09
「我愛羅の金だ、好きな物を買ったらいいさ」
「いやいや!必要最低限の物だけでいいんですよ、というか下着だけのつもりだったし」
「服も下着も何着か買っときな。誰も文句なんて言わないよ。必要な物だしな」
そう気っ風のいい笑顔で言われちゃあ買わないのもなんだか気が引けると思い、じゃあ少しだけ甘えさせてもらいます。とビルの中にある沢山のお店の中で、私の世界で言う赤地に白い文字の看板の服屋さんのようなお店を見つけすぐさまそこへ入る。
我愛羅君が来た時、なんでもあるからと一緒に買い物に行ったお店だ。
ココなら全部揃うだろうし、我愛羅君がいるビルの出入り口からも近い。
並んでる服だったりは私の世界とちょっと違うけど、今日の買い物は無事終わりそうだ。
「えーと、下着…と服は何選べばいいんだろう…」
もしココがいつもの私の世界なら、流行りの服だったり可愛いと思った服を選ぶんだろうけど。
動きやすさ重視の方がいいのかな、それに砂隠れの里に行くならあんまり露出してない服の方が良い、よね?なんかみんな長袖なイメージだし。砂漠だからかな。
うーんうーん、と唸りながら店内をウロウロする私に、いつの間に持ってきたのか、いくつかの服を持ってテマリちゃんが後ろから声をかけてきた。
「名前、これなんかどうだ。」
「え?!あ、いや、これはちょっと…」
何着か持っている服のうち、ジャーン!と出されたのはまさかのノースリーブチャイナ服。しかもミニ丈の紫色。紫て!
いやいやいや、テマリちゃん?これは本気で言ってるのかな?しかもなんか楽しんでない?
テマリちゃんの顔を見るとそれはもう女子の顔の様で。いや、女子なんだけど。やっぱり服買うのって女の子はどこの世界でも好きなのか。
ニコニコとチャイナを見せつけてくるテマリちゃんはなんだか嬉しそうだ。
それでも、ココでは普通なのかもしれないがチャイナ服なんて着たことの無い私はやはり抵抗がある。しかも紫色のチャイナなんて着た事ある人の方が珍しんじゃないか…
「な、なるべく長袖の方が…!ほら!砂隠れの里って砂漠だし!なんか長袖の方が良いイメージが!」
「ん?そうか?じゃあこっちだな」
そう言いながら持っていた他の服を見せてもらうと、またチャイナ…。
どうしても私にチャイナ服を着せたいのか、テマリちゃんの好みなだけなのかどっちなのかは分からない。
だけど見せてくれたチャイナな長袖で。我愛羅君が着てる服みたいに丈が長く、横には腰辺りまでスリットが入っているもの。これなら下に今履いているデニムを履いておけば良いし。
何より色も黒で落ち着いているし、なかなか可愛いじゃないか、こういうチャイナ服は。
「テマリちゃん!これ良い!これにします!」
「ふふ、そうだろ。よし、次だ!」
それからテマリちゃんが色々見繕ってくれて、下着をいくつかと、ズボンはデニムがあるから必要ないと言ったので買う気はないが、デニムって洗濯しなくてもなんかいける気がするし頑丈だし。
上に着るものは結局3着ほど購入する事が決まった。といってもチャイナベースは変わらず丈が長いもの1着と、それより少し丈が短い物が2着。
それと靴だ。あらかた買う物が決まってきたところで他に欲しい物は無いのかと聞かれ、咄嗟に口に出たのが靴。
今履いているのは一応借り物だし、なにせずっとサンダル的な物を履く習慣が私には無いので慣れない。
それで最後のワガママとして選んだのがバレエシューズみたいな靴。フラットで歩き易そうだしナイス!
思ってたより随分色々と購入する事になったけどテマリちゃんは本当にこれだけでいいのか?と聞いてくる。
「これで充分すぎます!ありがとうございます!」
「そうか。まあまた必要な物が出てきたら我愛羅に買ってもらえばいいさ。じゃあ私は我愛羅に金を貰ってくるからちょっと待っててくれ」
「分かりました!」
服やらでいっぱいになったカゴを持ちながらテマリちゃんを見送って、ものの5分程。
突然カゴをヒョイと持ち上げられたと思ったらなにやらお札を何枚か握りしめたテマリちゃんで。
会計してくるから待ってな。とレジの方へ歩いて行く彼女に大人しく従い待つ事にした。
なんか至れり尽くせりだな〜なんて思いながらボーっとテマリちゃんを待っていると後ろから突然肩を叩かれた。
「っ!、ちょ、我愛羅君、びっくりさせないでよ〜」
「…買い物は済ませたか」
「う、うん。テマリちゃんが今お会計してくるって言ってくれて、待ってるの」
はあ〜と胸に手を当て深呼吸。ボーっとしてる時に肩叩かれると凄いびっくりするよね。
流石風影と言いたいところだけど、気配もなく近づいてくるのやめてもらっていいかな我愛羅君。
当の本人は悪びれる様子も無く至って普通で。まあいいけどさ。
「我愛羅、来てたのか」
「あ、テマリちゃん」
そうこうしているうちに、少し大きめの紙袋を2つ持って戻ってきたテマリちゃんはその紙袋とお釣りを我愛羅君に渡す。
受け取りながら眉間にシワを寄せている我愛羅君をチラリと見て、やっぱり余計な物買ってるとか思われたかななんて心配したのも一瞬で。
「それだけか」
「え?いや結構買って貰ったと思うよ、ごめんね」
「…いや、女の買い物とはもっとこう、盛大なものかと思っていただけだ。遠慮はしてないんだな?」
「盛大って、私からしたら盛大だったけど…。遠慮してないよ、ありがとね本当」
遠慮してないと言えば嘘になるがここはそう言っておかなければ。我愛羅君のお金だし、なんせいつ帰るか分からないのにそんなに沢山は買ってもらう訳にはいかない。
「じゃあ私は帰るぞ。明日は任務に駆り出される事になっているから見送りはできないが、また遊びにでも来てくれ」
「テマリちゃん、ほんとにありがとうございます!」
「ああ、またな。」
なんて男前なんだというようなカッコ良すぎる笑顔をこちらへ向けてから帰っていくテマリちゃんに手を振り別れる。
もし元の世界に帰る事になるとしてもその前にもう一度絶対会いたい。というか遊びに来てくれなんて言われたら行くしかない。
シカダイ君にももう一回会いたいし。
「…行くぞ」
「あ、うん!」
テマリちゃんが歩いて行った方を見ているままでいると我愛羅君に声をかけられ私達も歩きだす。
途中、今日買って貰った荷物を我愛羅に持ってもらってたままだと気付いて、私が持つと言ったが断られた。
紳士かよ。
辺りはもう暗くなっていて、街の明かりがキラキラと夜道を照らしている。
この世界に来てから二度目の夜は野宿じゃなくキチンと布団で寝られるんだと、心の中で安堵しながら我愛羅君が泊まる予定の宿へと向かった。
部屋、空いてればいいなあ。