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うおーん!なんで、なんで!
「起こしてくれても良かったじゃん!」
「…何度か声は掛けた。起きなかったんだ。仕方ないだろう」
「へーんだ!起きてなかったら起こした事にはなりませーん!聞こえない挨拶は挨拶した事にはならないって知らないのー?」
私はどうやら昨晩、髪を乾かしてもらっている最中に寝てしまったらしく、我愛羅君に布団まで運ばれ気づけば朝…
私はお酒が飲みたかったの!成人した我が息子、我愛羅君とね!
なのになんで寝ちゃうかな!起こしてくれないかな!
「…砂に帰ってからでも飲めるだろう、いくらでも付き合う」
「っ、うー…わかったよ、絶対ね!私が良いっていうまで付き合ってよね!」
「ああ」
我愛羅君に諭された後、準備ができたら出立するというのでまずは着替えるべく昨日買ってもらった服を紙袋から出す。
昨日我愛羅君は私を母親と思っているに違いないと踏んだ私は、その場で浴衣を脱ごうとするがそこは止められた。
まあやっぱり母親の裸なんて見たくないよね、なんて思いながらごめんと一言謝り、露天風呂へと繋がる襖の向こうで着替える事にした。
自分が履いてきたデニムと、テマリさんに選んでもらった長袖の丈が長いチャイナ…なんかコレ着て出て行くの、小っ恥ずかしいな。
なんとか着替え終わり、そろそろと我愛羅君がいる部屋へと顔を覗かせると、相変わらず静かに座っていて。
躾がきっちりされたワンコみたい、あ、狸か。
「お待たせ〜」
「…」
「どう、似合ってる?」
「ああ、似合っている」
冗談混じりに言ったつもりだったが、恥ずかしげも無く似合っているなんて無表情で言われるとなんて返せば良いのか分からなくなったもんだから、適当にありがとうと言って自分の荷物をまとめる作業に取り掛かった。
とは言っても元々着ていた下着やらブラウスやらは昨日の夜紙袋にしまってたし、畳んだ浴衣を部屋の角に置いて準備は完了。
あ、買ってもらった靴、出しとかなきゃ。
「あの、もう私出発できるよ。途中でナルト君に靴返したいんだけど、良い?」
「分かった」
じゃあもう行こうか!と我愛羅君に声を掛け自分の荷物を持つとそれを奪われる。
だから自分で持つよと言っても聞いてもらえず、結局そのまま持ってもらう事になった。
旅館の女将に別れを告げ、靴箱に仕舞われていたナルト君に借りた靴を紙袋に入れさせてもらい、自分は買ってもらった靴を履く。
砂の国も木の葉みたいに発展に発展を重ねて便利な感じになってんのかな。
それも気になるところだけど、一番気になるのはシンキ君がいるのかどうかだ。
私的にはいてくれた方がいいんだけど。だって昔の我愛羅君みたいで可愛いし。
「名前、こっちだ」
「はーい」
我愛羅君に先導されながらしばらく歩いてたどり着いたのはつい昨日訪れた火影邸。
建物の中まで入っていき、執務室であろう部屋の前までくると中から話し声が聞こえた。
ナルト君、と誰だろうこの声、聞き覚えがあるけど…
そんな事は御構い無しに我愛羅君が扉を叩いた後、入れという言葉が聞こえて執務室の扉を開け、我愛羅君の後ろについて部屋へ入る。
が、思ってもみなかった人物がいる事に気がついて、ナルト君が座っている方へ向かう我愛羅君についていく事ができず扉の前で固まってしまった。
「ナルト、昨日は世話になった。砂へ戻る前に一言、と思ってな。伺ったのだが」
「おう我愛羅、部屋空いてなかったみたいで悪かったな。…ん?」
「いや、問題ない。………名前、何をしている」
「か!かか!」
カカシせんせーーーーーい!!
おっと、!あっぶねー!と、思わず名前を呼んでしまいそうになった口を慌てて塞ぐ。
あんまり知ったような口をきくな、って昨日言われたばっかりなのにここで突然名前を叫ぶわけにはいかない。
でもかっこいいんだ、カカシ先生、かっこいいんだ!
漫画ってのは年月が大して進まないから、読み手側としては登場人物がどんどん年下になっていく傾向にあるが、カカシ先生、というか先生陣は最初から最後までずっと年上な訳であって、私よりもはるかに大人なんだ。
我愛羅君推しとはいうものの、ずーっと大人の魅力溢れるカカシ先生は誰もが認めるイケメン教師なんだから、突然お目にかかれて固まらない訳がない。
「名前?どうした」
「なーに、この子、我愛羅君の連れ?」
「っ!や、あの!えーと!」
うわあああああ!近い近い近いいいい!
んー?などと言いながら私の方へと近づき、少し腰をかがめて私の顔を覗き込みよろしくねとにっこり微笑み挨拶してくる。
いや!確実に今私顔真っ赤だよ!やめて!そんな魔性の笑顔を向けるはやめて!
「っ、よ、よろし…く、お願いしま、す」
「なーんで固くなっちゃってんの?そんな緊張しないでよ」
ひいいいい!肩に手、肩にポンって!!手!!
だめだ、顔が完全に沸騰している!これほどとは…!
イケメンを目の前に思考が完全にショート、体温も熱くなりすぎてフラついてしまった私を咄嗟に支えてくれたのは我愛羅君。
どうしたんだ、と聞かれ、余計な事は言うなと言われていたにも関わらず私は、かっこよすぎて目眩がしました、と小さい声で呟いた。