お礼はデート(仮)
特にドレスコードが必要なわけではない、少しオシャレで女子が好きそうなカフェの名前が出てきた時は驚いたが、きっと家入さんに聞いたのだろうと結論付けてから着ていく服を決めるためのプチファッションショーを部屋の中で開く。とは言っても必要最低限しか持っていないからすぐ終わった。
◆◇
「──っ、すみません。待ちましたよね?」
他に寄りたいお店があった為に早く寮を出て、思ったよりも早く買い物が終わったので待ち合わせ場所に着いたのが待ち合わせの時間の三十分前で、流石に今到着したと送るのは憚れたので携帯でゲームをしながら待っていると突然肩を叩かれ、そう言われた。
「そんなに待ってないから大丈夫だよ」
「次からはもう少し早く出ますね」
夏油くんの言葉に次があるのかと思わず目を丸くしてしまうと彼は目を逸らした……が、頬が若干赤らんでいるのを見ると私だけが意識していたのではないのだろうか、なんて期待してしまう。
「お店、入ろっか」
私の言葉に夏油くんが頷いたのを確認して手に持ったままだった携帯を鞄に入れ、同じ体制が続いていたので解すために一度伸びをする。
「荷物持ちます」
自分の分は自分で……と言う前に笑顔の夏油くんから鞄と買った荷物を取られてしまった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
さり気なく道路側を歩くし、お店に入る時もドアを開けたまま中へ誘導してくれる夏油くんはまさに女慣れしているという感じで、今まで呪霊と教員相手ばかりしていた私との差を感じて思わず好きになる人を間違えてしまったのかも知れないな、と思ったが一度好きになってしまえばそうそう嫌いになんてなる事はなく。
「夏油くん、モテるでしょ」
唐突に発した私の言葉は図星だったようでピクリと彼の肩が揺れ、言葉ではなく態度が肯定を著した。
「やっぱり。気遣い出来るイケメンがモテないわけないよね」
同級生の男子を思い返し、そう呟くのとほぼ同時に先に届いたオレンジジュースと一緒に入っていた氷が溶けたのか、ガラッと音がした。
私の心を隠してくれているのだろうか。そう思いながらストローを持ってくるくるとコップの内側で回した。
「先輩も、モテるでしょう?」
「まさか」
可愛気も整った顔もない女がモテるはずがないと笑えば、夏油くんが困ったように眉尻を下げた。
ああ、そんな顔をさせたくて発言したわけではないのにと思うがそんなの後の祭りで。自分の悪いところをこんなところで、こんな時に知ることになるとはと数秒前の自分を恨む。
「私は先輩のこと好きですよ」
「ありがとう」
お世辞だ。
そんなことわかっているけれど、口元が緩んでしまったので隠すようにストローを口に運ぶ。そして私はまた、自分の気持ちに蓋をするのだ。