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「ふ〜!気持ちよかった!」
我愛羅君を一人残し露天風呂で温まってきた私は、部屋に用意されていた浴衣をきて、首かけたタオルでまだ濡れたままの髪の毛を拭きながら我愛羅君が居るであろう部屋の襖を開けた。
「…!が、我愛羅、くん、」
「ああ、上がったのか」
「い、いや、アレ、我愛羅君もお風呂入ったんだ…」
「ああ」
な、なんだこれは!これはというかなんだこの妙に色気のある奴は!
私が露天へ行っている間に我愛羅君もお風呂を済ませていたらしく、私と同じ浴衣を身につけ髪も濡れたまま、首にタオルはかけていないが、そのおかげで首元が丸見えだ。
少年我愛羅君の時にも思ったがお風呂上がりは砂の鎧をしていないのか、暖まったであろう肌は上気していてほんの少し赤色に染まっている。
そんな事お構いなしかのように先ほど夕食をいただいたテーブルの前に鎮座している。
ややややばすぎるこれは…!お願いだからそのはだけ気味の浴衣をもっとギチギチに締めてくれ…!
少年我愛羅君のお風呂上がりもなかなかに萌えたがレベルが違いすぎる!これが大人の魅力というものなのか!心臓に悪すぎる!
「大人で浴衣でお風呂上がりで…おまけに首元がはだけている、とは…勘弁してくれ…」
「…どうした」
「い?!いえ!なんでもありません我愛羅様!」
「…」
あーダメだ、まともに我愛羅君の方を見れない…。
私もテーブル越しに我愛羅君と向き合う位置に腰を下ろそうとするが、我愛羅君が必要以上にこちらを見つめてくるので、居たたまれなくなった私は我愛羅君の髪の毛がまだ濡れている事をダシに使い、ドライヤー露天の脱衣所にあったから取ってくる!と逃げるように部屋を出た。
「まじなんなのアレ、天使超えてもはや小悪魔ちゃんにしか見えないんだけど」
いや、もはやを超えて魔王かもしれない。
風影で、いつも首元まである服をきっちり着ている大人我愛羅君のす、素肌…
あの状態は無意識なのか、わざとやっているとしたら本当に魔王だ。
ドライヤーを手に取り、部屋へ戻ると相変わらずの魔王がそこにいた。
「が、我愛羅君、これで髪、乾かして?風邪引くよ」
「………昔のように、名前がしてくれないか」
「!!」
魔王!!!!!まじで何を言い出すんだ!!俺はもう子供じゃ無いからってさっき言ってませんでしたっけ?!大人って事気づいて欲しいのは我愛羅君自らの方だよ!!私はもう我愛羅君は充分大人だって分かったから!もう千パーセント理解したからああああ!
……ちょ、いや待て、これは私が髪を乾かせば我愛羅君の後ろに回れるという事、すなわち浴衣がはだけて見えてしまっている首元や鎖骨を正面から直視しなくて済むという事だ。
そして髪を乾かし終わったあと今私が首にかけているタオルをそれとなく我愛羅君の首にかけてやれば…
私の寿命が伸びるかもしれない
これだ!と思い、名付けて私のタオルであなたの首元守ってあげる作戦を決行するべく、良いよ、なんて言いながらドライヤーを持ち、コンセントに電源を挿したあとで我愛羅君の後ろに回った。
「ん、乾かすよ」
「…ああ」
少しでも時間をかけて乾かそうと風量は抑えめに、我愛羅君の髪の毛に触れながら乾かしていく。
ここからなら前は見えないし、乾かす事に集中できるから動揺もしない。
ナイス私!と心の中でガッツポーズをした。
それにしても、柔らかい髪の毛だな。少年の時と全然変わってない。むしろ長さが今の方がある分、より柔らかく感じる。
我愛羅君がいつも分けている前髪を、最後、癖づけるように乾かしていき、あっという間に全て乾かし終わった。
「はい、終わったよ、ドライヤーでまた汗かいちゃったかもしれないし、このタオル首にかけときなよ」
「…ありがとう」
「いいえ」
作戦通り我愛羅君の首にタオルをかけ、我ながら上出来と思っていると、目の前の魔王が思いもよらない事を言ったきた。
「…お前も濡れたままだろう、貸してみろ」
「は、え?」
なんの事だか、と疑問の表情を浮かべていると手に持っていたドライヤーを奪われ、そこに座れと言ってきた。
は……は?!
もしかして、もしかしなくても、もしかして私の髪を乾かしてくれると?!
「い、いや、いいです!結構です!自分でやるから!」
ほら!私我愛羅君より髪長いんだよ!時間かかるし!と、既にドライヤーを構えてこちらに向き直っている我愛羅君に拒否の姿勢を見せる。
人に髪を洗ってもらったり乾かしてもらったりってのはあんまり嫌いな人はいないんじゃないかってくらい気持ち良いけどさ、美容室とかいくと眠くなっちゃうしね?
でも今私の目の前にいるのは美容師ではない、我愛羅君だ。しかもちょっと卑猥な仮面をつけた魔王なのだ。
そんな人に後ろを取られるなんて考えただけでも爆発しそうだ。萌えで。
こいつは私の事を母親か何かとでも思っているんだろうか 。
だからそんな普通の男女なら意識しちゃうような事も平気で言えるのか?
はっ…それなら辻褄が合うぞ、大人という事をわかって欲しいだの、でも触るのはオッケーだの、ご飯を毎日作って欲しいだの…
子供扱いするな俺はもう大人なんだぞ!でもたまにはヨシヨシしてくれ!的な、口ではクソババアとか言っちゃってるけど実はお母さん大好き的な?!しょーがねーから親孝行してやんよ的な?!
なんだそれ!めちゃくちゃ可愛いじゃないか!
「くっ!…我愛羅君!理解した!乾かしてくれ!」
「……?」
突然素直になった私の髪の毛を何も言わずに乾かしてくれる我愛羅君に、もう妙な緊張はしていない。
我愛羅君が私のことを母親だと見ているなら私も我愛羅君を息子だと思い愛でてやろう。
うんうん、と目を瞑り良い息子だなあなんて、我愛羅君の優しい手つきを頭に感じながら思う。
ああ、眠くなってきちゃった。