ピリオドを打つ
「お誕生日おめでとう」
そういえば今日が誕生日だった気がするが、よく覚えていない。自分でも覚えていない誕生日をよく覚えているなぁと感心しながら流れるようにエスコートされてリビングへ向かうと綺麗に飾られた部屋に美味しそうな料理が置いてあった。
「張り切って作っちゃった」
「……ありがとう」
「どういたしまして。お腹空いてる? 食べよ」
悟さんの言葉に頷いて椅子に座るとグラスに飲み物が注がれ、向かいに彼が座った。
誕生日を誰かと祝う日が来るなんて思わなかったなぁと思いながら料理に舌鼓を打つ。「美味しい」と伝えたら「良かった」と返ってきて彼が作ったものだということがわかる。悟さんって本当に出来ないことがないらしい。
会話を楽しみながら食事を終え、二人でのんびりソファで映画を見ていると悟さんが席を立った。
「花子もココアでいい?」
「ん、甘さ控えめで」
「えー、偶には一緒に甘いの飲もうよ」
「悟さんの甘過ぎるんだよ」
そう言って笑っていると悟さんが戻って来て「はい」とコップを差し出してくれたので受け取る……と、違和感に気付く。
「うそ……」
いつの間にか私の左手薬指には指輪がはめられていて、思わず悟さんの方を見るとにっこりと笑われた。
「過去は変えられないけど、これから先の人生は全部僕に頂戴」
語尾にハートが付きそうなくらい甘い甘い言葉に無意識に首を縦に振ると彼は満足そうに笑った。
仕事とか家族とか、彼の事はまだまだ知らないことが多いけど多分私はこの人から逃げ出す事は出来ないし逃げ出そうとも思わないだろうという確信めいた何かがあって。それはきっと彼もそうなのだろう。
「私は一緒に居てくれたら、それでいいや」
「欲がないなぁ。ま、そんなとこも好きなんだけど」
突然始まった同棲がこんな結末になるなんて思いはしなかったけど、これはこれでいいのだろう。
「新婚旅行どこ行こっか」
「その前に婚姻届出さないとでしょ」
「もう出したよ」
「は……?」
「だって花子が僕のプロポーズを断る訳ないでしょ?」
「いや、そうかもしれないけど。犯罪だし一緒に書くのが楽しいんじゃないの?」
「んー、楽しそうだとは思うけど万一ってこともあるし? 既成事実って大事でしょ」
「……私プロポーズ受けたのが間違いな気がしてきた」
「え、ごめん。機嫌直して? そうだ、明日気になってるって言ってたお店行こ? ね?」
そんな事で嫌う訳ないのに慌てる悟さんが可愛い。本人に言ったら倍返しされるから言わないけど。
「花子.を世界一幸せに出来るのは僕だけなんだから」
ドヤ顔で言っているのにカッコイイから顔が良いって素晴らしい。
「幸せにならなかったらあの世で呪うから」
私の言葉に一瞬だけ目を丸くして、無問題だと笑う彼に口付けを落とす。
彼の言う通り私はきっと世界一幸せな女になるのだろう。