許せる・許せない・許せる
「ちっと汚えけど、今日はここ使ってくれ」
「あ、ありがとうございます」
案内されたのは火影様の部屋。
確かに結構散らかっていて、机の上は一体なんの書類なのか、紙が沢山散らばっている。
家でも仕事してんのかな。
自分の持っていた大きくもない荷物を部屋の隅に置かせてもらって、いつの間に用意したのか、手渡された掛け布団をそのままソファへ置いた。
「すまねえ、ここしか無くてよ。ソファでもいいか?」
「構いません。何から何まで、ありがとうございます」
「そんな固くなんなって。元はと言えば俺が引き止めたから帰れなくなっちまったのもあるしな」
頬を指で掻き、目を細めながら謝られる。
でも結局、火影様と会わなくても、もしかしたら雷車には乗れなかったかもしれないし、そもそもお金を持っていなかった私が悪いに決まっている。
こちらこそ本当にすみませんなんて返事をすれば、お前ってば謝ってばっかだなと笑われた。
「まあ、ゆっくりしてくれってばよ。…その、あれだ、なんでお前が忍と関わりたくねえってのかは聞かねえけど、あんま抱え込むなよ」
そう言いながら火影様は部屋から出て行く。
最後にヒョコっと扉の隙間から顔を出して景気の良い笑顔を見せて、そのまま扉を閉めた。
…なんか、あったかい人だな。
ぼう、と閉められた扉を見つめながら、フとそんな事を思うが、
「暖かい人」なんて言葉は合っているんだろうか。
良い人、とか、優しい人なんて言葉が正解なんじゃいかなんて、どうでも良い事を考えて、でも火影様は本当に太陽みたいな人だから、暖かい人という解釈でいいや、と結論づけた。
…
それから部屋で一人、ただ何をする訳でも無くソファに座っていると、コンコンと控えめなノックの音が聞こえてきて、返事をすれば扉の向こうから、奥様だろう「お風呂どうぞ」と、これまた控えめな声が聞こえてきた。
そして本当に、何から何までという感じで、ありがたくお風呂に入らせて貰ってから、奥様から渡された部屋着に着替える。
夜もすっかり更けてきているので、今日はもう寝てしまおうと、一度リビングへ行き、まだ起きている火影様と奥様へ挨拶をしてからまた部屋へ戻った。
「…なんか、いい家族だなあ」
電気を消し、ソファへ身体を沈めてから、借りた掛け布団に身を包む。
こんなにも忍と接したのは産まれて初めてかもしれない。
両親の事もあり、ずっと「忍者」という人を嫌ってきたけど、火影様だったり奥様だったりと触れ合っていると、嫌っている事を忘れてしまいそうな感覚に陥る。
このままずっと木の葉に居たら、もしかしたら私の暗い、憎しみが混じった感情も消えて無くなるかもしれない。
別に砂隠れの里が悪い訳じゃないし、木の葉に引っ越したいとは思わないけど、なんとなく穏やかな気持ちでいられるこの場所にはまた来たいと思う。
「…今なら、全部許せちゃうかも」
段々と落ちてくる瞼に抵抗もせず、いつもより良い気持ちになりながら私は眠りについた。