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…なんだ、すごく自分が揺れている。

まさか、眠ってしまったと思いきや無意識の内に大量に酒を煽って完全に泥酔してしまって頭がガンガン揺れているのか。

そんな事があったら完全に只の飲んだくれというか、呑んべえというか、只の危ない人じゃん、と揺れている頭に手を当ててみる。


……頭痛くない、
というか身体全体が揺れている。


「んあ、…」

「起きたのか」

「え、」


あれ、真上に我愛羅君がいるんですけど。
我愛羅君が私を見下ろしてるんですけど。
というかこの頭に伝わる柔らかい感触はなんだ。柔らかくて、ちょっと硬くて、……
成人した男性の膝みたいな感触、




「わああああおおお!!」

「…」

「な、なんで私我愛羅君の膝で寝て…?!、ていうかここ、雷車?!」


朦朧としていてまるでまだ夢の中のようだった意識が急速に覚醒し、自分の現状を認めたところで飛び起きる。
完全に成人男性の膝だったじゃん。

私は確か少しのお酒を飲んで気持ちよくベッドでゴロゴロしていたはずだ。
なのに何故、雷車の中でしかも我愛羅君の膝で寝ているんだ。いや、最強にナイスシチュエーションなのだけど、展開が急すぎて寝起きの私の頭は追いついてこない。

いやマジで、なんで?


「出立する際、一度声をかけたが起きなかったのでな。連れて来た」

「…なーんだ、そゆこと!起きなかったのか私…!って!、連れて来たって…!ど、どうやって!」

「…肩に抱えてだ」





肩かいいいい!!
そこはお姫様抱っことか、おんぶでしょ普通!
我愛羅君私の事ほんとは嫌いでしょ!絶対嫌いだよね?!好きな女を肩に担ぐとか普通しないもんね?!
もしかしてお姫様抱っこで…?とか一瞬ドキドキしたこの気持ちはどうしてくれるんだよ!
ていうか起きるまで起こしてよおおお!前にもこのセリフ言ったよねええ?!
起きるまで諦めんなああ!

ソファの背にもたれ、私が起き上がった事により足を組んだ我愛羅君の隣で声にこそ出さないが明らかに脳内で爆発が起きている私の表情を見て、落ち着けと言ってくる我愛羅君。

いや君の所為でこうなってるからね?

あーもう、絶対里の誰かに見られてるよ。
あれ、風影様……なんか人、背負ってね?ってなってるよ絶対いい。
知らない内に背負われてた人だって噂されたら恥ずかしいじゃんよお。

それに出掛ける前に色々準備もしたかったのにさあ〜〜
寝癖だってついてるだろうし、


「顔だって洗いたかったのに。もお。起こしてよー、」

「…それなら洗ってくればいい。目も覚めるだろう」


目を擦りながらブツブツ言っていると、一つ向こうの車両に洗面台があると教えてくれた。

そんなのあるのか!雷車ナイス!風影ナイス!と、すぐさま立ち上がり洗面台がある場所まで行こうとすると手を引かれ、振り向くと小さいタオルを差し出してきている我愛羅君と目が会った。

た、たおる……
え、なにその女子力の塊みたいなタオル。ていうかいつも持ち歩いてんの?私より女子なの?なんなの?


「使うといい」

「あ、ありがと、」


…やばい。
なんか我愛羅君が女子に見えてきた。だって私より我愛羅君の方がよっぽど大人の女性…みたいなんだけど。
落ち着いてるし物怖じとかしないしツンツンしてそうで優しいし仕事はできるし風影だし。
うちの会社にもいたぞこんな女上司。風影では無いけど。

って、違う違う。
考え(妄想)出すと止まらないこの癖は本当になんとかしなければ。
いつか全部口に出していそうで怖い。

タオルを受け取ってからボーッとしていると、どうしたと声をかけられハッとした。
何でも無いと返答し、我愛羅君に言われた通り隣の車両へと足を運ぶ。

流石、木の葉から砂へ来た時に乗った雷車も凄く豪華だったけど、今日のも凄いな。部屋かよここは。
そして一体、何両陣取ってんだ風影様は。
他の乗客の声とか本当聞こえないんだけどまさか全車両、我愛羅君と私の二人…?なんて事は流石に無いか。
結界とか張ってるんだろう。だからかな、雷車が揺れる音しか聞こえない。

元居た車両との連結部分にある扉を後ろ手で閉めてから豪華さに目を剥きながら車内を見渡すと、確かに角に洗面台があったのでそこまで向かおうとした。

が、






「君は見た事が無い生き物ですねえ」

「…!」




どうやら顔を洗うのは、今は無理のようだ。
…結界、意味無いじゃん。