05
執務室につくと何故おんぶされているのかをまず問われ、私が靴を履いていないからだとシカマル君が説明してくれた。
ナルト君は気づかなくて悪かったと言い、近くに置いてあった椅子を出してくれた。
我愛羅君はというとなんだか不機嫌そうな表情でこちらを見ている。
あ、いつも不機嫌そうな表情か。
「で?この子に聞きたい事って何なんだってばよ、ていうか、我愛羅も隅に置けねえなあ?」
「こいつはそんなんじゃない。昔世話になっただけだ。」
「世話にって、さっき言ってた20年前にか?」
「…ああ」
いやおかしいだろ、と分かりきった返事がナルト君から飛んでくる。そらそうだ。
我愛羅君も何故私が20年前と変わらない姿でここにいるのか謎だろうけど。
どうみたって10代後半、20代だろ?と私に近づいてきてマジマジと顔を見てくるナルト君に、22歳です。と実年齢を明かしてみる。
「お前、名前だろう。何故ここにいるんだ。」
「…20年も前に会った人の事よく覚えてるね。風影になって、立派になってて私は嬉しいよ、我愛羅君」
「我愛羅、こいつ一体誰なんだ?話がよく分かんねえじゃん」
カンクロウ君が痺れを切らしたみたいに詰め寄ってきて、我愛羅君との再会を邪魔してきた。再開っても感動的なもんじゃないな、なんか謎に詰めよられてるし。
「こいつは、俺がまだ中忍になる前に会った。この忍の世界では無く、化学がとてつもなく発達した所謂異世界、お伽話のような、忍が存在しない世界。俺が消えたと騒がれた時期、一週間程度だったが、俺はこいつの世界にいた。」
「…そんな事現実にある訳ないじゃん?だいたいこいつは20年も前ならまだほんの子供だったはずだろ?幼児に世話になったってのか?」
「いや、こいつは今と変わらなかった。証拠もある」
ん?証拠?証拠って何?
ポケットに手を入れ何かを取り出した我愛羅君は、それを私に差し出し、覚えているかと聞いてくる。
「…うわ汚ったな、こんなにボロボロになるんだね」
「その中に20年前の俺と、お前の写真がある。」
そういって渡されたのは私が我愛羅君に渡したままだったサブ携帯。
あ、この携帯で撮ってたんだ〜!私の携帯にはデータないんだよね〜!と呑気に私と少年である我愛羅君の写真を見ていると、我愛羅君以外のみんなが覗き込んできて。
「…本当に今の姿と変わってねえ。バケモノじゃん」
「カンクロウ君、死にたいのかな?」
「……ちょっと待て、なんでカンクロウの名前知ってんだ?」
……
あ〜〜〜〜…
私ってなんでこう自らボロを出すのか…
我愛羅君は多分、私がこの世界のことを知っているのは分かっているはず。ナルトの漫画を見たはずだから。
ここでシラを切っても意味は無さそうだな。
できれば知らない程でいたかった気持ちはあるけど。
「あ〜、えっと、信じてもらえるか分かりませんけど、」
もう白状してしまおう。とそれから私はナルト君が主人公の本が自分の世界にはある事、ついでに息子、ボルト君も知っている事、少年だった我愛羅君が私の部屋に突然現れて一週間一緒に過ごして、でも我愛羅君にはその本の事は言わずに内緒にしてた事。
突然我愛羅君が居なくなって。夢だったんだと思いながら1年くらい経った時に、ナルトの漫画を仕舞っている棚で瓢箪のコルクを見つけて、もしかしたら私が我愛羅君のことを知らないって言ってた事が嘘ってことに気づいて、我愛羅君はそのままこっちの世界に帰っちゃったんだって。我愛羅君が居なくなる前の日の夜、嘘つきって言われた気がして、夢だと思ってたけど、全部夢じゃなかったんだって事。
「それに気づいて私、我愛羅君に嘘ついてた事謝りたくて、この、コルク握りしめたままもう一回会えたら謝りたいって自分の部屋で情けないけど泣いてて、気づいたら木の葉の里にいたんです」
