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リー君の挨拶、試合のルール等の説明もほどほどに、大歓声の中すぐに試合が始まった。
最初は思っていた通りボルト君対雲隠れの子で。
名前はユルイ君だったね。それが流行りなのかわからないけど言葉を変な略し方する子だったっけ。
やっぱり有り難うございますって事もアザース!って言うのかな。


「お前ら全員ダジッちゃおっかなあ」




…うわあ言ったよ、ダジッちゃおっかなって言ったよ。
ダジッちゃうって何だっけ、一網打尽って意味だっけ?いやいやどんな略し方だよ。
略すってのは全員ちゃんと意味がわかるように、尚且つゴロも良くて言いやすいってのが鉄則なんだよ。
そんな略し言葉じゃ、誰も使ってくれないよ!

……って、そんな事どうでも良いし。


変な事を考えてしまっている内に、試合はもう終盤にさしかかっていて、カラフルな風船ガムが所狭しとユルイ君の周りを取り囲むように守っている。

あ、これもう決着つく、と思ったのも束の間。
ボルト君が化学忍具を使って出したであろう手裏剣がユルイ君の口元をかすめて、膨らましていた風船が爆発。
リー君の声と歓声と共にボルト君の勝利が決まった。


「化学にん、…っ、」


それにしても、あんなに手裏剣曲がるか普通。とかなんとか考えていると、無意識に声に出ていたのに気づきハッとする。
化学忍具ってすごいな〜!なんて、ここで口走っちゃただのアホでしかないじゃんか私。
あっぶね〜と心の中でヒヤヒヤしながら、誰にも聞かれてなかったよねと、周りを見てみるが誰も私の方に注目していないのでホッと一息。

もう何も言わない、何も言わないと念を唱えながら口元を手で覆っていると、歓声と共に次の試合が始まった。

ヨドちゃんとシカダイ君だ。
これはどっちを応援すれば良いんだ…!私は一応砂隠れから来ている身だし、でもシカダイ君も可愛いし良い子だしシカマル君とテマリちゃんの息子だし…!
勝ち負けは知ってるんだけど、でも生で観るこの試合を応援せずにはいられないと、結局、どっちも頑張れと心の中で叫びながら観戦する。

右へ左へ、シカダイ君が繰り出す技を華麗に避けるヨドちゃんの動きに感激しながらも、シカダイ君の影の動きにも注目してしまう。
食い入るように見守っていると、突然爆発が起こり、心臓が跳ね上がった。と思ったらヨドちゃんがシカダイ君の影に捕まっていて、ヨドちゃんによる参ったの一言で決着がついた。


「勝者、奈良シカダイ!」


わああああと、リー君の一言で歓声が広がっている中、後ろからシカマル君の歓喜の声が聞こえる。
そりゃ嬉しいよね、自分の息子だし。みんな多目に見てあげてよと思っていると、きっと顰蹙の目を向けられたんであろうシカマル君の失礼しましたという言葉が聞こえて、前を向きながらニヤニヤしてしまった。

本当に、アニメのまんまだな。






……







それから試合は続々と勝敗がついていき、どんな結果になるか知っているにしても、一歩間違えれば死ぬこともあるような試合を見続けていることで私は心身共に疲れ切ってしまった。
こんなの、よくずっと見てられるよね。

シンキ君とチョウチョウちゃんの試合も終わったし、ちょっと休憩したいと、名残惜しさもあるが席を立ち我愛羅君に休憩したいんだけどと申し出る。
ただ観戦してただけの私が休憩したいなんて、こいつ何言ってんだ?状態だが、とにかくこの早いままの心臓を一回落ち着かせたい。正直、勝ち負けが全部分かっている以上、見なくても良いかななんて思うのもあるんだけど。

目の届くところにいてくれと言われていて、尚且つ今は席を外せない状態にある我愛羅君は、休憩したいと言った私を数秒見つめ、考えた挙句、シンキのところへ行けと言われた。


「え、あ、うん。分かった」


一人でウロウロするなと無言の圧力に押され、咄嗟に分かったと返事をし、その場を離れてシンキ君がいるであろう教えてもらった選手控え室に足を運ぶ。
…ものの、控え室なのに一般人がそこで休憩なんてして良いんだろうか、いくら我愛羅君に言われたからって迷惑なんじゃ。

一回戦が全部終わって、次の試合までには30分のインターバルがあるとリー君が言っていた。
その30分でみんなは控え室で休憩したり、作戦を考えたりしてるんじゃないのか。
そんな場所には流石に私でも行けない。空気もピリピリしてるだろうし。
緊迫した空気が嫌で休憩したいと思ったんだ私は!


「その辺の階段で座ってようかな、」


そうだ、そうしよう。次の試合が始まるまでに戻れば、シンキ君にのところに行っていなくても我愛羅君にはバレないでしょ。


「そんじゃ、まあ、この辺で、っと」


廊下を歩きながら、見つけた階段に適当に腰を下ろす。
あと20分ちょっとくらいかな。朝から叩き起こされたし、なんだか疲れて少し眠い気がしてきた。

静かに座って少し。これはもう寝る、私寝るぞと思ったところで、ポケットに仕舞っていた携帯を取り出し15分後にアラームでもかけておこうと画面を触る。携帯の時計はなぜかめちゃくちゃな時間を指しているので、タイマーで15分をセット。

これで寝過ごすなんてこと絶対にないし、寝れなくても目を閉じているだけで充分な休憩になる。
携帯が鳴ったらすぐ戻れば良いんだ。

背中を折って、膝に顔を埋めてお休みの体制。携帯は膝と顔の間、すなわち目の前に置いている。
誰も通りかかってくれるなよと心の中で思いながら、誰かに言うでもなく、独り言でおやすみと呟き目を閉じた。