足が痛くてなんてこった

「ん、う……痛った、」



あれ、ここどこだ。
確か中忍試験に行って、一服しに行って、それから……。

そうだ。なんか危ない感じの白い人がこっちを振り返って……
え、その後どうなったんだっけ。


まだぼんやりする意識の中で、自分がここに来る経緯を探ってみるものの、白い人がニヤリと不敵な笑みを浮かべたのを最後に、そこからの記憶がない。
そして片方の足が痛い。尋常じゃなく痛い。

この痛さは一体なんなんだと、寝ている身体を起こそうとしてみるが、まだ頭がぼんやりしている所為なのかうまく身体を起こせない。
頭でも打ったかな、なんて、ゆるゆると手を頭に添えてみれば何やら包帯の様な物が巻かれている。
ああ、なるほど。
私は多分、あの白い人に何かされたのか。
そして誰かに助けられて、ここに居る。

ここはきっと病院だ。薄暗くて、電気もろくに点いてないみたいだけど。
窓の外も暗い様で、となるとかなり眠ってしまってたんだなと解釈。


…風影様は、無事なんだろうか。

私が見たあの場には、火影様と、ボルト君、一瞬しか見てないから本人かどうかは分からないけど多分サスケさんとメガネの女の子もいた。
だけど風影様はいなかった。

もしかして、火影様を残して、他の影たちみんな、あの白い人に一瞬でやられちゃったとか…?


「…うそ、」


嫌な予感を少し感じてしまって、そこからどんどんネガティブな思考が頭を埋め尽くしていく。
頭が真っ白になった気分で、同時に酷く痛んだ気がした。


もしかして、死んじゃったとか…?
嘘でしょ。なんで。
私言いたい事あったのに、言えずじまいになっちゃうの?
折角気持ちの整理がついて、これからって時なのに、嘘でしょ。




「………はっ、」


わ、私は何考えてるんだ。
幾ら何でもネガティブ過ぎる。まだ死んだって決まった訳じゃないのに。
風影様も、他のみんなも、絶対無事に決まって………、



「……」


だめだ。こんな薄暗い所に一人で居るからネガティブな思考にどんどん支配されるんだ。
とにかく、この病室から出て誰かに聞こう。一体なにがあって、今どうなってるのか。

痛む足とぼんやりする頭に渾身の力を込めてなんとか起き上がり、ベッドから這い出ようとするが、いかんせん身体に力が入らない。
今までの人生、大きな怪我や病気をした事が無い故、こんな経験は初めてだった。


「…だめだ、」


全然力が入らない。
今すぐにでも外に出て風影様を探したいのに
、それはどうやら叶いそうにもなかった。

諦めざるを得ない状況に仰向けのまま天井に向かって盛大な溜め息を吐いた時、何やら扉の向こうで話し声が聞こえる。

誰だ、と、扉の方へと視線を向けて見るものの、曇りガラスがついた扉の所為で、こちらからは外に誰がいるのかは分からなかったが、きっと看護師か何かだろう。

そう思い視線をまた天井に向けるや否や、扉が開く音と共に、聞き慣れた声が私を呼んだ。


「名前、気がついたのか」

「…!」


声が聞こえた瞬間、光の速さで視線を声の主の方へと移動させ、そのまま私の目はこれでもかというくらい見開いた。


「か、風影…様」


ついさっき、今しがた、今の今まで考えていた、直ぐにでも会いたかった姿がそこにあって、思わず寝そべったままの身体を起こそうとする。


「あ、う…いたたた、」

「…無理するな、そのままでいい」


足の痛みに顔が歪み、結局上半身すら起こせなかった私に向かって、柔らかく制止の声をかけてくれた風影様。
本当は今直ぐにでも起き上がって、無事で良かったと言いたかったけど、なんせ身体が言うことを聞かない為、私は風影様の言葉に甘えさせてもらう事にした。


「すみません、寝たままなんて…」

「いや、」

「ご無事で、良かった…です」

「…ああ」


近くにあった椅子に腰掛け、上から見下ろしてくる風影様。
本当に無事で良かったと心から安堵した後、暫しの沈黙が流れて、私は思い出した様に「伝えたい事」を言おうと口を開いた。


「あの、昨日の夜…公園で言ったこと…なんですけど」


昨日、夜の公園でばったり風影様に会った時、中忍試験が終わった後改めて言いたいことがあると私は言った。
どういう結末で試験が終わったかなんて私には分からないけど、風影様が今ここにいるという事は試験は既に終了しているんだろうと踏んだ私は、今言わなきゃと、よく分からない使命感みたいなものに苛まれ、視線を風影様へと向けた。


「ああ。俺に、何か伝えたい事があると…言っていたな」

「は、い…あのですね、えっと」

「……名前、すまないが今は、」



言われた所ではっとした。
きっとあの白い人事件の後で風影様も疲れてるんだ。
私みたいに怪我した人だって沢山いるかもしれないし、今、私情で時間を割くわけにはいかないんじゃないかと咄嗟に思った私は、慌てて謝罪の言葉を向ける。

だが風影様は、謝るなと一言私に投げた後、信じられない事を口にした。


「ナルトが連れ去られた。俺達はそれを追う」

「え?!」

「死に行くつもりは無いが、行く前にお前の様子をと思ってな。来させてもらった」


なんてこった。
火影様が連れ去られてたなんて。

思いもよなかった出来事に、唖然とする私の頭には、火影様の優しさがフラッシュバックして、一瞬で涙が溢れそうになった。


「…火影様は、無事なんでしょうか」

「心配ない。サスケが、アイツはまだ生きていると言っている。俺達は必ずナルトを連れ戻す」


その後、全てが終わってからお前の話を聞かせてくれと言った風影様の目はいつにも増して真剣そのもので。
一人でその危険なところへ行くのでは無いんだろうけど、危ない事には変わらない。
火影様の事は助けて欲しい。だけど誰かが死ぬかも分からない、そんな所へは行って欲しくない気持ちが溢れかえるものの、私が止めた所で風影様は行くんだろう。


「…っ」


必ず火影様を連れて、全員で帰って来て欲しいと、もう流れ出てしまった涙を拭う事無く、風影様に視線を向けた。


「絶対…帰って来てください、」


じゃなきゃ許しません。だなんて、一体何に対してなのかは自分でもよく分からないけど。
溢れてきた涙が重力の所為で耳の方まで流れてきて冷たく感じた。

風影様はひと息ついから立ち上がり、少し目を細めてまた私を見下ろしながら、今度は酷く柔らかい表情で


「もちろんだ」

そう言って部屋から出て行った。