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「え、これ」


目の前のテレビ画面に映っている私の写真。
その写真が表示されている横で、ニュースキャスターが淡々と喋っている。
連絡が取れず、家にも居ないと家族から捜索願いを出されていた、…と言っているのを聞いて、やっぱりそういう事になっていたのか、というかニュースにまでなるなんて私有名人になるじゃん。など、どうでもいい事を一瞬考えながらキャスターの言うことに耳を傾ける。


「捜索願いが出された後、遺体となった名字名前さんが見つかり、警察が他殺と断定してから今日で5日が経ちましたが、……」





は?



「依然として犯人は捕まっておらず、凶器や手がかりも見つかっていない状態です。警察は引き続き目撃情報などを集めながら捜査に当たる模様です」


キャスターが淡々と私の死亡を告げている事に驚きが隠せない。
開いた口が塞がらないとはこの事。

え、どういうこと?しかも他殺って、確かに殺されたけどそれは向こうの世界の話だし、犯人はウラシキだけど、ウラシキはこっちの世界では存在しないし…


「いやいやいや、」


向こうで死んだから、こっちでも同じように死んだって事?
いや、まあ百歩譲って連動してる事はあり得るかもしれない。
でもそれなら、私が向こうの世界に行った後も、こっちの世界には私が存在していたという事になる。
私の魂は一つだけど、身体は二つあった、って事?


「じゃあ今ここにいる私は、なに?」


訳が分からない。
仮に向こうとこっちで死んだ事になっているなら私はもう居ないはず。成仏できずにここに留まってしまっているって事なのか。
もしそうだとしても、意識や物を触る感覚が生きている時と同じでハッキリしている。
あ、でも幽霊になった人は今の私と実は同じような感じなのかもしれない。
聞いたことなんてないから分からないけど。


「あーもう分からん!」


神様の悪戯とは本当にあるものなんだな、ボルトの世界に入り込んで、いろんなキャラに会ってただウハウハと楽しんでいた裏で、こんな事になってるなんて、一体私になんの恨みがあるんだ神様よ。

テレビを消して、リモコンをダンボールの上に置こうとすると、ダンボールの蓋が少し開いている事に気付いて中を覗く。


「これ私の財布だ」


見つけた財布を開けて、なんとなく中を確認してみると、いつも通りの中身で。
ただ外側が少し薄汚れている気がして、これは遺留品なのかなと勝手に解釈。

こっちの私の最期は一体どういう感じだったのだろうと自分の事なのにまるで他人を思うような感覚に陥りながら財布をポケットにしまった。
持ってたってなんの役にもたたないだろうけど。


「…?!」


財布をポケットに忍ばせ、ベッドに寄りかかりながらこれからどうしようと考えていると、突然、玄関の扉が開く音が聞こえ、身体が硬直してしまう。

まだ自分の状況をどう説明するか一ミリも考えてないのに!
とりあえず隠れるか、いやでも隠れる所なんか…!

あああ、どうしようどうしよう、!なんて思っている間に、キッチンからこの部屋に繋がる扉のノブが動き、ゆっくりと扉が開いてしまった。


「…!」


開いた扉の方を凝視しながら、入ってくる人物を確認して、思わず息を呑む。
向こうの世界に行って、たまたま見た携帯に入ってい写真に写っていた人物、


「お母さん、」


紛れもなく、現れたのは私の母で。
座っていた身体を起こし、部屋に入ってきたお母さんに声を掛けるが、何の反応も無く、母は只々部屋を見渡し、少し涙を浮かべながら引越しの準備に取り掛かった。


「お、お母さん?」


声を掛けたにも関わらず、こっちを見向きもしない母を見て、思わず飛びかかりそうになった身体を制止させる。

まさか見えていない?私の声も、聞こえてもいない?

静かに、黙々と引越しの荷造りに取り掛かる母の背中に何度も声をかけてみるものの、やはり母からの返答は無く、認めたくなかった現実に頭が混乱した。




私、やっぱり死んでるんだ。