02

「私の名前…、どこかで会いましたっけ?」

「え?!…あ、いや、えっと…」


ちょ、これ、どうしよう。
辺りは暗いし夜なんだろう、それでも一番に目に入った赤いメガネで思わずサラダちゃんと口走ってしまった。
会った事は無いけど一方的に知ってます!とは言えないし、そんなことよりまず此処はどこ、私はだれ状態なんですけど?


「あ、もしかしてママの友達、とか?ですか?」

「や、あ、う、うん!そう!そうなの!ママの友達の友達なんだけどね?」


サラダちゃんナイス!と、サクラちゃんには悪いが友達の、友達という事にさせてもらった。
まあでも、サクラちゃんは我愛羅君の友達?だし?私は我愛羅君の友達みたいなもんだし?嘘は言ってないよね?うん、言ってない。


「それで、なんでこんな道端でうずくまってるんですか?」

「ん?!あ、あー、ちょっとお腹痛くて…、でももう大丈夫だから!」


腕を上下させながらボディービルダーみたいなポーズをして元気さをアピール。それを見ながらお大事にと心配そうに言ってくれるサラダちゃんには申し訳ないがとりあえず今は一人になりたい。
普通に会話してしまっているが私はどうやらボルトの世界に来てしまったようだ。そんな信じられない事をいきなりサラダちゃんに言うわけにもいかないし、と言うか友達の友達とか言っちゃってるし。今更私異世界から来たんだよーんなんて言えない。


「じゃ、じゃあ、私はこれで……サラダちゃんも夜道には気をつけて…」


とにかく今は一刻も早く立ち去るべし!と思った私は軽く手を振りその場を離れる。
後ろから、あなたも気をつけてと小さく聞こえたので軽く返事をしサラダちゃんと別れた。

のはいいものの、時刻は夜。今日はどこに泊まればいいんだ私は、なんて考えながらとりあえず街の灯りがある方へと足を進めていく。

しばらく歩き続けたところで見えて来たのは火影の顔岩で。おおー本物はやっぱ迫力あるんだな、と声をあげながらなんとなく火影岩の上を目指していく。
あそこならあんまり人も来なさそうだし、今晩をしのぐのには良さそうだ。







……








「おおおお〜!眺めよし!空気よし!何これめちゃ最高じゃん!」


目の前には広がる青空!とは夜なのでいかないが、発展した街並みは美しくライトアップされていてその明かりは此処まで届いているので、振り向けば森が広がっているが怖くもなんとも無い。
これは穴場だ。折角ならナルト君やボルト君みたいに火影たちの頭の上に降りてみたいと思ったが私は忍じゃ無いしそこまで降りるのは自殺行為だな、なんてすぐさま諦め近くの木の根元に腰掛けた。


「っと、」


着ていた服が長袖のブラウスで良かった。木の葉の里はいつも暖かい気候みたいだけどさすがに夜は少しだけ冷える。
下はデニムだし、土の上に直接座っても特に気にならないし、あっぱれ自分。

木にもたれかかって、そういえば今の自分の持ち物は、とデニムのポケットを漁るが出て来たのはこちらへ来た時に握りしめていた我愛羅君のものであろうコルク、と携帯…。


「け、携帯!」


ありがとう!部屋の中でもズボンのポケットに携帯を入れっぱなしにしている事がある私!と心の中で歓喜しながら画面をつけるとなんと電波がある。
電波ァァアアアアア!発展した木の葉の街!サンクス!!と、今度は声を張り上げてガッツポーズ。

なんで私の世界から持って来た携帯の電波が此処、木の葉の里であるのかとか謎はあるが今はそんな事を考えるより誰かに電話!と電話帳を開き、家族、同僚、と片っ端から電話をかけてみるが……、まあ、予想はついてたけど、繋がらない。

なーにが、お掛けになった電話番号は現在使われておりません、だよ!っざっけんなちくしょー!

あーもう拗ねてやる、フテ寝してやる!と土の上にゴロンと横になるが、それでも電話帳を永遠と見続けていると一つの番号が目に止まった。


「これ、私のサブ携帯の……、そういえばあの携帯、どこやったんだっけな〜」


本当に、なんとなく、繋がらないってわかってたけど、発信のボタンを推し、耳に当てずに画面を見る。
しばらくたったら勝手に通話終了の文字が出るんだろうなあ、なんて思いながら少し眠くなって来た瞼を擦っていると、そこには"通話中"と出ているではないか。

ん?と今だ眠い目を再度擦りながらもっと近くで見ようと携帯を顔の目の前まで持ってくると、電話の向こうからありえない声が聞こえて来た。


(……名前、なのか)

「!!!!!!え??!!」


その電話の向こうの声の主は、紛れもなく我愛羅君で。
いやいやいや、私のサブ携帯、我愛羅君が持ってたの?ていうか我愛羅君が帰っちゃった時に持って行ってしまったとしたら、あれ、もう20年くらい経ってんじゃね?その携帯、大丈夫?過疎ってるだろうけど大丈夫?
って、違う違う!そうじゃなくて!


「我愛羅君?!私!あの!あのね!」


木の葉の里にいるの!

折角この世界で私の事を唯一知ってくれている人物に助けを求めようと声をあげる。
が、それきり我愛羅君は何も言わない。

え、無視?!まさかの無視?!嘘でしょ?!
まさか私がナルトの世界の事とか我愛羅君の事知ってて知らないふりしてた事怒ってるの?もうあなたにとっては20年近く経ってるのに?なに、女子なの?ねちっこいの?

なんとか言ってくれよー!と耳から携帯を離して画面に向かって言おうとした。


って、





「充電切れてんじゃねー!!!」