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「つーいたー!砂ー!」


雷車に長い事揺られやっとたどり着いた砂隠れの里。
というか雷車って、あんな部屋みたいに豪華なんだね、風影だから?
さながら夜行列車のバーカウンターがある車両の様で、電車で長旅かあ、なんて思っていたけど全然疲れなかったのは流石というべき。


「それにしてもやっぱ遠いんだね、」

「雷車がなければ一般人で2週間はかかる。忍であれば3日だが」

「…」


そう我愛羅君から聞いて、雷車がある時代に来て良かったと心底思う。
私の世界ってほんと進歩してるよねえ、便利だし。普段はそんな事思わないけど、全然別の環境に来るとありがたく思う。

あ、そういえば携帯とかってあるのかな、あったら充電してほしい。
でも我愛羅君が持ってた私のサブ携帯はきっちり充電されてるみたいだったから後で聞いてみよう。


「…ひとまず風影邸に行く。お前に話しておかなければならない事もあるからな」

「あ、うん」


雷車を降りて我愛羅君の言うまま歩き出す。
砂の里は木の葉みたいにとてつもなく発展してるって感じではなさそうだ。
砂でできた丸い建物も結構そのままなんだね。

外を歩く人たちの視線を一身に受けながら目指すは風影邸。
風影様がお帰りだ!と頭を下げる里の人を見ながら、我愛羅君ってばほんと愛されてるなあなんて思い、後ろをついて行っていると、公園内で泣いている一人の子供に目がいった。


「我愛羅君!ちょっと待って!」


前を歩く我愛羅君に声をかけ、目についた子供へ向かって走り寄って行く。


「僕、どしたの?なーんで泣いてんの」

「っ、うう、転んだ、の」


地面にうつ伏せで寝転んだまま泣きじゃくる男の子に声をかけると転んだと言う。
まだ5歳とかそれくらいかな?とりあえず起きようね、と身体を支えながら座らせると両膝を思いっきり擦りむいている。

うわ、痛そ〜〜、擦りむくって大人になっても地味〜に痛いんだよねえ。
しかも両膝って、完全にドジっ子君だなあ。
消毒とかしてやりたいけど今そんなもの持ってないし、医療忍者でもないからなあ。
とりあえず水で流しておけば大丈夫だろう。


「我愛羅君、私が元々着てた服、出してくれない?」

「…?、ああ」


いつの間にか側に寄って来ていた我愛羅君にそうお願いした後、男の子を抱っこすると公園内に見つけた水道まで歩いて行く。
抱っこする事で次第に泣き止み大人しくなった男の子に少し微笑みながら水道の前でしゃがみ込み、膝の上にその子を座らせるような体勢になると蛇口をひねった。


「っ、!い、」

「ほら、お水でバイ菌を洗い流しまーすっ。ちょっと痛いかもしれないけど我慢できる?」

「う、うん…我慢でき、る」


水で洗い流されていく膝を涙の残った瞳で見つめ、手は私の服を掴みながら痛みに耐えている男の子。

う、か、可愛い……
子供ができたらこんな感じかあ、悪くないなあ。
でも我愛羅君もな〜これくらいの歳の時に出会ってたらな〜今の何倍も可愛いかったのかな〜うんうん。
まあ今でも充分可愛いけど、こうして膝の上に乗ってくれる事なんてないだろう。
なんせもう30過ぎてるいい大人なんだから。


「よし!綺麗になったんじゃない?我愛羅君、私の服貸して〜」

「…」


元々私が着ていたブラウスを我愛羅君からもらい、それで男の子の膝を綺麗に拭いてやる。
隣に立っている我愛羅君が少し驚いたような表情を向けてくるが、あいにく私はハンカチを持っていない。布といえばこのブラウスしか思いつかなかった。ま、洗えば良い事だしね。
ハンカチと違ってちょっと水を吸いづらいけど。


「はーい、終わり!よく我慢できました!偉いねえ!」

「ぼ、僕!男の子だから!我慢できるんだ!」

「ほーう?さっきまで泣いてたのにねえ?」

「!、も、もう泣かないもん!僕風影になるんだ!だからもっと強くならなきゃ!」


私の膝から降り、もう痛くないもん!とその場でぴょんぴょんと飛び跳ねて見せる男の子に驚きながらも頭を撫でてやる。
風影になりたいのかあ、という事は我愛羅君をも超える忍者になるって事だよね。
うわー可愛いー頑張って欲しいー

目の前で突然宣戦布告された我愛羅君も驚いているようだが、フッと目を細め微笑んでから男の子に向かい合いしゃがみこむと、男の子は今ままで気づいていなかったのか、風影様!と背筋をピンと伸ばしていた。


「…風影になるのなら、もっと強くなれ。里を守る為にな」

「は、はい!僕、頑張る!」


緊張しながら返事をした男の子の頭をポン、と撫でながら家はどこだ、送っていこうと我愛羅君が言うと男の子は一人で帰れると言い、しゃがんだまま二人の様子を見ていた私に向き直りお礼を言うと走って行ってしまった。


「…あの子風影になるんだって、我愛羅君の地位が危ぶまれるのも時間の問題だね」

「ああ、楽しみだ。」


あれ、ちょっとからかったつもりだったんだけど。なんだよ嬉しそうな顔しちゃって。
でも隠居して毎日のんびり過ごしてる我愛羅君も見てみたいなあ。あ、その時にはおじいちゃんになってたりして。
…て、そんなの見ようと思ったら私ずっとここにいないといけないじゃん。
危ない危ない、自分が違う世界から来たって事一瞬忘れかけてた。

二人してしゃがみこんだまま男の子の背中を見送り、そろそろ行こうと言う我愛羅君の合図で風影邸に向かう。


「それにしても可愛い子だったよ、あ、我愛羅君の方が可愛いけどね?もちろん」

「名前、お前はどうやら子供に対して抵抗は無い様で安心した」

「…ん?いやいや、抵抗なんてあったら我愛羅君をウチになんて置いとかないよ」

「…そうか」

「え、何、私子供嫌いそうに見えてた?」

「…そういう訳では無いが、到着してから話す」


確かに子供を嫌がる女の人もいるだろうけど、私はそうでも無い。大好きかって言われたら分からないけど、わざわざ避けたり泣いてる子供をほったらかしにしてしまうほど嫌いって訳でも無い。
母性をくすぐってくる可愛い子は大好きだけどね。我愛羅君みたいな。

風影邸に着いたらする話の内容が気になりつつも、横に並んで歩く我愛羅君をチラリと見ればこちらを見返してくるので、ああ可愛いなんて思いながら微笑むとプイッとそっぽを向かれた。


この時我愛羅君の頬が少しばかり赤く染まっていた事に私は気づかなかった。