自分の意思
ガタガタと、雷車の揺れる音が響いている。
結局サスケさんとは、お土産を買う時間もなくなってしまう程、立ち話をし、時間も迫って来ているしと、私はサスケさんと別れ雷車に乗り込んだ。
"アイツが、ナルトが、俺を止めてくれた"
さっきまで話していたサスケさんの、最後に言った言葉が頭をぐるぐると駆け巡った。
そして、更に聞いた風影様の事。
幼い頃の事、人柱力として里から恨まれていた事は以前風影様の口から聞いた。
其の所為で自分も里を恨む様になったと、涙を流しながら言われたのは今でも鮮明に覚えている。
だけど風影様は、それ以上の事は言っていなくて。一体どうして里の為に尽力をしようと心を入れ替えたのか、其のきっかけはなんだったのか、どうして風影になったのか、それを私は密かに疑問視していた。
サスケさんの復讐心は固いもので、誰にも止められる気配すらなかったというのに、最後の最後で火影様に救われたと言っていた。
風影様も、きっとサスケさんと同じ。周りを見ようともせず、生きて来たんだろう。そんな人がどうして、今の様な優しい人になったのか。その疑問が今日、サスケさんの言葉でやっと分かった。
"あいつは、ナルトは、どんなにひどい事をされても、決してそいつを見捨てない。
復讐をすれば、また復讐が生まれる。さっきお前に言ったこの言葉は、あいつからの受け売りだ"
"そんなあいつは、俺も、俺と同じ様に世の中を恨んでいた我愛羅も、救ってくれた"
「……我愛羅も、あいつに救われた…かあ」
火影様はやっぱりすごいな、笑顔が太陽見たいだなんて思っていたけど、あの人は存在自体が太陽だ。
どんなに暗い場所にだって、光を与えてくれる。
「私にも、できるだろうか…。風影様を照らしてあげる事が」
さっき、自分で許したいと火影様に豪語しておきながら、幾分も経っていないのに、もう弱音が出る。
私も、火影様のように風影様を救ってあげる事ができるんだろうかなんて考えて、悩んでしまう。
それでも風影様にはもう、泣いてなんて欲しくない。
自分が強くあれば、風影様も、他の皆も、自分自身だって悲しくなることなんて無い。
「風影様に…言わなきゃ、な」
うじうじなんてしてられない。
火影様にも、サスケさんにも、助けて貰って、勇気は充分に貰ったはずなんだ。
砂に帰ったら、明日にでも風影様に会いに行こう。
私が前に進まなきゃ。
……
「え、いないんですか」
とにかく誰かにすがりたい気持ちで木の葉まで行って、そして砂へと帰って来てから次の日、私は早く早くと急く気持ちを落ち着かせながら風影邸に向かった。
あの日、風影様が私に過去を告白して来てから数日、突き返す様に「帰ってくれ」と言ってから、風影様とは一度も会っていない。
きっと、あの人は優しいから、私の事でまた悩んでるんじゃ無いだろうかなんて、確証も無い事が頭を巡って、私が決めた「許したい、仇は取らない」という事を早く伝えたかった。
だけど、早足で向かった風影邸を前に、監視の人に「風影様はいない」と言われ肩を落とした。
どうやら火影様が言っていた中忍試験は、初となる忍五大国合同試験だったらしく、風影様はもちろん、他里の影様達も、木の葉に出向いている様だった。
早く伝えたかったのに。
そう思う気持ちを押し込んで、監視の人に礼を述べつつ踵を返す。
そもそも私はどうしてここまで風影様の事になるとこんなにも気持ちが急くんだ、なんて、一人風影邸から自宅へ帰る道中、改めてそんな事を考えるも、すぐに答えは出た。
私は、きっともう仇である事を超えて、風影様が好きなんだ。
そんな事、多分ずっと前から感じていた。
だけど好きである以上、私の所為で苦しんで欲しく無い。そう思う気持ちが、私を木の葉に走らせ、今でさえ、早く風影様に許すという事を伝えたいと、私を駆り立ててるんだ。
もう一度、いつの日か見たあの柔らかい笑顔が見たい。
そして火影様やサスケさんに背中を押してもらった事を無駄になんてしたくない。
私は密かにそんな事を思いながら、たどり着いた自宅の扉に手をかけた。