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あれ、私死んだんだっけ。
そうだ、何もできないのに無闇矢鱈にウラシキに飛び込んで行って、ミツキ君の事も結局救えずに、無駄死にしたんだっけ。
それにしてもこう、意識があるもんなんだな。
魂がまだ成仏してないとか?そんな事本当にあるんだ。
「…って、え?」
……あれ、死んだよね?確実に。だって心臓刺されたんだよ、貫通したんだよ、めっちゃ痛かったんだよ?
最期、我愛羅君に呼ばれた気がしたけど返事もできずに死んだはず。
なのに、
「元の、私の部屋だ、ここ」
ベッドの上で、布団をかぶって、まるで夜普通に寝て、朝普通に目が覚めたみたいな感覚で。
刺されたはずの心臓の辺りに痛みも無い。
一体どういう事なのか。
全部が夢?最初から最後まで、我愛羅君が私の部屋に来たところから私が死ぬまで、全部このベッドの上で見た夢だったのかと思いながら、とりあえず起き上がろうとかぶっていた布団を捲りあげ身体を起こすが、
「夢、…ではないんだ」
布団を退けた事により露わになった自分の身体を見てみると、我愛羅君に買ってもらった服を着ていて。
どうやら夢ではなかったらしい。
という事は、向こうの世界で死んだ事によって私はこちらへ戻ってきたという事なんだろうか。
だが一つ、おかしい事がある。
ベッドやテレビ、テーブルなど、大きな家具は私が向こうに行った時のままだが、この狭い部屋のいたる所にダンボールが置いてある。
もしかして、行方不明という事になっていてこの部屋を引き払う為に両親が引っ越しの準備をしに来たのか。それ以外考えられない。
「ていうか今は何月何日で、何時なんだ」
まあ、戻ってきたなら戻ってきただ。
行方不明者扱いになっているなら、この部屋を引き払われる前に誰かに連絡しないと。
向こうで死んでしまったのなら、私はもう向こうに行く事はないんだろうから、元の自分の生活をしなきゃならないと、なんとも臨機応変な思考を巡らせながらポケットにしまっていたはずの携帯に手を伸ばし画面を見てみると、不在着信の嵐だった。
一体何月何日に、私は向こうへ言ったのかはよく覚えていないが、部長だったり同僚だったりからの着信はおそらく私が消えた翌日、職場に来ない事から連絡をして来てくれたものだろう。
その少し後に母からの着信が何度かあったようだが、恐らく会社から連絡があって私に電話をかけて来た、という事だろうか。
携帯に表示されている日時を確認して、最後の不在着信から約一週間程経っている事が分かる。
まあ、この携帯の日時が本当の日時なのかは謎だけど、今はとりあえずこの日時と思うしかない。
というか最後の不在着信から一週間も経ってるのに、その間は誰も連絡をしてきていないというのが些か気になるが、どういう事なんだろう。
そんな事より一体これからどうすれば。
誰かに連絡って言っても、
時間にして一週間はゆうに超えている訳だし、今更ノコノコと皆の前に出て行って、私はなんて説明すればいいんだ。
会社にだって、なんて言えばいいのか。
…あ、もうクビになってるかな。
「せめて元の時間に戻してくれよお、」
考えても仕方ない事だけど、とにかく直ぐに誰かに電話をかけたとしても上手く説明できる自信は無いので、一旦落ち着いて打開策でも練ろうと、近くのダンボールの上に置いてあったリモコンを、点くかも分からないテレビに向けスイッチを押す。
「あ、映った」
意外にもすんなり映ってくれたテレビのチャンネルを回して、ニュースをやっているチャンネルで手を止めた。
キャスターが今現在の日時を言ったのを聞いて、携帯の日時が合っている事を確認すると、そのままニュースを見続ける。
「お〜、あの芸能人、結婚したんだ」
スキャンダルを報じたり、季節の入れ替わりを報じたり、平和なニュースばかりで、今の自分の状況を思わず忘れそうになったが、これからどうするか、どう説明をするかなどを再度考え始めようとリモコンを手に取りテレビを消そうとしたタイミングで、とんでもないものが目に飛び込んできた。