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「なんで?!雷車だってあるし一人で行けるよ!」

「ダメだと言っている」


なんでだよ!
木の葉に行くくらい良いじゃんか。ナルト君だっているだろうし、多分一番平和な里だと思ってるし、昔と違って今は雷車がある。
乗ってさえしまえば危険もなく行けるはず。

毎日暇なんだ。どうしようもなく暇なんだ…!
一人で行くのがダメなら我愛羅君一緒に来てよと言ってみるがそれもダメらしい。


「名前、お前木の葉に来たいなら私が案内してやるが」

「え!テマリちゃんそれ本当?!わーい!優しい!ね、我愛羅君!テマリちゃんが一緒に居てくれるって!」


我愛羅君に断られてションボリ落ち込んでいると、思わぬ救世主、テマリ様の発言で一気に気分はもう木の葉の里。
テマリちゃんが一緒なら、我愛羅君も断る理由なんか無いはずで。

木の葉に日帰りで行くのは難しいから、泊まるならウチに泊まればいい、とまさに神様のようなお言葉をくれるテマリちゃんに、ありがとうとキャッキャウフフの状態でお礼を言っていると、横から視線を感じてそちらを向いた。


「…テマリ、すまないが名前は木の葉へは行かせられない。名前も我慢してくれ」


そう言われて、少しの沈黙の後、最初に声を上げたのはテマリちゃんで。
何故なんだ?と疑問を自分の弟に向けるとシンプルな返事が返ってきてテマリちゃんも私も固まってしまった。

心配だから。
って、


「いやいやいやいや、どんだけ心配症なの?ていうか過保護なの?お父さんなの?」

「心配するのは当たり前だ」

「いやだってテマリちゃんも一緒にって言ってくれてるじゃん。心配する事ないじゃん」

「俺の目の届く所にいてくれと言っているんだ」

「な、ちょ、私赤ちゃんじゃないんだけど!」


なんだよ目の届くところって!

もう我愛羅君には何を言っても無駄というか話にならないと、横で私たちの言い合いを聞いていたテマリちゃんに助けを求めた。
なのだけど、肝心のテマリちゃんは何故かクツクツと笑っていて。

なにを笑ってるんだと思い疑問の目を向けると、お前達仲良いなと言われた。


「えええどこがですか!」

「ははは、誰が見ても仲良さそうに見えるぞお前ら。まあ、我愛羅が心配ってんなら今回は諦めな」

「え、あ、ちょっとテマリちゃん!」


はっはっはと笑いながら執務室を出て行くテマリちゃんを追いかける事もできずその場に立ち尽くしてしまった。

折角木の葉に行けるチャンスだと思ったのに、全部潰されてしまって反抗心から我愛羅君に詰め寄り文句を垂れる。


「我愛羅君のバカ。私する事なくて暇なの。めちゃくちゃ暇なの!なんで木の葉に行っちゃいけないの!ちょっとメガネのおじさんに会いに行くだけなのにー!」


キイイイイ!とジタバタしながら文句を言う私に、まるで興味が無いような装いで仕事をこなす我愛羅君。

まだ話しは終わってないんだぞコラ!と言うと小さく溜息をつかれた。

溜息ついてんじゃねえええええ


「…昔俺がお前の世界に行った時、お前は家に居てくれと俺に言っていたな。俺はそれに従っていたはずだが」

「……一回勝手に外出てたじゃん」

「俺は自分の身は自分で守れる。だがお前はどうだ、敵襲にあった時自分を守れる程の力があるのか。大きな戦争が無くなったとはいえ、小さな争いは絶えず起こっている。そんな中、一人で他里になど行かせられない」


書類に通していた目をこちらに向け、諭すように話しをしてくる姿はもはやお父さん。
最もな事を言われているのは分かってるけど、ジッとしていられない体質の私は暇な時間に何かしたいという気持ちが強くて、納得いかないという念を込めた唸りをあげる。


「…だが、この先ずっと木の葉に行ってはならない、とは言っていない」


我愛羅君が公務をしている机に向かい側で突っ伏して、うー、とか、うーん、とかただ唸る私に、遠回しな言葉を寄越してきたので伏せた顔を上げる。
向かいにいる我愛羅の顔を見ると困ったように笑っていた。


「さっきテマリも言っていたが、今度中忍試験で木の葉へ行く。その時まで我慢してくれ。肩身の狭い思いをさせてすまない」


思わぬ言葉と、私の頭に伸びてきた手に、我に返った気分で、途端にわがまま言ってごめんと思う。

よしよしと私の頭を撫でる我愛羅君は、何日か前も思ったけど、一年前に私の部屋いた頃とは随分違って大人に感じた。


「……分かったよお父さん」

「…」

「中忍試験、楽しみ」