敬愛か独占欲か

「好きだよ」

 私はちゃんと笑えているだろうか。それはわからないが、きちんと悟さんの目を見て話せているから大丈夫だろう。
 私の答えに箸を落としそうになっていた悟さんであったが、持ち直すと抱えて膝の上へ座らされた。
 そのままの姿勢で私にも寿司を食べさせてくるから器用だと思う。

「それなら良かった」
「両思いになった所で何かが変わる事ないよね」
「そう? 恋人同士にならないと出来ないこともあるよ」

 耳元でそう言う声がとても甘くて、そのW恋人同士にならないと出来ないことWを想像して顔が一気に赤くなる。それを見た悟さんがにっこり「何考えてるの〜? えっち」と笑う。

「……悟さんの方がエッチでしょ」
「男はみんな狼だからね」
「悟さんも?」
「どう思う?」
「狼……かなぁ。でも、私に手を出すなんてことしてないよね」
「そりゃあ、気になる子に手を出して嫌われるなんての嫌でしょ」

 ……悟さんでも嫌われる事を恐れることがあるんだと驚くと「僕でも躊躇うことあるからね?」と心を読まれた。眉根を寄せると「花子は思った事がすぐ顔に出るからね」と言われたので思わず顔を両手で隠す。

「はいはい、その手を退けないと食べさせられないよ」

 その言葉に思わず両手を退かすと満足そうに悟さんが口角を上げ、触れるだけのキスをされたと思うと何度も角度を変えて啄む様なキスをされた。息をするのもままならなず、顔が離れた時には肩で息をしていた。

 ◆

 食事を終えてデートをしようと思っていたが、キャーキャーと女の人からの視線が痛かったし、両思いになったからといって婚約指輪を買いたがっていた。
 その婚約指輪のダイヤは大きいしカット方法とか店員と話をしているのを聞いて無理だと「すみません」と言って早々に店を出てしまった。

「花子? どうした? 気に入らなかった?」
 気に入らないというか突然過ぎて驚いているというか、自分の気持ちなのにぐるぐると頭の中で回転して答えが出ない。
「いや、そうじゃなくて。最初のプレゼントはもっと実用的なものがいいというか、いやでも沢山の物をプレゼントしてもらっているから最初ではないのか……?」
「何を言いたいのかなんとなくわかったけど、花子が僕のものだって他の奴らに主張するのは指輪が一番でしょ」
「だからってそんな高いものじゃなくても良くない!?」
「安いよりいいでしょ。適正価格だよ」
 いい笑顔で言われると断る言葉が思い浮かばなくなる。
 それなら……と承諾すると早速店へと戻り次から次に注文をつけて満足そうに出来上がりの日を聞いて店を後にした。

 店を出ると自然と手を重ねられ、そのまま悟さんの口元へと移動し薬指を思い切り咬まれた。痛くて顔を顰めると愛おしそうにこちらを見て「指輪が来るまでこれで我慢してね?」と歯形のついた手を掲げたのだった。
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