言うなれば化け物に類する
あるところに美しいと噂の少女がいました。
その少女はとても美しいのですが、美しすぎる容姿と容姿に似合わぬ運動能力の高さから村の人達からは『化け物』と恐れられていました。
――ある日、少女を虐げていた村は一人の鬼によって壊滅しました。
そしてその鬼に気に入られた少女でしたが、通り掛かりの鬼殺隊所属の元柱が現れ鬼と格闘、その結果元柱は勝つことは出来ませんでしたが運良く朝日が登り、鬼が撤退したので連れ去られずに済みました。
◆◇
あの日、村が壊滅した日に『育手』と名乗る人に拾われた。そしてその日から自分の身は自分で守れる様にと呼吸を教わった。
私には剣の才があったらしく、平均より早い段階で呼吸を身につけたのだが、全ての型を身に付けた日に今度は育手と一緒に育てられた子供たちが惨殺された。
「可哀想に。俺は優しいから放っておけないぜ」
村を壊滅させ、今度は育手達を惨殺した鬼はそう言って私に手を差し伸べ、行き場のなかった私はその手を取った。
◆◇
「童磨様、起きてください。次の信者が来ますよ」
「今日はもう終わろうよ」
「お金もらってるんですから頑張ってください」
鬼との共同生活はいつもと変わらないもので、寧ろ衣食住が保証され愛情(彼には感情がない様だから振りではあるけど)も注いで貰えているから、以前よりも人間らしい生活をしていると思う。
人間との生活では無い方が人間らしい生活が出来るだなんて我ながら笑ってしまいそうなくらいだ。
彼は彼で人を食べていても動揺せず、彼の好奇心に類するものを満たすらしい私のことを手放す気はないらしい。美しいものは好きなんだとか。
「童磨様、好きってなんでしょう」
「胸が高鳴ったり相手のことばかり考えることらしいよ」
唐突に聞いたのは自分なのにちゃんと応えてくれた童磨の言葉に「ふぅん」とだけ返す。
そんな私に「聞いてきたのは花子ちゃんなのに興味なさそう」なんて笑って彼は手を叩いた。そうすると奥から次々と料理が運ばれてくる。
運ばれた料理から自分の食べられる量を取って後は下げてもらい、席に着いてご飯を食べ始めると彼も食事を始めた。
「……童磨様、流石の私もそれは食欲がなくなってくるのですが」
「そう? すぐ慣れるよ」
他人ではあるのだが、他人事の様に話して食事を続ける彼を見ないで自分も食事を続ける。
成る程、確かに気にならない──きっと私も人間として大切なものを失っているのだろう。そんなことを考えていたらこちらを見た童磨様が「ね? 気にならないでしょ」と笑う。
「童磨様も私も人間もどき、なんですね」
「俺は鬼だけど。――花子はそうかもね。だからこそ一緒にいられる」
「それが良いことか悪いことかわからないから、何とも言えないですけど」
私の言葉に童磨様がケラケラと楽しそうに笑う。そして「他の鬼に食べられない様に守ってあげる。花子は食べないよ。だから死ぬまでここに居て」と付け足す。
最早命令に近いその言葉に「気が向いたら」と答えるとまた楽しそうに笑う彼にどうか感情が宿るように──と、神などいないと考えているのにも関わらず神に祈った。