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こんなに大勢の偉い人たちの前で訳も分からないまま何で私は突っ立っているんだろう。



役所から帰ってきて執務室に戻るとそこにはカンクロウ君がいて、会議室に行くようにと我愛羅君に言っていて、それに軽く返事をした我愛羅君は執務室の扉を開けて出て行こうとする。

じゃあ私は部屋にでも戻って遅めの朝ごはんにしますかーと長い独り言を呟くと、お前も行くんだよと尻を叩かれる勢いで執務室から追い出された。

何で私が会議に参加しないといけないのと、悪態をつきながら我愛羅君の横を歩く。
後ろを振り向けばカンクロウ君も一緒に来るらしく私達に続いていた。


「何しに行くの?」

「おい我愛羅、説明してねえのかよ」


何で説明してないんだと言いたげな顔を、私たちの間に入り込んできて我愛羅君を詰めているカンクロウ君。
それに関して別に説明などいらないだろうと言う我愛羅君に、呆れた表情を見せていた。

一体何の説明なのか、私は何で普段入ることの無い、いや入ったことなんて無い会議室に風影と参謀と向かっているのかが謎すぎて、カンクロウ君でもいいから説明してよと言おうとした瞬間、会議室の扉の前まで来てしまって、結局、訳も分からないまま会議に参加することになった。
そして冒頭に戻る。


「風影様、カンクロウ、それと名前。席につけ」


我愛羅君に促されて会議室に足を踏み入れると、遅ぞと言いたげな視線があちこちから刺さって来た。
その視線の中から声がして、その主の方をチラリと見てみると見知った人物だった。
この人見たことある。
歳を取っていても面影が残っているその人は確かバキさん。

まじまじと、初めて会うバキさんを見てしまっていて、席に着けと言われた事に気づくのが一瞬遅く、何だと低い声で声をかけられハッとする。
一気に緊張感が増した気がして背中に冷や汗が流れた気がした。


「す、すみません」


どうやらあそこに座ればいいのかと、一つだけ開いた席に向かって足を進める途中、
バキさんや他の席についている上役の人たち何だろう人にサッと目を通すと、何とも重たい空気を放っていて。
緊張感を常に発しているこの人達は、これぞまさに忍者と言うような鋭い雰囲気を纏っていて、ただの一般人の私はそれに圧倒されてしまった。

すでに私の先を行って席についていたカンクロウ君と我愛羅君の間の席まで辿々しい足取りで何とか行くと、緊張しなくても良いと椅子を引きながら我愛羅君が言ってくれ、少しだけ安堵した。


「では始めよう。今回集まってもらったのは、風影様…我愛羅様から上役殿に申し出たい事がある為、と言う事です」


低く威厳のある声で進行役を勤めてくれるらしいバキさんの発言で会議が始まった。
それを聞いて、大きな円卓に座っている上役達から、ざわざわと疑問の声が浮かび上がる。

申し出とは何だ、風影はまた何かしでかすつもりかなど、小さい声ではあるが野次のような発言が耳についた。
いや一番訳わかんないまま座っているのは私だからと、心の中で独りゴチる。


「完結に申します」


バキさんの促しで、皆を呼んだ当の本人、我愛羅君がゆっくりと口を開いて、ざわついていた周りが一気に静かになった。


「何じゃ風影、申してみよ」

「はっ。私、我愛羅は、横に座っている名前を、先ほど妻に迎え入れました」


立ち上がって、いつもとは少し違う口調ではっきりと物申した我愛羅君に、一同が目を剥いた。それは私も同じで、まさかこれを言うために会議を開いたって言うのかと、私の世界じゃ考えられないシステムに驚くしかなかった。

目の前にあるテーブルに置いていた両手の甲をただジッと見つめていると、不意に多方面からの視線を感じて顔をあげる。
そこにはいろんな思想や考察が混じった視線があって、上役の人たちは口々に、どこの馬の骨だとか、あからさまに私を蔑むような発言をしていた。
人よりは多少負けん気と根性が座っている私でさえ、どうして良いのか分からなくなるくらいに手のひらには汗が滲んでいた。


