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「あの〜、お、お茶ドーゾ」
「ああ、」
…なんだこの空気は、というかその表情はなんだ。
今までにないくらい無な表情してるんですけどこの人!
いやいっつも無表情だけどね!昔よりは少し表情が読めるようになったと思ってたけど今は違うんだ、なんだその顔は!
悟った?悟ったのか?悟り開いたのかああああ
「あ、明日は私がご飯作るね、冷蔵庫さっき見たけど何も無かったから明日買い物行かなきゃな〜、なんて」
「ああ、」
「あ、朝ご飯と夜ご飯はなるべくみんなで食べたいね、お昼はお弁当が良い?お弁当箱とか買わなきゃね…!」
「ああ…」
何なんだコイツウウウウ!!
ああ、しか言えねーの?!なんなの?!
え、何?!私が内緒で我愛羅君の事を聞こうとした事に怒り浸透しすぎてその表情なの?!
返事もロクにできませんみたいな?!
怒り通り越して悟り開いたみたいな??!
まじで何考えてんのか分かんねええええ!
うおー!と頭を抱え、一体何がどうなってるんだと心の中で叫んでいると、先程までアアの一言しか喋らなかった我愛羅君が口を開いた。
「…お前が眠っている部屋へ行ったんだ。一応この屋敷内の説明はしたつもりだったが、夜は薄暗く迷路のようなここは迷いやすい。夜にあまり出歩くなと、忠告をしにな」
「へ…」
「ところがお前は居なかった。どれほど心配したと思っている。」
腕を組み、悟り無表情から一転、少し怒ってるような表情に変わり、迷っているところで敵襲を受けたらどうするんだなどと、眉間のシワをどんどん深くしながら詰められる。
…え、これ、心配されてるんだよ、ね?
あれ、なんかめちゃ怖いんだけどこの人。気のせいかな?
そんな怒る?夜出歩いただけでそんな怒るの?過保護なの?心配云々とかよりただの過保護なの?お父さんなの?
「ご、ごめん。なんかごめん」
「シンキがいたからいいものを、もう少し警戒心を持ってくれ」
「…ワカリマシタ」
いやいやいやいや、
警戒心なんて、日本で産まれ育った私は警戒心なんて元々兼ね備えていない。平和ボケしたような私に突然警戒心をもっと持て!なんて言われてもピンとこないし、警戒心が無いって理由で怒られた事は初めてだ。
もう、そんな事で怒らないでよ、なんだよ、私だって一応大人なんだぞ!…迷ってちょっと泣いたけど。
ていうかお水飲みたかっただけだしぃ、眠れなかっただけだしぃ。と胸の内で散々愚痴りながら、口先から出たような返事をするとより一層睨まれた。
ふ、そんな睨みなんて今の私には効かないよ。
「…本当に分かっているのか」
「警戒心持てばいいんでしょ、でも大丈夫だよ。このめちゃくちゃ平凡顔の私を好き好んで襲う奴なんかいないだろうし」
「……お前は、分かっていない様だな」
「え?」
ダイジョーブダイジョーブと、アメリカ人さながらの身振り手振りで笑いながら言ってみせると我愛羅君は目を伏せ、呆れながら呟いたと思ったら、一瞬、胸の前で印を組んだのが見えた。
「!、わわ!」
ボフンと軽快な音を立てて目の前から我愛羅君が消えたと思った瞬間、視界かグルリと反転し背中には床の硬い感触。
思わず目を瞑ってしまって、何事かと思いうっすら目を開けると目の前には我愛羅君。
「…警戒心が無いとこうなる」
「っ、」
冷静に物を言う我愛羅君と、今の状況に驚き押し退けようと腕に力を入れるが、どうやら両腕を抑えつけられているらしく全く動かない。
仮にも母親代わりの私を押し倒すなんていい度胸してやがるなと思いながら真っ直ぐこちらを見下ろしてくる我愛羅君から目を逸らすべく顔を横に背けた。
「誰にでも簡単に心を許し過ぎるな。お前の世界は平和だが、忍の世界はそうも甘くは無い。いつ何時、味方に紛れて敵が潜んでいるかも分からない。」
いやそんな事言われても。
警戒心持つよなんて言ったとしても味方に化けられちゃ私なんかに見分けはつかないし、拘束されでもしたら忍者ではない私には対処のしようなんてない。
結局、警戒心なんて危機回避をできる能力がない私には持ってたって意味のないもの。
そんな事より手、痛いんですけど。
ブツブツと我愛羅君からは目を背けたまま愚痴っていると、聞いているのかと低いトーンで言われたので、聞いてるよとこちらも負けじと低いトーンで、今度は目を合わせて言ってやった。
「……お前が俺を守ってくれたように、俺はお前を守りたいと思っている。だからこうして言っているんだ。他人に心を許し、突然フラフラとついて行ってしまうのではないかと心配になる。」
「…いや子供じゃないんだから」
「子供ではないから、だ。誰彼構わず女を傷つけようとする輩はそこらにいる。もしお前がそんな事をされたら俺はどうにかなってしまいそうになる、……俺は、俺はお前が……お前を、あい、」
「!、あああーー!!」
いつになく苦しそうな表情で、良からぬ事を言ってくる我愛羅君が最後に言おうとした事を咄嗟に「やばい」と思い制止する。
どうしてだかは分からないけど、なんだか、この続きは聞いちゃいけないような気がして、咄嗟に大声を出したが我愛羅君の口の動きをじっと見てしまっていたので結局は何を言っているのか大方予想がついてしまった。
もしかして、もしかしなくてもそんな、そんな事ってある?
いやいやいや、チートじゃん。完全にチートでしょ。
ないないないない、我愛羅君、魔が差したのかな、私みたいな平和ボケのただの女の事を…、
「愛してる」なんて
ないないないなーーーい!!