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深いため息を吐きながら、何から話せば良いんだ、とか、あー、とかブツブツ言いだし、それを黙って聞いているとやがてカンクロウ君はゆっくり話し出した。


「あー…我愛羅が昨日、お前に何を言ったのかってのは今朝我愛羅から聞いたじゃん。ま、途中で大声出されてちゃんと聞こえてたのかは分からねえって言ってたけどよ」

「…いやいや、なんか我愛羅君いつもと様子が違ってさ、この先は聞いちゃいけない気がして思わず遮っちゃった。だからハッキリとは聞いてないけど顔が近かったからなんとなく口の動きで分かっちゃったんだけど、」

「愛してるなんて言われたらそりゃ驚くだろーよ、しかも我愛羅になんてな」


う……やっぱり愛してるって、言ったんだ。まじか。
でもなんで、ほんとに私、短い間一緒に住んだだけだし、しかも愛してるなんて思う様な年頃じゃ、あの頃はなかっただろうし、再会してからの我愛羅君は随分と大人になってたけどまだ会って丸二日くらいしか経ってないのに、それで好きになるなんてそんな
事あり得るの?一目惚れって事もあるだろうけど、愛してるなんて普通言う?


「あいつはな、お前の世界から帰って来た後、ナルトに感化されて変わった。それからお前にずっと謝罪したいと思ってたっていうのはあいつから聞いたよな、火影邸で。」

「うん、謝らなくて良いのにね」

「我愛羅は根っからの真面目な奴だからな。たまに、異世界にはどうやったら行けるんだとか訳分かんねえ事俺に聞いて来たりしてたじゃん。…それでまあ、これは俺の予想だけどよ、お前に謝罪したいとかできる事なら恩を返したいとか考えてる内にまた会いてえとか、お前を想う様にでもなったんじゃねえの。」


それか一目惚れとかな、と笑いながら言ってくるもんだから、一目惚れされる様な顔してる?と聞いてみると俺は無いなと返された。
…いや分かってたけどなんか腹たつな。

カンクロウ君をジト目で見ながらコーヒーを飲むと、私からちょっと目を逸らしてまた話し始める。


「お前と再会した時、我愛羅はお前の事完全にそういう目で見てたぜ。無理やりにでも砂に連れて帰ろうとしてよ。ありゃ相当だな。口には出さねえけど丸分かりじゃん」

「そういう目、って…さすが兄貴だね」

「だがお前は我愛羅の事、子供扱いしてよ、そんな気なんてサラサラねえみてえだったから我愛羅の恋は終わりだなって思った。まあ、その前にお前には帰る世界もあるしな。叶うはずもねえじゃん」


我愛羅君、ずっと私の事想って…
でもそう言われてみれば、心当たりがいくつかあるかも。
木の葉で宿に泊まった時も、毎日ご飯作って欲しいとか、火影邸でナルト君の事が好きなんじゃないのかって怒ってた時とか…。
そういうの全部、我愛羅君からのアプローチだったって、言われてみればそうかもしれない。


「…まあ、それでよ、我愛羅はお前に言うか迷ってたみたいだぜ」

「言うって何を」

「お前なあ、話の流れで分かんだろ。…その、好きとかどうとかをだよ」

「…」


カンクロウ君は一緒に注文していた私と同じコーヒーを一口飲んで、なんで俺が弟の恋愛事情を話さなきゃなんねえんだと舌打ちしながら言うけど、カンクロウ君は我愛羅君の為を思って今こうして私に話してくれてるんだ。いいお兄ちゃんだ。

兄弟愛とは素晴らしいな、なんて思ったけど、ここは真剣に聞いとかなきゃいけない気がして話の続きを催促した。


「でも迷ってたって、なんで迷うの」

「お前バカだろ。我愛羅とお前は住む世界が違うんだぞ。」

「バカって言うなし……あー、言っても意味ないもんね」

「最初はやっと会えたって気持ちで盲目的だった我愛羅も、だんだん冷静になって本当に自分の気持ちを言っていいのか、言った事でお前に気を使わせたりするんじゃねえかって思ってたみたいだぜ。」


もし私が我愛羅君の立場なら、叶わない恋をいつまでも引きずりたくは無いと思う。相手にだって迷惑かもしれないし。けど、告白もせずただ諦めるのはちょっとやだな。
好きだって言って、相手がどういう返事をしてくるかなんて分からなくても、そんな事よりまず気持ちを伝えるのが良いんじゃないかな、よく分かんないけど。
まあ多分、私なら迷わず言ってる。…多分だけど。


「…でも結局、我愛羅君は私に…告白、してきたんだよね。迷ってたのになんで言ってきたの」

「ああ、昨日の夜、お前が部屋から居なくなって、あいつ相当焦ったらしい。元の世界に帰ったんじゃねえかってな。」

「あー、確かにどれほど心配したか、とか凄い剣幕で言ってきたけど、」


いやでも、心配の元は私が帰っちゃった云々ってより、いつどこに敵が紛れ込んでるか分からないからあんまり勝手に出歩いたり、人に声をかけられてすぐ心を許してフラフラとついて行ったりするな、みたいな感じだったけど?とカンクロウ君に言うと、それもあるけどなと笑われた。


「なんで笑うの!」

「っ、わりい、大の大人があんまり勝手に出歩くなとか言われて怒られてんのが面白くてよ。…まあ、それでな、我愛羅はお前がいつか帰る事になろうがそうじゃなかろうが想いは伝えたいと、名前がいなくなった時思った、とか言ってたぜ。あいつ、世話になった事の礼を一回言いそびれてるのもあるからよ。…結局、その礼に関してはお前がこっちに来たから言えてたけどな」


昨日の夜、私を見つけた我愛羅君はちょっと怒ってる気がしてた、全然喋らないし。
私は私でシンキ君と、我愛羅君には内緒で喋ろうぜって言ってた事とか、勝手に部屋から出てウロウロしてた事に怒ってただ黙ってただけかと思ってたけど、
そうじゃなくて、心配ももちろんしてくれてたと思うけど、…また自分が伝えたい事も言えずに別れてしまうのかって、私が居なくなった時感じて、考え込んでたのかな。
言うか言わないか、葛藤してる表情だったのかもしれない。


「葛藤の末、言っちゃった感じか。」

「?、まあ、軽く聞いただけで詳しくは知らねえけどよ。今言わねえと、ってなったんだろ。我愛羅は、普段は思った事すぐ言っちまうタイプだしな」

「…告白も結婚も、タイミングって言うからね。言いたい時に言うのは分かる。あ、告白はタイミングって言わないっけ。」

「お前、独り言多いじゃん。」

「…でもさ、なんであんな機嫌悪いの我愛羅君は」