迎えに来てくれたのは
「おっきろー!!」
「んう、……え?!わ!!」
迎える予定のなかった木の葉での朝。
疲れてたのかぐっすりと眠っていたのに、私は叫び声で無理やり起こされ、目を開ければ目の前にはボルト君のドアップ。
「び、びっくりし……」
「いつまで寝てんだってばさ!もう昼だぜ!我愛羅のおっちゃんも来てるし早く来いよ!」
「…………は?」
突然大声で私を起こして、言いたい事だけ言って、出て言ってしまったボルト君の影を目で追うが、どういうことだ。
全然、全く、頭がついて行かないんですけど。
我愛羅のおっちゃんって、風影様?だよね?来てるってどういう事?
「と、とりあえず起きないと…」
まだ眠い目を擦りつつ、ボルト君の大声で覚醒して来た頭をフルに回転させてから、昨日着ていた自分の服に着替える。
火影様が昨日、「帰る手段は俺がなんとかしてやる」とかなんとか言ってたけど、まさか風影様に迎えに来させたって事?
いやいや、ありえないんですけど。
ていうか風影様も引き受けるなよ。里長でしょうが。
素早く着替え、貸してもらっていた部屋着と布団を丁寧に畳んでから、皆がいるだろうリビングへと早足で向かう。
その途中で顔だけ洗わせてもらった。
本当は寝癖だって直したいが、里の長を待たせる訳にも行かないと、変な緊張感の所為で飛び跳ねる髪もそのままに、リビングの扉を開けた。
「お、おはようございます、」
扉を開けて、チラリとリビングの様子を伺ってから朝の挨拶(もうお昼だけど)と共に頭を下げる。
まさかとは思ったがやっぱり風影様はそこに居て、何やら美しい姿勢で椅子に腰掛けお茶を飲んでいる。
え、優雅かよ。
「おはよう。ナルトから聞いた。災難だった様だな」
「あ、えっと、…」
「おー、やっと起きたのか。待ちくたびれたってばよ」
ひょこっと部屋の奥から顔を出して来た火影様にも挨拶をし、部屋着と布団はソファに置いている事を伝える。
ボルト君は私を起こしてから、すぐさま出掛けて行っており、奥様とヒマワリちゃんは買い物に行っているらしく、リビングにいるのは風影様と火影様だけ。
一体風影様はいつ来たんだ。どれくらい待ってたんだ。
もっと早く起こしてくれて良かったじゃないか。
ていうか火影様、風影様を呼ぶなんてそんな事良いのか。
「では、起きて直ぐの所悪いんだが、…直ぐ出られるか?」
「え、あ、は、はい…?」
相変わらず、リビングの扉の前で突っ立っていると、持って居たグラスを静かにテーブルに起きながら風影様は言ってくる。
それを聞いて、実は結構待たせたんじゃ、なんて考え、慌てて謝罪をすると「気にするな」と優しく言われた。
…でも結構待ってたって事だよね。なんかごめん。
「ナルト、うちの里の者が世話になったな」
「いーっていーって!また砂に行った時、飯でも奢ってくれってばよ!」
「ああ。その時は名前の店に行くとしよう」
火影様と風影様のやりとりを眺めがら、そういえばと寝癖をコソコソ直していると、名前を呼ばれたのでハッとする。
まさか覚えてくれてるなんて思ってもみなくて、チラリと風影様の方を見れば微笑まれた。
その微笑みはだめだ。
風影様に迎えに来させてしまった事もあって、ただでさえ変に緊張しているのに、そんな風に微笑まれたら余計に心臓が早くなった気がして、思わず視線をそらした。
「お前、名前ってのか!そういや名前聞いた時教えてくれなかったもんな〜!名乗る必要はあるのか、ってよ!」
「や、やめてください、」
何気にからかってくる火影様を余所に、立ち上がってこちらへ近づいてくる風影様の足元を目で追いかければ、不意に頭に暖かい重さが乗っかってきた。
なんだと思い顔をあげれば、風影様は私の頭を撫でていて。
それを理解した瞬間、全身が硬直して、顔には熱が集まって来た感覚に陥った。
「…っ、」
「さあ、砂へ帰ろう」
低いのに、耳の奥まで響いてくる様な声が心臓を鷲掴みにしてくる。
火影様には感じなかったこの感情は一体なんだと、跳ねる心臓を押さえつけながら考えるてみるも分からない。
どきどきと、ただ頭を撫でられただけなのに、この前店を訪ねて来てくれた夜から抱きつつあるこの感情は、もしかして、もしかすると………。
「ん、はいこれ。」
「へ、」
自分でも信じられない感情の事を一人考えていると、突然目の前に布で包まれた何かを、火影様に差し出される。
訳も分からず受け取り、「なんですか」と問えば、「弁当」との返事が返って来た。
「ヒナタが雷車の中ででも食えってさ!」
ニッと歯を見せて笑う火影様に、なんだか少し照れつつ頭を下げて礼を言う。
昨日も思ったけど火影様は、いや、この家族は本当に暖かい。
ボルト君の大声はもう勘弁したいけど。
そして、見送ってくれる火影様に、皆によろしく伝えてくださいと言いながら、風影様と共に家を後にする。
駅までの道中、隣を歩く風影様に、木の葉の住人達も声をかけて来ていて、
それに嫌な顔一つせず丁寧に挨拶をしている姿を横目で見ながら、他里の人からもこうやって慕われてるんだなあなんて思い、自分の中での「忍者」の見方が少しづつ変わっていっている様に思えた。
だけど私は、
知らなきゃ良かったと、後に思う羽目になってしまう事をこの時は考えもしなかった。