勇気はまだ留守にしています

「えっと、東堂くん……? 私、歩けるよ?」
「それは知っている。離したら逃げるだろう?」

 東堂くんの言葉に返事をしようとした口から言葉が出る事はなく、沈黙が肯定をした気がした。

「俺、何かしたか?」

 貴重な仲間と仲違いは御免だと言う彼に東堂くんの所為ではなくて、あくまで自分の問題だと伝えると少し困ったような寂しそうな顔をして「そうか」と言って下ろしてくれた。
 なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになっていると仕事モードになったらしい彼が任務の詳細と私に担当して欲しい事を簡単に伝えてくれた。指示がわかりやすい。なるほど、在学中に一級になっている理由が少しわかった気がする。
 基本的には東堂くんが相手をしてくれるらしい。私は東堂くんが撃ち漏らした呪霊を祓うだけでいいみたいで一安心しながら、なんでこんなに親切なのにモテない(どころかウザイ人扱いされている)のだろうかと不思議に思ったが、彼の高田ちゃん以外に向ける温度は低くて。そのせいかと思うと勿体ないようなありがたいような悲しいような気分になった。

 ◆

「花子、それでラストだ」
「はいっ」

 思った以上にハイペースにこちらへ来る呪霊を次々と祓う。ハイペースだけど、それが出来たのは東堂くんが予め呪霊の体力を大幅に削ってくれているからに他ならない。
 というか、祓いながらこれ私いるか?と思ってしまった。それくらい東堂くんは凄かった。

「やっぱり一級って凄いねぇ」
「そうか? 花子も来れるだろ」

 東堂くんがキョトンとしながらそう言うが、私は一級になるにはまだまだ力不足だろうし、20代の内になれるといいな、とぼんやり考える。

「一級になったら東堂くんに並べるのかなぁ。いやでも、その頃には東堂くん特級なってたりするか…?」
 一人でブツブツと考えていたら東堂くんに優しい顔で頭をポンポンと叩かれた。……その顔は反則だと思う。
「今日だって並んでただろう」
「……それもそうか」

 そういう意味じゃないのだけど、きちんとした意味を伝えるとこの感情も伝えることになってしまいそうで。まだこの関係に浸っていたいし、アプローチするのは一級になってからにしようと心に決め、東堂くんがご飯を食べに行こうと言ったのでスマートフォンで近くにある美味しそうなお店を探す。

「……あ、メイド喫茶ある」

 横目で東堂くんを見るけど、特に興味がなさそうなので任務が終わったことと食事にすることを補助監督に連絡をしてから無難そうな喫茶店に行くことにした。
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