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桃を素早く剥いて、なん当分かに切り分ける。
それらを一つのお皿に、フォークは二つ乗っけてテーブルに戻った。
「はい、お待たせ。ていうかこの桃、誰が買って来たの?」
「たまに里の者から貰うんだ。砂の里はあまりこういった果物が育たないからな。他里に出向いた者だったりが持って帰ってきて分けてくれる。ありがたいものだ」
ほお、それを我愛羅君が冷蔵庫に入れたのか。なんか面白い。
確かに砂漠地帯なんだから野菜とかも育ちにくいんだろう。
八百屋さんとかもどこかの里から仕入れてるんだろうか、よく知らないけど。
ありがたや〜と口に出しながら桃をいただいて、そろそろ本題に、と別に正さなくてもいい姿勢を少し正した。
「あのね、ちょっと、我愛羅君に言いたい事があるんだけど」
「なんだ」
急に意味深風に話し出した私に、桃を食べる手が止まりこちらを見る我愛羅君。
う、そんなに見られると話したい事も話しづらいんだけど。
でも早々に行っておかないと、強引に連れて行かれても困るので、謎の緊張感を少しでも柔らげる為に桃を頬張りながら話すことにした。
「私、中忍試験、行きたく無い、んだけど」
「…何故」
「あ、木の葉にはまた遊びに行きたいよ?携帯もカタスケのおじさんに見てもらいたし。でも折角木の葉に行くならゆっくり観光でもしたいな、我愛羅君と一緒に〜なんて。ははっ」
ほら、我愛羅君は試験見とかなきゃいけないでしょ?と最もらしい理由を言って見るが、我愛羅君はそれを真に受けてくれるだろうか。
「…思ってもいない事は言わなくてもいい」
否、真に受けてはくれなかったようだ。
「い、いや、本当だって。木の葉に行くなら我愛羅君と二人で観光目当てで行きたいからって思ったんだよ」
「さっきはあんなに喜んでいたのに、気が変わるのが早いんだな」
「あ、あ〜、ほ、ほら!女の心は秋の空って言うし!」
ふーん?とでも言いそうに、目を細めてこっちを見てくるもんだから、全部見透かされてるんじゃ無いかと盛大に動揺してしまう。
とにかく私は行かないからね!と強めに言い放ち、すでに平らげた桃の乗っていたお皿を片付けようとすると、我愛羅君から制止の声がかかった。
「な、に」
「何か理由があるのか」
「や、だからその、観光したいか、…」
「それとは別の理由があるのかと聞いているんだ」
やっぱり、見透かされてるのか。
それでもこれから何が起きて、こういう事が心配だから行きたく無いと言うのは気が引ける。
未来の話なんて、確かな様で確かじゃ無い。
でもどうしたら我愛羅君は行かない事を了承してくれるんだ。
そもそも私が木の葉に行きたいと言うから、じゃあ中忍試験に一緒に行こうか、くらいの話だったはずだ。
気が変わったから行かないって私が言うんだから、分かったの一言で了承してくれてもいいはずなのに。
「…理由を言いたくなければ言わなくてもいい。だがお前は連れて行く」
「え、いや、なんで」
「元々連れて行くつもりだった。俺の目の届くところにいてくれと言っただろう。俺が他里に行く時はお前も一緒だ。危険な任務には連れて行けないが、」
まさかの、どこへ行くにも一緒だ発言に過保護かよと思ってしまった。
いや、だからその中忍試験が危険なんだけど。
これじゃ何にも知らない方が気持ちが楽だ。なんて、思っても仕方ない事まで考えてしまう。
ハナから連れて行く気満々だったらしい我愛羅君の気を、どうやったら変えられるかと考えてもいい案が浮かばない。
「何か心配事でもあるのか、」
「う、えと、あの」
この人は私の考えてる事を読めるんだろうか。え、実は山中一族的な何かなの?読心術とかそういうスペックあるの?
いや、多分私なんかの心を読むのなんて誰でもできそうだ。
一言一言にこんなに動揺してしまっては、考えてる事なんてすぐ分かるだろう。私のアホ。
「…心配などしなくていい。何があろうと俺はお前を守ると、以前も言っただろう。大丈夫だ」
「……」
……なんて男前なんだ。神々しさすら感じるよ。
いやいや、違くて。そうじゃなくて。
ああもう、どうあっても我愛羅君は私を連れて行く気なんだな。
分かった。分かったよ。行くよ。行ってやるよ。
「……分かったよ」
もうなす術なんて無いなと観念し、我愛羅君について行く事を言うと、短い返事が返ってきた。
だけど約束してほしい事がある。それだけは言っておかないと。
「行くけど、あのね、約束して欲しい事があって」
「…約束?」
「我愛羅君は私を守ってくれるって言ったけど、…私の事は二の次、いや最早五番目とか、そのくらいで考えといてほしいの」
確信を言わず、先に分かったと言ってほしくて、遠回しに発言していく。
「どういう事だ」
…うん、やっぱりそうなるよね。
五番目くらいに考えてと言った後から我愛羅君の視線が鋭くなって、思わず怯んでしまった。
私がもし襲われて、その所為で我愛羅君が死ぬなんて事、多分無いとは思うけど、でも無きにしも非ずだ。私の所為で怪我も死ぬ事もして欲しく無い。
なんて言った所で我愛羅君はもしもの時は私を守ろうとしてくれるんだろうけど。
「も、もしもね、もしもの話しだけど、私が危ない目にあったとしても我愛羅君は自分の事を一番に考えてほしいって事!ほんとに、もしもの話しだけどね!」
「…中忍試験で何かあるのか」
うああああああ
もしもって言い過ぎたヤツだコレええええ
本当にバカだ私いいいい
自分で言って悲しいけどコレはバカとしか言いようがないんですけどおお!
我愛羅君の鋭い視線は相変わらずで。
その視線に殺されそうだと思ったのは内緒だけど、あたふたしすぎて言葉が出ない。
私本当に嘘つくの下手すぎなんだけど。
これじゃ完璧に中忍試験で何か問題ありまっせ〜て言ってるようなもんなんだけど。
「…そうか、お前は未来も知っているんだったな」
「っ、」
ああもう、これは喋らないといけないフラグが立ちまくっている…
観念、というかこれは完全に自爆だが、もう話すしか、と諦めかけて実はと話そうとすると我愛羅君が口を開いた。
「何があって、どういう理由でそんな事を言っているのかは知らないが、言いたくないならそれでいい」
「…え、」
「それに何があろうと試験には五影が揃っている。何も心配いらない。お前を連れて行くのもそれが一番安全だと踏んでいるからだ。危ない目には合わせる気など無い。勿論俺も、どんな輩が攻めてきたとしても負ける気など毛頭無い」
…本当にこの人は。
何も心配要らない、か。
我愛羅君の顔を見れば自信に満ち溢れているみたいな表情をしていて。
私の感じてた不安なんて一瞬で払拭された感じだ。
本当に、いらない心配だったのかもと思わせてくれる。
そこまで言ってくれるなら、もう心配なんてしないと、素直に木の葉の里と中忍試験を楽しむ事に決めた。
今度こそシンキ君に見に行く事を言おう。
私が知っている未来と、違う事が起きませんように。