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お風呂も早々に済ませ、最初に来た応接室のソファで寝ると言った私を制した我愛羅君に言われるがまま、我愛羅君がいつも寝ているらしい寝室に連れて来られ、既に布団の中。
我愛羅君は別の仮眠室的なところで寝ると言って出て言ってしまったので今夜は一人だ。
ちなみに部屋着を買っていなかった私が今着ているのは、昔、我愛羅君用に私が買った部屋着。
私が夢だったと思い込んでしまった元凶とも言える、私が我愛羅君にあげたもの全てがこちらの世界に来てしまったと言う事も、今となってはその謎の現象に礼を言いたい。
デニム履いて寝るのは流石に足腰疲れそうだしね。この部屋着があってよかったよ。ちょっと小さいけど。
「…それにしても眠くない」
良い感じにお酒が入っているのですぐ寝られるであろうと思っていたが全然寝付けない。
こっちの世界へ初めて来た時の、木の葉の顔岩がある崖の上ではすぐ寝られたのに。ダブルベッドと言う無駄に大きい空間が気になってしまって寝られない。
「なんで我愛羅君はこんなに広いベッドで寝てるんだ、贅沢かよ」
意味もなくベッドの上をゴロゴロと転がりながらみんな元気にしてるかな〜なんて考えては今は帰れないわけだし意味のない事は考えないようにしようと思考を止めてみるも、もぞもぞと無意識に動く体は止められず、風影邸の中でもちょっと散策してみようかなと立ち上がった。
気分転換と言うか酔い冷ましだな、もう酔っ払ってる意識はないけど。
「ついでにお水飲みたいな、」
この寝室と言われた部屋にはキッチンなるものが無い。
ベッドと、我愛羅君の服が入っているのであろうクローゼット、それに窓辺に小さいがテーブルと椅子。そのテーブルの上には小さいサボテンが置いてあるだけ。
我愛羅君の服……埋もれたい
「…!いや、いやいやいや!何変態みたいな事口走っちゃってんの私?!」
流石に人のクローゼット勝手に開けてしかも埋もれたいとか、ダメだろ。と無意識にクローゼットの方へ近づいていた自分に喝を入れ、部屋を出た。
……
「うわ、思ったより迷路…」
ええと、確かあっちの方が風影の執務室で〜、こっちの奥が会議室で〜などと独り言を言いつつ、我愛羅君に雑に教えられた此処、風影邸の部屋の配置を思い出しながらウロウロと廊下を歩く。
「迷って無い、私は迷子じゃ無い」
なんだか見た事なさ気な場所を歩いてるなと気づいたのはついさっき。
ちょっとした散歩とお水を飲みに行くつもりがこの長い廊下をずっと歩いている気がして来て急に怖くなった。
迷子じゃないと言い聞かせつつも景色の変わらない薄暗い廊下を見据えるとこのままこの屋敷の中でずっと一人なんじゃないかなんて考えてしまう。
「…まじでか、やば泣きそう」
森の中で一人、とかそんな規模の大きなものでもない、ただ広い屋敷で迷子ってだけなのに頭の中は絶望に満ちていて、少しの酔いも手伝って情緒が豊かになっている所為もあるだろうが目頭が熱くなって来た。
「……誰か、助けてよお、」
壁にもたれてついにしゃがみ込む。
どこなんだ此処は。なんでこんなに迷路なんだ。なんでこんなに広いんだちくしょー!
膝を抱えて座り込み、廊下に点々とある小さな窓の外から聞こえる砂嵐の音に耳をすましてみれば、さっきまで砂嵐なんてなかったのに、砂漠ってこんなに天気変わるのね。なんてそちらに意識が寄って不思議と少しだけ落ち着いて来た。
「あ、…ちょっと眠い……」