01

あれから数日、私は未だに木の葉の病院のベッドで暇を持て余している。

我愛羅君は私が生き返った後、ナルト君やシカマル君、それと中忍試験に一緒に来ていた砂隠れの人達に事情を説明しに行ってくれた。
それを聞いて私の病室にたまに来てくれる人達と喋ったりするのがここ数日の間での楽しみになっている。

ウラシキに刺された傷は生き返った時に無くなっていて、とうに元気モリモリなのだけど、過保護で心配性な我愛羅君率いるこっちの世界の住人達が、私をベッドからおろしてくれない。


「ひーまー、誰か来ないかなー」


なんにもする事がなくて、今日も誰かがここへ来てくれるのを只待っている私はいつになったら退院できるんだろうか。

我愛羅君は風影なので、すぐ砂に帰るんだろうと思っていたんだけど、私の退院許可が医師からおりるまで自分も木の葉にいると、カンクロウ君に全てを押し付けまだこの里にいる。
とは言っても私がいる病室には殆ど顔は出さずになんだかんだ忙しくしている様だった。



「失礼します」


コンコンと、ノックの音が聞こえたと同時に扉が開いて、入って来たのはシカダイ君。
私がこの病室に入院してから初めて来てくれたシカダイ君はなんだか少し照れくさそうな顔をしていて。
果物が入ったバスケットをベッドの横にある簡易的なテーブルに置いてから、イスに腰掛けてきた。


「これ、母ちゃんが持ってけって」

「うん、ありがとう。ねえ、バナナ剥いてよシカダイ君」

「え?あ、ああ。いいすけど」

「え、いやいや冗談だよ。なんなの良い子かよ」


バナナ剥いてもらうとかどんだけ重症の奴なんだよ、そもそもそんな重症の奴バナナ食べないでしょ。なんて冗談を言っていると、突然シカダイ君がごめんと謝ってきた。


「なになに、なんで謝るの?」

「いや、一番危険な目に遭わせちまったなと思って。ミツキ…俺の友達を庇ってさ。名前さん死んじまって、なんか俺、何にもできなかったな、って」


喋る度にどんどん表情が暗くなっていくシカダイ君は、木の葉の忍として一人でも死なせてしまった事に責任を感じているんだろう。

私からすれば、自分で飛び込んで行っただけなんだし、他の一般人を避難させてくれていたシカダイ君がそんなに責任を感じる事なんてないのに。


「でも私、生き返ったからね」

「…それには驚きました」


俺も死亡と判断された時その場に居ましたから、と。
我愛羅君がその後来て私の事を見た時もその場に居たらしく、あのいつも冷静で無表情の我愛羅君が、今まで見たことないくらい動揺して取り乱していたのを見て、なんだか申し訳ない気持ちになったとシカダイ君は話してくれた。


「我愛羅おじちゃんとかさ、影の人達は大筒木だったり、俺達下忍には敵わない奴と戦ってたんだから、一般人を避難させたりとか守ったりするのは俺達の役目だったはずなのに、それができなかったって、あの時思ったんです」

「うん」

「名前さんは、我愛羅おじちゃんの彼女だし、いつか、その、身内になるかもしれなかったのにって思うとさ、なんか居た堪れねえっつうか。なんて言ったら分かんねえけど…とにかく生きてて良かった、です」


そういえばシカダイ君には我愛羅君の彼女って事になってたな…。
いや愛してるとは実際言われたけど、只言われただけで私はなんにも言ってない訳だから、正直彼女でもなんでもないんだけど。

身内になるかもしれなかった人が死んで、実際自分の母の弟が取り乱してるのを見て相当落ち込んだんだろう。だから今日謝りに来たのかな。
そんな事、本当に私は全然気にしてないのに、ていうか、ここまで考えて落ち込んでるシカダイ君に嘘ついてるのって、なんだか気が引けると思って、シカダイ君になら本当の事言っても良いんじゃないかなって。


「あ、あのさ、非常に言いにくいん、だけど」

「なんすか」

「私我愛羅君の、彼女でもなんでもないんだよ、ね」


多分、シカダイ君とはこれからもなんらかの形で付き合う事になるだろう。なんせテマリちゃんの息子だし。
ずっと嘘をつき続けるのもやっぱり悪い気もするからと、私の事情を最初から一つづつ、話す事にした。


「私元々、この世界の人じゃなくて、ですね、」

「はあ、」


我愛羅君がシカダイ君より少し幼い頃に私の世界に来た事。
私の世界にはナルト君やボルト君が主人公の漫画ある事。
我愛羅君が帰ってしまった後、私がこっちへ来てしまった事。
そして、ウラシキにやられて死んだ後の事を全部話す。

シカダイ君はなかなか信じがたい様な顔をしていたが、話していく内になんとなくだが理解してくれたようで、最後には信じてくれた。


「…そんな事、あるんすね」

「びっくりだよね。あ、だから私こっちに来た時、我愛羅君だけは知ってて頼らせて貰ったんだよね。まあそれでこの事はあんまり言わないように、我愛羅君の恋人って事にしてたんだけど、」

「そうだったんすか」


なんかごめんねと最後に付け足すと、仕方ない事だし謝るなと言われ、少し暗い雰囲気に陥っていたこの空気を変えようと、テーブルに置いてある果物の中からバナナを取って食べる。
あ、美味しい。

シカダイ君も食べたら?と聞いてみるものの、どうやら彼はこれから修行をつけてもらうらしく、帰ると言い出した。


「また、名前さんの世界の話、聞かせてくださいよ。それと、我愛羅おじちゃんとの進展も」

「え、話聞いてた?恋人じゃないって」


イスから腰を上げながら、今までの話を聞いていたのかというような発言をしてくるのでバナナを食べていた手が止まって、シカダイ君の顔を見上げるとなんだかニヤニヤとしていた。


「我愛羅おじちゃんは名前さんの事、相当大事に思ってるというか、好きだろアレは。あとは名前さん次第っつーか、まあまた、色々教えてくださいよ。おもしれーし」


あれ、この子私よりかなり歳下だよね?
さっきまでのちょっとシリアス気味なめちゃめちゃ良い子のシカダイ君からマセガキに変化してるんだけど。

じゃあ、と後ろ手を振りながら病室から出ていくシカダイ君に、遅ればせながらありがとうと礼を言うと、扉の隙間から顔を少し出して、お大事にと言って扉を閉めた。


「私次第、かあ」


結構グサリとくる事言われたな。