ポケットからコルクを出して握りながら一呼吸も置かずに、口下手だったと思うけど全て隠さず打ち明ける。
聞いていたみんなは信じられないというような表情をしてるけど、信じようがそうでなかろうがこれが真実なのだ。
我愛羅君推しとは言ってないけど。
誰も何も言わない空間が気まずくて、信じられませんよね…。と俯きながら呟くように漏らしてみると、トン、と頭に暖かい重みを感じ、顔を上げると目の前には我愛羅君がいて、頭を撫でられていると分かった。
「…正直俺はあの本を見つけた時驚き、この本は一体何なんだと思ったが、そんな事より俺の事を初めから知っていたお前を嘘つき呼ばわりし裏切られたとさえ思った。…こちらへ戻ってきてからも憎しみに狩られ、ナルトに出会わなければ今こうしてここに居ることもなかっただろう。」
「…」
「もしあの時お前が俺の事を知っていると正直に言ってきていたら、俺はお前を殺していたはずだ。俺の事を知っていたお前は自分を守る為に、賢い嘘をついていたんじゃないかと、そう考えた。それに、お前は俺を守ると言ってくれた。守鶴が暴走しそうになった時もお前は恐れずに向かってきてくれた。お前の優しさに、本を見つけたあの時にちゃんと気づけていればお前の事を裏切り者とは呼ばなかっただろう。お前は俺に謝りたいと言ったが、謝りたかったのは俺もそうだ。」
世話になったのに礼も言わず挙句に嘘つき呼ばわりした事、ずっと気になっていたと、私を撫でていた手を戻し、頭を下げる我愛羅君。
そんな風に思ってたなんて、漫画にはもちろんだが描かれていないから驚いた。
「あ、えと、我愛羅君、頭あげてよ。ダメだよ風影がそんな簡単に頭下げたりしちゃ。それに私の方こそ嘘ついててごめんね」
「…いや、いい。もういいんだ。」
眉間に皺を寄せ悲しそうな表情をする我愛羅君は約20年も私に言った事を思い出してはこういう表情をしていたんだろうか。そんなに気にする事なんてないのに、いい子に育ったなあ、なんて思いながらそんな顔してないでいつもの無表情見せてよと手を伸ばし我愛羅君の頭を両手で包む。ああ、この髪の毛、柔らかさは少年の時と変わらないな。
「………。おいお前ら、イチャついてんじゃねーよ、弟のそんなところ見せられる俺の身になれ」
「はあ?イチャついてなんかいませーん、我愛羅君は可愛い可愛い子供なんだから公然の前でイチャつくとかそんな事しませーん。ね?我愛羅君」
「可愛い?!子供?!おいおい、30過ぎた男に向かってそんな事思うか?しかも我愛羅に…」
「いやいや、なんでこの可愛さが分からないかな〜、こんなふわふわの髪の毛してて頬っぺただってぷにぷにだし、少年の時と変わらないじゃん。萌えだよ、萌え」
意味が分かんねえと言うカンクロウ君に反発しながら我愛羅君の顔面と髪の毛を触りまくる。拒否されずに触れる日がくるなんて!なんて最高な日なんだ、このまま死ねる。萌えて死ねる。
それでも大人の我愛羅君は子供扱いされて微妙な気分なのか抵抗さえしないがなんとも言えない表情でこちらを見ている。
だけど気づかないフリをして触りまくる私に制止をかけたのはシカマル君。
「おい、それでお前はこれからどうするんだ。とりあえずお前の話、俺は信じるぜ。我愛羅が証人みたいなもんだしな。疑う余地無しだ。」
「俺もだってばよ。その本の事とか気になる事はあるが、行くとこねえなら木の葉に居てくれても構わねえ。我愛羅が連れて帰るってならそれでもいい。どうだ?」
そうだ、私帰る家無いんだ。謝りたいが為だけに我愛羅君に会おうとしてたけど、そのあとの事は考えてなかった。
私が我愛羅君に連れて帰ってと頼むのもなんか図々しい気もするし…どうしよう。ここは木の葉に居てくれて良いって言ってくれてるナルト君に甘えるか、うーーん
「…俺が砂へ連れて帰る。」