あなただけのアイドル
……まぁ、任務より先に高田ちゃんの次の現場で会う方が早いだろうけどと笑ったら東堂くんも笑ってくれた。
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いつも気合を入れて高田ちゃんのライブや握手会に参加しているが、別の目的も出来た以上、もっと可愛くしておきたいと思うのは女の子なら誰しも思う事だろう。
寮に帰った私は次のライブと任務の日にちを確認し、ライブ前に美容室の予約を入れた。その後で野薔薇ちゃんを連れて買い物に付き合ってもらった。
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私の言った通り、任務で東堂くんに会う前に高田ちゃんのライブに行くことになった。約束をしていないが、この日の為に任務を出来るだけ調整しているのはお互い様だろうし、今日も東堂くんは来るはずだ。
髪を巻いて、野薔薇ちゃんと選んだ服を着て、メイクもネイルもバッチリした私の今日の格好は野薔薇ちゃんからのお墨付きだ。
高田ちゃん以外興味ない東堂くんの事だから、他の人の些細な変化に気付かないかもしれない。でも、最近毎日のように連絡を取り合っているからもしかしたら、なんて期待してしまう。
そんな事を考えていたら声が掛かった。
ただ、東堂くんではないと無視を決める。私だって高田ちゃんと女の子以外で興味があるのは東堂くんだけだ。他の男は一部の親しい人を除いて嫌悪の対象でしかない。
そんな私の態度が頭にきたのか乱暴に腕を掴まれたので、文句を言ってやろうと振り返ったら「……花子?」と声が掛かった。その声は私の求めていたもので、自然と口角が上がる。
一方、私の腕を掴んでいた男はどう見ても体格で敵うはずもない男が私の名前を呼びながら近づいて来て分が悪いと思ったのか一目散に逃げ出した。
「大丈夫か?」
「大丈夫。ありがとう。助かった」
恐らく東堂くんも私一人で対処出来たであろう事はわかっている筈だが、それでも助けてくれたのは嬉しい。
「今日はやけに気合入った格好だな。他にも予定があるのか?」
……気付いてくれた。
嬉しさから顔がにやけそうになるのを両手で隠し「愛する高田ちゃん達に会うから」と言って笑う。"達"と言ったけど、誰とは言ってはいないから大丈夫だろう。
私の言葉に一瞬キョトンとするが、すぐに口角を上げて笑う。何だろう、嫌な予感がするけどそれ以上何か言われる訳ではないから私も口を噤む。
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無事にライブと握手会が終わり、さあ帰ろうと時間の確認の為にスマホを見ると東堂くんから連絡が来ていた。
どうやら合流して食事にでもという事らしい。オシャレした甲斐があったなと電話をしようとした時に肩を叩かれ、驚いて振り返ると東堂くんがいた。
「……びっくりした」
「悪い悪い」
笑いながら「行くよな?」と言われて頷く。
それを見て片膝ついて「お手をどうぞ」と言われ、また驚いて固まるが差し出された手に自分の手を重ねた。
「どこに行く?」
「もう決めてある」
エスコートは任せろと言われたので任せることにした。