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今日の晩御飯は肉じゃがだ。
それは私が食べたいから。


晩御飯の用意ができて、まだ仕事をしているんであろう我愛羅君を執務室まで呼びに行く。
なんとなく晩御飯の時間は決めていて、我愛羅君はその時間に帰って来ることもあれば、帰って来ず私が呼びに行くスタイルがここ何日かで根付いた。
呼びに行っても仕事が忙しくて一緒に食べられない日もあるけど。

カンクロウ君は大体私たちが食事を終えてから一人で食べに来ることが多くて、
シンキ君はいつも大体帰って来てはいるが任務の報告だけして自室に篭っているか自主トレ的な事をしているようなので、我愛羅君に居場所を聞いてから必ず呼びに行く。

我愛羅君にだけ言わずに私にも帰って来た事を言ってくれたって良いんじゃないと感じる事もあるが、それはまあ、追々で良いかななんて。


「我愛羅君、ご飯できたけど、食べる?」

「…ああ、すぐ行く。シンキは部屋にいるだろう。呼びに行ってやってくれ」

「はーい」


執務室の扉を開け、顔だけ出して我愛羅君にご飯だよと伝える。
まだ何回かしかしていないが、まるで夫婦のようなこのやりとりに毎回少しだけ照れる。

多分、告白されていなかったら単純に、夫婦みたい!とテンションが上がっていただけだっただろうけど、我愛羅君は私の事好きなんだよねと思いながらこのやりとりをしていると爆発的に照れるし、ちょっと意識してしまう。

このまま我愛羅君と一緒になったとしたら、多分幸せなんだろうなあ、なんて現実的では無い事も密かに考えるようにもなった。
まあ、ありえないんだけど。


「…なにを突っ立っているんだ」

「わ…!シンキ君、」


執務室からシンキ君の部屋を目指して廊下を歩いていたつもりだったが、考え事に浸っていて立ち止まってしまっていたようで、向こうから歩いて来たシンキ君に声をかけられ我にかえった。

心の声は漏れていなかっただろうか。
息子であるシンキ君に、我愛羅君とのやりとりが夫婦みたいで照れるななんて事もし聞かれていたら爆死するくらい恥ずかしい。
穴があったら入りたいと思う。けど、シンキ君の様子からして漏れてはいなかった様だ。……と思いたい。


「ご、ご飯できてるから、食べよ」

「…ああ」


少しの動揺を隠すみたいにしてシンキ君の前を歩くと素直について来るのでホッとしながら夕食が待つ部屋へと向かう。



すでにテーブルに並べていた食事をシンキ君と二人だけで食べ始めてからすぐ、我愛羅君がやって来て三人で食べ始める。
会話はいつもあんまり無いけど、特に居心地が悪いとは思わない。
カンクロウ君がいる時はうるさいくらい喋ってるけど、それはそれで楽しいし。

ただ、困っている事が一つだけある。


「…今日も美味いな、ありがとう」

「え、や、…うん、良かったよ」


そう、これ。この我愛羅君の発言。
あれは初めて朝ごはんを作ってみんなで食べていた時に言ったのだ。美味いと。
ただ美味いと言うだけならそれでいいが、問題なのはその表情で。
私が一番弱い、柔らかく笑うその表情で、美味いとかありがとうとか、我愛羅君萌えの私からするととんでもないサービスを披露して来るのだ。

そもそもなんとなく我愛羅君を意識してしまう様になったのは、この笑顔での美味い発言からだったりする。
その時一緒に食べていたカンクロウ君がえらくニヤニヤしてたのも鮮明に覚えてたりする。
それから私がちょっと照れているのに気づいているのかいないのか、我愛羅君は毎食、一緒に食事をする時には必ず言って来て、それに毎回私は不覚にも困惑している。
こんなの意識するなって言う方が無理でしょうが。

くう、笑顔が眩しい…。



まあなんとか今日も我愛羅君のスマイル攻撃から耐え抜き、食事も平らげた。
シンキ君はよくできた子で、自分の食器は自分で流しに持って行ってくれる。無言だけど。
そしてそのまま、部屋へ戻りますと言いながら自分の部屋に戻っていく。

そういえば桃を食べようと思ってたんだったと思い出し、部屋へ戻ろうとするシンキ君に声をかけたがいらないと言われ、シンキ君の桃は明日の朝出そうと決めた。


「我愛羅君は桃、食べる?」

「…ああ、いただくとしよう」


聞くと我愛羅君は食べるらしいので、じゃあ用意するねと、食べ終わった食器を二人ぶんまとめて流し台に置いてから桃を用意する。

よし、桃を食べながらモモシキの話、……いや違う違う。
中忍試験には行かないって言わなきゃ。