08

さて、外に出て何か感じた事はあるかい?と片膝を立て座っている向かいの少年にラーメンを啜りながら聞いてからしばらく。
結局帽子も脱いでいない彼からはなんの返答もない。

帽子脱ごうねと手を伸ばしそれを取り去ると見事な無表情。
手に取った帽子をその辺に置き再びラーメンを口に運ぼうとすると無表情から音が漏れた。


「俺の住む世界とは明らかに様子が違っていた」

「…そうですか」

「…俺は、ある理由で里から忌み嫌われずっと一人で生きてきた。俺の生きていく場所、価値を奪おうとする輩を何人も殺し、そうする事で俺は生きている実感を掴み取ってきた。だがこの異世界の様な場所であるこの世界では俺は言わば雛鳥のような物、俺とこの世界の者とでは常識もなにもかも違うと見た。そんなところでお前を殺し、一人元の世界に帰ろうと情報を集めるどころか生きていくのも困難だろうと考える。」

「…う、うん、無理なんじゃないかなほんとに」


この子ほんとに10代そこそこの年齢なの?ていうくらい物分かりが良いというか…。
まあそこまで理解してくれて、私にそれを話してくれるという事はとりあえず出て行っちゃったりする事はなさそうだ。
言ってないけど我愛羅君の事を知っている人は何人もいるだろうから、そちらの方がパニックになってしまうのを私は避けたい。
こんなに可愛い我愛羅君を独り占めしたいとすこし思っているのは絶対内緒だ。


「俺が帰るまで、お前を利用させてもらう。だが妙な行動を起こそうとすれば俺はお前を殺す。」



……利用って。無茶苦茶だなこの子。しかもやっぱ殺すのかよ。
妙な行動って言われても私にとっては子供と一緒に住むことになっただけで、そんなこと初めてだけど大して今までの生活と変わらないだろうから殺される事はないだろうけど。

我愛羅君が私を利用すると言ったところで一緒に住む事は確定したので、私の生活のルールというかローテーションを言っておかないといけないと思いそのあたりも説明する。
仕事があるという事、だから四六時中一緒には居られないという事、
帰る情報を調べると言っても、我愛羅君一人で外に出たりするのはもう少しこちらの世界の事を理解してもらってからでないと私が不安という事。その辺の人を殺されても困る。


「私に出来る事があればなんでもするけど、まずは少しでもこの生活に慣れてもらわなくちゃ、ね。」

「……」




…さっきから何回も何回も思ったが、返事を、返事をしてくれ。頼む。
聞いていない事はないだろうが返事をしてくれないと不安だ。今の世の中返事ができないと苦労するんだぞ。
だが所謂狂気染みた凶器、我愛羅君に向かって返事は?!と大きく言う勇気は私には無かった。


…ああ、やっぱり不安。この先。