにも出来てなかった。謝りもできなくて、もう会えないなんて。
コルクを握りしめて止まらない涙もそのままにその場にうずくまる。
「うう、我愛羅くん、ごめん…」
「あなた、そんな所で何泣いてるの?」
「ぐす……え、?」
……………え???!!!
家の中のはずだった。急に上から声が降ってきたと思って涙でぐしゃぐしゃの顔を上げるとそこには赤い眼鏡をかけた、
「サラダ、ちゃん?」
握りしめてたコルクの感触は本物で涙が伝った冷たさも本物だったけど、また夢みたいな出来事が起こった。