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中忍試験。初めての五里合同で行う試験。
それについていく事を許可されて、私は大いに喜んだ。
晩御飯の時にシンキ君にも見にいく事も伝えよう。見てるから頑張ってって。
楽しみだなあ、まだ会ってない木の葉の人たちにも会えるかもしれないしと、気分はウキウキだった。
はずだった。
我愛羅君に中忍試験へ一緒に行く許可をもらって、浮いた気分のまま部屋へ戻り、気づけばもうすぐ晩御飯の準備をしなければならない時間になっていて、冷蔵庫を覗きながら今日作るものを決めていた時、フと違和感が走った。
「…そういえば中忍試験、って、」
中忍試験というワードで、何か忘れてる気がすると引っかかりを覚え、冷蔵庫を漁りながら記憶を探ってみる。
なーんか忘れてるような、中忍試験って最後誰が優勝するんだったっけ、決勝って誰と誰が戦うんだっけ。と思い出そうとして見るも、なかなか思い出せない。多分原作とアニメがごちゃごちゃになってるのもあるけど、引っかかってるのは誰が優勝したとかそういう事じゃなくて、もっとこう、なんか危ない事があったような…
「…!」
うーん、と頭を捻りながら冷蔵庫の奥にあった桃を発見した時、一瞬にして記憶が入り込んで来た気がして思わず桃を落としてしまった。
…モモシキ!
そうだ、なんで忘れてたんだ。中忍試験といえば最後に大筒木の人たちが来るじゃないか。
沢山の人が怪我をして、ナルト君が連れて行かれて……その後は無事に帰って来るはずだけど。
「これは大変危ない目に会うかもしれないじゃないか」
ていうかどっちだ、原作ならウラシキという奴は出てこないはずだけど、アニメなら雷車の中で我愛羅君がウラシキに襲われてた。
いやいや今更原作とかアニメとかどうでもいい。私がここにいる時点で、物語が変わってしまっている可能性だってあるんだから。
そんな事より中忍試験で起こりうる事件を、我愛羅君に言っといた方がいいのか、言わなくてもいいのか。
いやそもそも私は以前ナルト君に未来の事を教えてくれと聞かれた時に、私は知らないと言ったんだ。
もちろん、言いたくないから教えないって意味で知らないと言ったんじゃない。
今連載中だし、私の存在があるという事を踏まえて、これから先の事はよくわかないと言っただけ。
多分私が、これからこういう事が起こりますよと言ったら、それを信じて先回りで回避するだろう。でもそれがもし私の知っている物語と違って、起こる事が起こらなかったら?
実際、我愛羅君が異世界の私の事を愛してるなんて、とんでもない誤算が起こってるわけだし。
私が、木の葉のココを襲って来る奴らがいるとピンポイントで言ったとして、実際襲われたのは違う場所だった、なんて事もあるかもしれない。
私の所為で大勢の人が死ぬ事だってあり得る。
そんな事絶対嫌だ。嫌すぎる。
「ここは余計な事は言わない方がいいのかも」
触らぬ神に祟りなし。
そうだ。なんといっても彼ら五影達は強いんだから。私が余計な、助言じみた事なんか言わなくても柔軟に対応できるだろう。
腑に落ちない事もあるがここは物語を見守ろうと決めた。
多分それで大丈夫だ。うん、その方が絶対良い気がする。
「…となると、ついて行って良いものなのか」
私がついて行って、もし襲われたとしても、我愛羅君が一番に助けに来てくれるに違いない。
でもそれで、我愛羅君が怪我したら?怪我だけならまだしも、もし、死んじゃったりしたら。
そんな事、絶対あってはならない。物語が変わってしまう。
「ていうか我愛羅君が死ぬなんて、絶対立ち直れない。それなら私が死んだ方がマシだ」
考えただけで全身が震える。
さっきまで木の葉に行けるイエーイなんて考えてた私はなんとも愚かだと思うほどに、中忍試験には行きたくなくなっていた。
我愛羅君に言おう。やっぱり行かないと。
さっきまで喜んでた奴が手のひら返したみたいに行かないと言うんだから、理由は必ず聞かれるだろう。
だけどここは黙秘で押し通そう。
私が余計な助言をしてもしなくても、彼ら大筒木一族は襲って来るだろうし、そして五影達が勝利するんだ。
かっこいい事を言う訳ではないが、信じて待っていればそれで大丈夫だ。
「…よし、晩御飯作ろ」
考えて立ちすくんでいても仕方がない。それよりも晩御飯だ。
シンキ君も帰って来るだろうし、調理にとりかからなきゃと冷蔵庫から食材を出しつつ料理を始めた。
桃もデザートで食べることにしよう。