「名前、上役殿に挨拶を」

「え?!」


突然のとんでも発言に、思わず大きい声が出てしまって、すぐさま口を手で抑えるが、どんどん不安な表情になって行くのを感じると同時に、カンクロウ君が説明云々言っていたのはこの事かと、立ちながらこっちを見下ろして来る我愛羅君に視線で不満を伝えた。
が、今この状況で嫌だと言える訳もなく、もうどうにでもなれ精神で、大学時代に受けた圧迫面接を思い出しながら喋ることに決め、ス、と立ち上がって上役達を見据えた。


「……私、名字名前と申します、もう旧姓になりますが。突然私の様な娘が、風影様の妻になったなど、皆さん、意見等あるかもしれません。私は優秀な忍でも、名家の娘でもありませんから。ですが私なりに、妻として、生涯風影様を支えて行きたいと思って……いえ、支えていくと心に決めております。ですので、どうぞ宜しくお願い致します」


なるべく丁寧に、ゆっくり、だけど簡潔明瞭に挨拶を終わらす。
最後に腰から深くお辞儀をする事も忘れない。
大学時代に沢山面接を受けてきた事が、まさかこんなところで役に立つなんた思いもしなかった。

下げた頭を元に戻し、背筋を伸ばして再度上役達を見据えると、いくらかの人からは、なかなか言葉遣いも良く、良い教育を受けてきたのかなど、褒め言葉も伺えて、とりあえず何本も張り詰めていた緊張の糸が、全部とまではいかないが少しだけ切れた気がした。
あまり得意ではない丁寧な言葉遣いも、ここではうまく使えた様だ。


「だが、風影。以前大名様の姫君との縁談を私が紹介してやっただろう。その返事もなく突然妻を紹介するだの、なかなか小生意気な事をしてくれるな?」


私たちの真正面に座っていた、一番偉そうに机に肘を付いている男性が、大名様にどう謝罪を述べれば良いんだと、嫌味を含めながら言ってきた。
うわあ、超ド級でめんどくさいやつじゃんコレ。返事してからこの会議開いてよ我愛羅君…

この場をどう乗り切ろうか。私が考えても何も意味はないけど、我愛羅君の事だ、素直に謝罪して、大名様には自分から断りを入れるとかなんとか言って、波風立てずにこの場をしのいでくれるだろうと、思った矢先。


「私は以前から、縁談は全てお断りしています。必要ないと申していますのに、勝手に紹介して来るものに返事など必要でしょうか」

「ちょ、我愛羅君…!」


まるで反抗的な我愛羅君に驚いて思わず制止の声を小さくあげるが、遅かった様で。
目の前の上役の顔がどんどん歪んで行って、完全に怒らせたと、誰が見ても分かる怒気を含んだ表情になった。
この上役、めちゃ怒ってるじゃんンンンン。
とんでもない事してくれたなこの狸めええ…!


「風影!お前は誰のお陰で里が安泰していると思っている!お前ら影はワシら上役の言う事だけ聞いていれば良いのだ!口答えなど到底許せん!分かっているのか!」


バアン!と大きな音を立てて目の前の男が机を叩いたと思ったら、我愛羅君に怒声が浴びせられる。
なんたる面倒臭さ…。風影って大変なんだねと、まるで他人事みたいに考えてしまった最中も、隣にいるこの問題の発端と行っても過言ではない隣の彼に浴びせられる怒声は鳴り止まない。
そんな中、やはり元々が人柱力であっては、と言う様な明らかに蔑んだ声が聞こえ、途端に我愛羅君と、カンクロウ君からも殺気めいた淀みが感じられ、今にも何か言い返しそうな、そんな空気が漂ってきた。

ああもう…!

きっとバケモノだったからとか言われて頭にきたんだろう。我愛羅君よりも先に口を開こうとしたカンクロウ君を制止して、私は目の前の机にさっき男がそうした様に大きな音を立てて両手をつき、更に頭も擦り付けるギリギリのところまで深く下げ、大きく息を吸った。


「申し訳ございませんでした!!」