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シンキ君達がいなくなってから、カンクロ君はシンキ君達と、私と我愛羅君は後から追いかける感じで木の葉入りする事が決定し、じゃあ私も今のうちに木の葉に行く準備しとくねと執務室を出ようとしたが、そういえば、と部屋に残る二人に再び向き直った。


「今日の夜ってさ、シンキ君の晩御飯も作ったほうがいい?」

「…ああ、シンキが出立する前までに食事の用意をしてくれるか」

「俺のも頼むじゃん」


お、じゃあ今日は皆で晩御飯か、…その前にお昼ご飯だな、と考えながらオッケーと軽く返事をして執務室を出る。



それからササッと昼食を作り、我愛羅君と一緒に食べてから、木の葉へ行く準備を整える。
何日か泊まる予定だと言っていたから…、と多くない自分の荷物をまとめた。
携帯も持って行こ〜とカバンの中に潜ませようとしたが、充電されて電源が入るようになってから結局使ってない事を思い出して、久しぶりに写真でも見てみるかと画面を起動させてみる。


「あ、懐かし〜こんな昔の写真、あったんだ」


写真フォルダの一番最初、私が以前使っていた、我愛羅君が持ってるサブの携帯よりも前の携帯、
その写真のデータが同期されている。
高校の時と大学時代の写真があって、懐かしさに浸りながら夢中で写真を見続けた。


「うっわ、高校の制服懐かし〜!皆元気なのかな、仕事とか何してんだろ〜」


高校の時は先生の話なんてロクに聞いてなくてよく怒られてたとか、初めてできた彼氏は三ヶ月も続かなかったっけとか、楽しい思い出に頬を緩ませながら見続けている内、
見つけた一枚の写真に思わず息を飲む思いがした。


「お母さん、」


私が高校を卒業してなんとなく早く働きたいと思った私は短期大学へ進んだ。その時独り立ちを決めて、そして就職して。
結局独り立ちしてからは片手で数えられる程しか会っていない両親の写真を見て、今、元気にしてるんだろうかと考える。
私がこの世界にいる間、元の世界でどういう風に時間が進んでいるのかは分からないが、もし同じように進んでいたとしたら私は突然失踪したということになる。
会社は無断欠勤で、もし両親に連絡が行っていたとしたら、マンションにだって来ているかもしれない。
捜索願とか、出してんのかな。
まだこっちに来て一週間くらい。なんの手がかりも無くいなくなった私を生きてると願って探し回ってるかもしれない。


「心配、してるよね」


そんな事、考えても仕方ないのだけど。
きっと今頃、この携帯にも沢山の人から連絡が来ているんだろうと思うと、本当に帰れるのかと不安が襲ってきた。
私、絶対帰りたいかと言われたらそうじゃないかもしれないとか思ってたけど、でも多分帰りたいってどこかで思ってたのかもしれない。
帰れなかった時の事を考えたく無くて、帰れなくても〜なんて、逃避してたのかもしれない。

…帰れなくても良いなんて、そんなはずないじゃないか。
この世界は居心地こそ良いものだけど、私の事をよく知る人物なんていないし、もし私が結婚とか出産とかそういう目出度い事があっても、一番に報告したいはずの両親だって、友達だって、誰もいない。
私はこの世界で、独りなんだ。


「……止めよ、考えたら暗くなっちゃう」


やめやめ。
私は帰るまで、楽しく沢山のキャラたちとウハウハする事に決めたんだ。
いつになるかは知らないけど、絶対帰れるはずなんだ。この世界にとって、私は必要ない存在のはずなんだから。


「大丈夫だ。我愛羅君だって帰ってきてるんだから。私も帰れるはずだ」


不安を取り除くみたいに自分に言い聞かせてから、
画面の暗くなった携帯を木の葉へ持っていくカバンの中に押し込んだ。